マヨネーズが核融合の安定性問題を解決する鍵となる
[画像を見る]
核融合発電の実現は、意外なものから突破口が開けるかもしれない。それは食卓でおなじみの調味料のマヨネーズである。マヨラーたちの必須アイテムだ。
アメリカ、リーハイ大学のチームは、慣性核融合で使用される核融合カプセルの構造的完全性という課題に取り組んでいる。それを解決する鍵となるのがマヨネーズなのだ。
彼らはマヨネーズを使った実験によって、高温・高圧にさらされる核融合カプセルのプラズマが不安定になるタイミングを調べ、それを予防する方法を考案した。
・マヨネーズ片手に核融合開発にチャレンジする研究者
核融合は、軽い原子核が高温と高圧の下で融合し、重い原子核を形成する反応である。この過程で大量のエネルギーが放出される。
太陽(恒星)の中心で自然に発生しており、この現象を地球上でもうまく利用するいことができれば、人類はほぼ無限のクリーンなエネルギーを手に入れることになる。これが核融合が夢のエネルギーと呼ばれる所以だ。
だがそれは太陽の条件を地上に再現するということでもあり、そう簡単な話ではない。世界中の頭脳明晰な科学者たちが取り組んでいるにもかかわらず、現時点ではまだ実用化にいたっていない。
ペンシルベニア州リーハイ大学のアリンダム・バナージー教授らは、マヨネーズを片手にこの核融合開発チャレンジに挑んでいる。
私たちは依然として同じ問題に取り組んでいます。それは慣性核融合で使用される融合カプセルの構造的完全性です。ヘルマンズのリアルマヨネーズは、その解決策を探す手助けになります(バナージー教授)ヘルマンズのマヨネーズはアメリカでごく一般的なマヨネーズだ。日本でも海外食材を扱っているスーパーなどで入手ができる。日本のマヨネーズよりやや酸味が少ないのが特徴で私が大好きなやつだ。
[画像を見る]
ヘルマンズのリアルマヨネーズ ・核融合における問題点「レイリー・テイラー不安定性」
「慣性核融合」とは、燃料(ここでは水素の同位体)を満たしたカプセルを一気に圧縮・加熱することで核融合反応を引き起こすプロセスのことだ。
極端な高温・高圧によってカプセルが溶けてプラズマが形成され、それによってエネルギーが発生する。
ここで1つ大きな問題なのは、プラズマによって流体力学的な不安定性が生じ、それによって作られるエネルギーが減ってしまうことだ。
「レイリー・テイラー不安定性」と知られるこの不安定性は、接触する2種類の物質の密度が異なり、その密度と圧力の勾配が逆方向であるとき、物質同士の間で生じる。
そこでまるでマヨネーズの出番となる。このマヨネーズには柔らかい金属のような性質があり、そのおかげで、レイリー・テイラー不安定性が生じるタイミングを割り出すうえで便利なツールになってくれるのだ。
バナージー教授は、マヨネーズを使用する理由について、「それが固体のように振る舞うが、圧力勾配を受けると流れ始めるから」と説明する。
[画像を見る]
回転ホイール実験装置の概略図 / image credit:Turbulent Mixing Laboratory/Lehigh University・柔らかい金属のようなマヨネーズ
専用に作られた回転ホイールでマヨネーズに負荷をかけ、プラズマの流動状態を再現した実験では、回転の加速度が限界を超えたとたん、この調味料がずるりと流れ始めることが確認された。
これを詳しく分析してみると、マヨネーズは、流れが不安定になる前に、いくつかのフェーズを経ることが分かった。
最初は弾性フェーズだ。このフェーズのマヨネーズは、負荷を受けるとだんだんと変形する。が、負荷が消えてしまえば、ぷるんっと元の形に戻る。
だが負荷が強まり、次の塑性フェーズに移ると、マヨネーズは変形して流れ出す。こうなれば負荷が消えても、もう元の形には戻らない。そして不安定性が生じるのもこのフェーズだ。
バナージー教授によると、この弾性フェーズと安定的塑性フェーズとの移行を理解することが大切なのだという。
なぜなら、塑性フェーズへと移行するタイミングが分かれば、不安定性が生じるタイミングもまた予測できるからだ。
それが分かれば、そうならないよう上手に制御して、不安定にならないよう予防することができる。
[画像を見る]
完全な弾性回復と不安定性が見られる摂動のスナップショット。上段から、実験開始時、弾性・塑性移行閾値時、実験終了時点のもの / image credit:Turbulent Mixing Laboratory/Lehigh University・夢の核融合発電は実現するのか?
こうした知見は、核融合に使用するカプセルの設計に役立つほか、核融合カプセルが不安定になることを予防する鍵となる。
ただマヨネーズは実際の核融合カプセルとまったく同じものではなく、物性値が桁違いに異なっている。そのため、今回の実験から実際の核融合カプセルがどうなるのか正確に予測することは難しいようだ。
なおバナージー教授らが取り組んでいる問題は、核融合発電を実現するうえでの課題の1つでしかないとのこと。「私たちは研究者の大きな輪の1つの歯車にすぎません」と同教授は話す。
それでも夢のエネルギーを実現するためには、1つ1つ着実に課題をクリアしていくのが一番の近道に違いない。
この研究は『Physical Review E』(2024年5月15日付)に掲載された。
References:Lehigh University researchers dig deeper into stability challenges of nuclear fusion—with mayonnaise | P.C. Rossin College of Engineering & Applied Science / Researchers dig deeper into stability challenges of nuclear fusion—with mayonnaise / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』