そんなに自然に戻りたいなら。動物園で生まれ育ち何度も脱走を試みていたオオヤマネコが野生に返される

カラパイア

そんなに自然に戻りたいなら。動物園で生まれ育ち何度も脱走を試みていたオオヤマネコが野生に返される
そんなに自然に戻りたいなら。動物園で生まれ育ち何度も脱走を試みていたオオヤマネコが野生に返される

[画像を見る]

 ドイツの動物園で生まれ育ったチャポという名の1歳のカルパティアン リンクス(オオヤマネコの亜種)が、ワイルドな仲間が暮らす森に向けて旅立った。

 外の世界を知らない彼にとって、サバイバルなど無縁なはずだ。だが野生の血が騒ぐのか、脱走を何度も試みた。

 施設内で落ち着かないチャポを見かねたスタッフたちは、専門家の判断を仰いだ末に、彼を自然に帰す試みを行った。

 するとなんということでしょう。念願叶って解放されたチャポは、たった2週間で野生になじみ、新たな仲間と元気にやっているそうだ。


・サバイバル経験なしで旅に出たカルパティアンリンクス
 2024年7月上旬、ドイツのバイエルン州ニュルンベルク動物園出身のオスのカルパティアンリンクス、チャポ(1歳)が生まれて初めて旅に出た。現在の彼の居所は、近隣のザクセン州の森の中だという。

 チャポは動物園で生まれ、ずっと動物園の中で育った。つまり、サバイバルな暮らしとは無縁だったはずだ。

 だが、彼はスタッフから見てもやたらワイルドなオーラを放っていたという。

 たとえば1歳まもない彼がまず始めたことといえば、囲いの柵を飛び越えることだった。もちろん未遂で終わったが、屋内でなく外をうろつきたい性格なのは明らかだった。

[画像を見る]

image credit:Archive Naturschutz LfULG R. Oehme

・専門家もチャポは野生向きと判断
 実はこの動物園では、ヨーロッパ各地で絶滅の恐れがあるカルパティアンリンクスの繁殖プログラムを実施している。

 チャポもその候補の1匹だったが、あまりの脱走未遂ぶりを見かねたスタッフが専門家を呼び、チャポの意思や適性を見極めてもらうことに。するとやっぱりチャポは野生向きだとわかった。
チャポは囲いから抜け出す方法をひたすら探し続けていて、とにかく落ち着きがありません。これらのことから、この成熟前の若いオオヤマネコには野生環境がふさわしいことがわかります(ザクセン州野生生物局)
 そこでスタッフらは方針を変え、チャポを外に出す準備を始めた。彼との接触を最小限にとどめ、狩猟用の肉だけを与え、囲いも一番大きなものに変えた。・解放されたチャポは他の仲間や先輩たちと合流
 そして迎えた7月10日。

[画像を見る]

image credit:Archive Naturschutz LfULG R. Oehme

 GPSの首輪付きでクレートから出されたチャポはまず立ち止まって風のにおいを嗅ぎ、自分の位置を確認するとすぐ森に向かって姿を消した。

[画像を見る]

image credit:Archive Naturschutz LfULG R. Oehme

 それから2週間経ってもチャポは引き返さずに森にいた。追跡データから野生の仲間と会い、今年の春に同様に放たれた3匹と合流したことがわかっている。

 先輩である3匹は、狩りのスキルをぐんぐん上げて、ウサギからキツネ、さらに鹿狩りまでこなすようになってるそうだ。狩り未体験だったチャポもいずれ腕を上げそう。にしても本当にアウトドアなタイプだったんだな。・オオヤマネコの亜種カルパティアン リンクス
 カルパティアン リンクス(Carpathian lynx 学名: Lynx lynx carpathicus)は、ネコ科オオヤマネコ属オオヤマネコ(またはユーラシアオオヤマネコ 学名:Lynx lynx)の亜種にあたる。

 主な生息域は、中央ヨーロッパのパンノニア平原。ハンガリーとスロヴァキアの全領域を中心に、周囲が山脈の尾根に囲まれ、人間がめったに立ち入らない平原で暮らしている。

 体は他のオオヤマネコ属同様、イエネコより大柄で、毛が厚くて足長。前足もビッグサイズで尻尾が短い。耳の先に黒い房毛があるほか、顔の下の周りにもっふりとした毛が生えている。また他のオオヤマネコ属より斑点が多く密集している。

[画像を見る]

 この種は他の猫科と同じ夜行性で、生まれながらにしてプロのハンターだ。獲物は鳥、またはウサギやネズミなどだが、必要とあらば自分の4倍も大きい鹿を捕まえることもある。

 毎年2~3月の繁殖期以外は、基本単独で行動する。この種のオスは、メスよりも広い範囲で行動し、その縄張りは複数のメスの縄張りと重なるほどほど広い。

 繁殖期のメスは1匹から4匹の赤ちゃんを産み、3~4か月ほどの育児期間に狩りなども教える。子どもは1年で自立して一人暮らしを始める。野生下の寿命はおよそ17年。動物園では最長24年だそう。

[画像を見る]

 かつてはヨーロッパ全土に生息していたが、今は生息地の破壊と大規模な狩猟により、個体数が激減。IUCNレッドリストでは低危険種にあたるが、一部の地域ではすでに絶滅しており、ハンガリーなどでは厳重に保護されている。

[動画を見る]

Carpathian lynx in Hungary
References:goodnewsnetwork / wikipedia / youtubeなど /written by D/ edited by parumo



画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。
「そんなに自然に戻りたいなら。動物園で生まれ育ち何度も脱走を試みていたオオヤマネコが野生に返される」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る