ダイソン球は本当に存在するのか?超高度文明なら作る必要はないと疑問を投げかける天文学者

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ダイソン球は本当に存在するのか?超高度文明なら作る必要はないと疑問を投げかける天文学者
ダイソン球は本当に存在するのか?超高度文明なら作る必要はないと疑問を投げかける天文学者

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 星のエネルギーを余すことなく使える巨大構造物「ダイソン球」は、本当にあるのだろうか?

 先日、ダイソン球があると考えられる有力な7つの恒星を発見したと発表があった。ダイソン球は高度な科学技術がなければ建造できない。もしこれが本当なら、そこには高度な地球外文明が存在するかもしれない。

 だが、ある天文学者は、超高度な文明ならあえてダイソン球を作る必要ないだろうと、その実在に疑問を投げかけている。

 本当のところはどうなのか? 英シェフィールド大学の天文学者サイモン・グッドウィン博士の見解を聞いてみようじゃないか。

・ダイソン球の可能性が高い天体
 ダイソン球とは、恒星をすっぽりと囲むように建造される巨大な構造物で、1960年に物理学者フリーマン・ダイソンによって提唱された。それは、超高度文明であれば恒星のエネルギーを丸ごと利用する可能性があるという着想に基づいたものだ。

 そのような巨大構造物を作るには超高度な科学技術が必要になるので、その存在は地球外文明があることを示す証拠とされている。

 つい最近、このダイソン球がある可能性が高い恒星が7つ発見されたと、『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society』で発表された。

 そもそも宇宙の彼方にある巨大構造物などどうやって見つけるのだろうか? そのヒントは赤外線の過剰放射にある。

 恒星のエネルギーを丸ごと利用するダイソン球だが、厳密には全エネルギーを完全に利用できるわけではない。

 エネルギーを利用する過程で必ず排熱が出る。その痕跡は波長の長い赤外線として放出されるので、これなら地球からでも観測できる可能性がある。

 こうした赤外線は、ガスや塵の円盤、あるいは彗星などの円盤など、ほかのものからも発生する。

 だが、7つの有力候補の赤外線パターンは、それらから予測されるものに当てはまらなかったため、直ちに自然の発生源に由来するとは断定できなかったのだ。

 ダイソン球のもうひとつの特徴は、巨大構造物がその前を通過すると星からの可視光が弱まるという点だ。

 このような特徴は以前にも発見されている。

 地球から見てはくちょう座の方向に1480光年離れた位置にあるF型主系列星と赤色矮星から成る連星「KIC 8462852(タビーズ・スター)」は減光現象を何度も示し、ダイソン球かもしれないと注目を集めた。

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地球から見てはくちょう座の方向に1480光年離れた位置にあるF型主系列星と赤色矮星から成る連星「KIC 8462852」 / image credit:public domain/wikimedia・そもそもダイソン球は地球外文明に必要なものなのか?
 天文学者のサイモン・グッドウィン博士は、どれほどそれらがダイソン球らしく見えたとしても、その可能性は低いだろうと主張している。

 それどころか、そもそもダイソン球は存在しないかもしれない。なぜなら、ダイソン球を作れるだけの科学技術がある高度な文明ならば、そんな面倒なものを作る必要などないというのが彼の意見だ。

 グッドウィン博士がまず指摘するダイソン球の問題は、高度な科学文明ならば莫大な電力を必要とするという前提だ。

 ちなみに同じような前提は、同時期にニコライ・カルダシェフが提唱した宇宙文明のレベルを示す「カルダシェフ・スケール」もまた依拠している。

 人類の歴史を振り返ってみると、技術の進歩や人口の増加とともに電力使用量はどんどん増え続けてきた。だから1960年代当時、この前提はそれなりに理にかなっていたのだ。

 だが過去50年間、特にここ10年間の世界のエネルギー使用量は、それまでよりずっと緩やかにしか増えていない。

 それもそのはず。科学技術が発展すれば、効率化・小型化が進むからだ。

 実際、ほとんどすべての技術の電力あたりの性能は常に向上しており、将来的には電力使用量の大幅な削減がますます進むことだろう。

 一方、ダイソンとカルダシェフは、彼らが想定する膨大なエネルギーが何に使われているのか、はっきりしたことは述べていない。

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photo by iStock・ダイソン球1個作るのに 惑星系1万個分のエネルギーが必要
 高度な科学文明がとんでもない量のエネルギーを必要とするかどうかはなはだ怪しいにもかかわらず、ダイソン球を作るのはかなり大変なことだと想像される。

 グッドウィン博士の計算によるなら、太陽と地球との距離で太陽エネルギーの10%を集めようと思ったら、地球10億個分の表面積が必要になる。

 仮にその巨大構造物の厚さがたった10kmしかなかったとしても、それを作るための材料は地球100万個分という膨大な量になる。

 ところが困ったことに、太陽系には地球100個分の固形物しか存在しない。もしもほかの惑星系も似たようなものなら、ダイソン球を作るためには1万もの惑星系から材料をかき集めねばならないことになる。

 あるいは、1つの惑星系だけで無理やり作るなら、ダイソン球の厚さはたった1mしかなくなってしまう。

 しかも、これは惑星系にあるすべての元素を余すことなく使うと仮定した場合の話だ。

 仮にダイソン球に炭素のような特定の素材が必要なのだとしたら、解体せねばならない惑星系はさらに増えることになる。

 こんなとんでもないことを実現できる超高度な地球外文明なら、わざわざそんな大変なことをしなくても、もっと別の楽な方法でエネルギーを得るのではないだろうか?

 だが、これもただの推測であり、グッドウィン博士の見解に過ぎない。

 宇宙のどこかにある地球外文明は、本当にダイソン球があるかどうかは、それを我々が確認できるほどの文明にならなければわからないのだ。

References:Dyson spheres: astronomers report potential candidates for alien megastructures – here’s what to make of it / Dyson spheres: Astronomers report potential candidates for alien structures, and evidence against their existence / written by hiroching / edited by / parumo



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