パプアニューギニア人はデニソワ人から受け継いだ特異な遺伝子が彼らの体を守っている
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パプアニューギニアの人たちは、同じ民族でありながら高地と低地に分かれて住んでいたため、何千年も遺伝的に分離されてきた。
マラリアなどの感染症と闘うのに役立つ遺伝子をもつ低地人、低酸素症を軽減するのに役立つ遺伝子を持つ高地人とに分かれているのだ。
その遺伝子のいくつかは、絶滅したデニソワ人が持っていたものだという。
・パプアニューギニア人に受け継がれたデニソワ人の遺伝子
南太平洋にあるパプアニューギニアは、元々あったパプアとニューギニアが合併してできた国である。パプアニューギニアには多様な環境があり、そこに住む人々に異なる適応性を身に着けた。
「パプアニューギニアの人々は、5万年以上前にアフリカからこの島国に定住してきましたが、遺伝的にとてもユニークな民族なのです」と語るのはフランス国立科学研究センター(CNRS)の生物人類学者のフランソワ=ザビエル・リコー氏だ。
パプアニューギニアは山岳地帯が多く、高地では酸素の少ない過酷な生活を強いられる。
一方、低地ではマラリアなどの病原体がはびこり、40%が感染症で亡くなる。住民たちは高地と低地で大きく異なる環境に適応するため、それぞれ異なる突然変異を起こして進化してきた。
彼らはもっと古くから何万年もアジアに住んでいたデニソワ人と交雑した。その結果、パプアニューギニア人のゲノム中には最大5%のデニソワ人のDNAがあるのだという。
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photo by iStock・住む環境に応じて異なる遺伝子の突然変異
新たな研究では、海抜2300~2700メートルのウィルヘルム山に住む54人と、海抜100メートル未満のダル島に住む74人のゲノムを分析した
すると、デニソワ人から受け継がれたと思われる低地人の突然変異が、血中の免疫細胞の数を増やしていることがわかった。
一方、高地人には低酸素症の軽減に役立つ赤血球の数を増加させる突然変異が起こった。こうした突然変異現象は、ほかの高地環境に住む人たちにも起こっていて、珍しいことではない。
デニソワ人の遺伝子変異体が、マラリアを引き起こす寄生虫など、低地でのみ見られる病原体と闘うのを助けるGBP2というタンパク質の機能に影響を与えている可能性がある。
これら遺伝子は、病原体がはびこる低地で人々が感染症と闘うのを助けるために、進化の過程で選択された可能性があるという。
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今後、こうした突然変異がパプアニューギニアの人たちの血液にどのような変化をもたらすのか、明らかにしていきたいという。
そのためには、これら変異が見つかった遺伝子の活性にどのような影響を与えるかを調べる必要があるそうだ。
この研究は『Nature Communications』(2024年4月30日付)に掲載された。
References:Papua New Guineans, genetically isolated for 50,000 years, carry Denisovan genes that help their immune system, study suggests | Live Science / written by konohazuku / edited by / parumo / written by konohazuku / edited by / parumo
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