宇宙ゴミの掃除に挑戦する日本の企業、対象のロケット部品の近距離撮影に成功
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日本発の宇宙企業「アストロスケール」が運用する人工衛星が、15年前に捨てられた宇宙ゴミに接近し、その間近から撮影することに成功したそうだ。
その宇宙ゴミは、大きさ11×4m、重さ3トンもあるロケットの一部だ。これほど大きな宇宙ゴミ(スペースデブリ)の近接画像が公開されるのは、史上初のことであるという。
現在のミッションは、宇宙ゴミに安全に接近するためのセンサーとソフトウェアを試験することで、ゴミの撤去まではしない。
だが同社は、こうした試行錯誤を繰り返し、今後2、3年のうちに宇宙ゴミの掃除を実行する算段を立てている。
・宇宙ゴミとなった伊吹の打ち上げ用ロケットの上段部分
本格的な宇宙時代の幕が開けようとしている今、地球の軌道をただよう宇宙ゴミ(スペースデブリ)は厄介な問題となっている。
1957年に人類初の人工衛星が打ち上げられて以来、私たちの頭上には何百万もの人工物の残骸が捨てられてきた。
金属片から使用済みバッテリーまで、宇宙をただよう人工物は、万が一人工衛星などと衝突すれば、それを破壊する恐れがある危険な代物だ。
大きなロケットはとりわけ危険だ。
今回撮影されたものは、2009年1月23日、JAXAと環境省が共同開発した温室効果ガス観測技術衛星「いぶき(GOSAT)」の打ち上げに用いられたH-IIAロケット(H2Aロケット)の上段部分だ。
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いぶきの打ち上げに使用されたH-IIAロケット(左から2番目) / image credit:JAXA
大きさ11x4m、重量3トンと大きなものだが、それが高度600kmの上空を高速で移動している。
最近のロケットは打ち上げ後にすべての部品が地球に戻ってくるよう設計されているがこのH-IIAロケットは宇宙にとどまった。
このH-IIAロケットのもう1つ厄介な点は、情報が限られているうえに、位置情報も発信していないことだ。そのため、正確な位置の特定を非常に難しくしている。
そしてこれは決して例外ではなく、実際欧州宇宙機関(ESA)によれば、現在軌道上には2220基のロケットがあるという。
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・史上初、宇宙ゴミと接近し間近で撮影することに成功
日本発の宇宙企業「アストロスケール」は、こうした厄介な宇宙ゴミの掃除をビジネスとする新興企業だ。
今回、同社の商業デブリ除去実証衛星「ADRAS-J」は、H-IIAロケットまで数百mにまで接近し、その撮影に成功した。
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アストロスケールの衛星「ADRAS-J」がH-IIAロケットの部品の撮影に成功 / image credit:アストロスケール・次の目標は宇宙ゴミの撤去実証実験
この衛星は大型の宇宙ゴミに限界まで接近し、その状況を調査する技術実証のために作られたもの。
今後ADRAS-Jは、GPSを駆使してロケットにギリギリまで近づき、さらに内蔵センサーで距離を詰めたのちに、その運動や劣化の具合などを調べる予定であるという。
今回の成功について、アストロスケール代表取締役社長の加藤英毅氏は、「本物のデブリを対象としてこれを実証することは、当社だけでなく、世界の宇宙産業界にとっても大きな一歩と言える。まさに、宇宙のロードサービス時代の幕開け」と語る。
なお実際に宇宙ゴミ撤去の実証実験が行われる第2フェーズは、2026年度以降の開始を目指しているとのことだ。
将来的には、衛星に設置されたロボットアームを使って宇宙ゴミをつかみ、撤去が行われることになるという。
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将来的にはロボットアームで宇宙ゴミの撤去が行われる予定だ / image credit:アストロスケール
追記:(2024/04/29)本文を一部訂正して再送します。
References:アストロスケール、ランデブーおよび近接運用を通じて撮影された世界初の宇宙ごみ画像を公開 -アストロスケール / written by hiroching / edited by / parumo
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