伝説は本当だった。人間の血で作られたブードゥー教の王の血塗られた宮殿
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西アフリカのベナン共和国はブードゥー教の発祥地と言われているが、ここには不気味な伝説を持つ建造物がある。それは文字通り血塗られた宮殿なのだ。
南部アボメイにあるこの建造物は、ブードゥー教の儀式の生贄となった41人の血を使って建てられたと伝えられているのだが、最新技術を使った新たな研究によると、この伝説は真実である可能性が非常に高いという。
・第9代王ゲゾの墓の血なまぐさい伝説
17世紀から20世紀始めにかけて、ベニンの旧称であるダホメ王国の首都だったアボメイは12人の王が統治した。
第9代の王ゲゾは1818~1858年まで王位に就き、その権力と軍事的残虐性で有名だった。
ゲゾ王の兵舎に向かう道には敵の頭蓋骨と顎の骨が敷き詰められていたとか、王座は敵将4人の頭蓋骨の上に置かれていたとされ、さらに王の宮殿の敷地内には、生贄の血を使って建てられたゲソ王の墓部屋があると噂されていた。
通常、壁の接合材は普通のモルタルが使われますが、ここのものは41人分の生贄の血を混ぜた聖水と油が使われているため赤い色をしていると言われています。
41というのはブードゥー教では神聖な数字で、犠牲者たちはおそらく奴隷か敵の捕虜だと思われます(研究者)
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まさに血のように赤いゲゾ王の墓の壁全体(左)、木製の梁で補強された赤い壁のクローズアップ(右) / image credit:Charlier et al., Proteomics 2024
ブードゥー教は現代でもベナン人の生活に浸透している。祈りと聖水を組み合わせた血の供物は、建物を清めたり、呪物である木製建築物に命を吹き込むのに使われる。
ゲゾ王の墓部屋の壁が生贄の血で塗られたのは、亡くなった王のかすかなエッセンスの名残りを守るという役割を担うものだったという。
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アボメイの宮殿内の一部 photo by iStock・最新の分析結果で実際にヒトの血が使用されていることが判明
ゲゾ王の墓のモルタルには実際何が使われているのか?
フランスの研究者らは、正確な組成を特定するために、高解像度タンデム質量分析法を使って、被覆材内のタンパク質の特性を探った。
驚いたことに、ゲゾ王の死後からかなり後まで、サハラ以南のアフリカでは栽培されていなかった小麦の痕跡が検出された。
しかしゲゾ王は、フランス皇帝ナポレオン3世に、ベナンの布地、武器、タカラガイといった外交贈答品を頻繁に贈っていたという事実がある。
おそらくフランスからはバゲットや焼き菓子などがゲゾ王に返礼品として贈られ、そのために後に供物の一部として小麦が宮殿のモルタルに混ぜられた可能性はありえる。
さらに驚くべき結果は、プロテオーム解析(タンパク質の構造と機能に関する研究)の結果、人間と鶏の両方のヘモグロビンと免疫グロブリン(抗体としての分子構造をもつタンパク質)の存在が確認されたことだ。
それだけではない。壁の結合剤が本当に人間の血液でできていることが明らかになった。
王が死ぬと、多いときで500人もの生贄を捧げる儀式が行われたという。ゲゾ王の墓の壁から見つかった血がそうした儀式で流されたものなのかどうかはわからない。
だが、さらなるDNA分析を行えば、この建造物を清めるためにどれだけの人々が命を犠牲にして生き血を捧げたかを明らかにする助けになるだろう。
ちなみにアボメイの王宮群はユネスコ世界遺産となっている。
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この研究は『 Proteomics』誌(2024年5月29日付)に掲載された。
References:Palace Made Of Human Blood Confirmed As Site Of Voodoo Sacrifices | IFLScience / written by konohazuku / edited by / parumo
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