火星に大量の液体の水を発見、ただし深すぎて採取困難
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NASAの火星探査機「インサイト」が取得したデータの新たな分析結果から、火星の岩石質外殻の奥深くに液体の水があることがわかった。その地下水は極めて多く、地表にあれば火星全体を覆う深さ1~2kmの海になるほどの量だという
30億年以上前、豊富に存在した火星の水はどこへ行ったのか? その謎を追う人々にとっては、求めていた答えかもしれない大ニュースだ。
ただし、将来的にその水が利用できる可能性は極めて低い。その液体の水は、地上から11.5~20kmの深さにある岩石の細かい亀裂や隙間にたまったもので、深すぎて掘り出すことが難しいからだ。
だがそこには、火星の生命が生き延びている可能性もある。
・火星の地下水の存在が明らかに
火星の水がどう循環しているのか解明することは、その気候や地上・地下の変遷を理解するうえで大切なことだ。その出発点としてまずやるべきは、水がどこに、どれだけあるかのか明らかにすることだ。
現スクリップス海洋研究所(米国)のヴァシャン・ライト氏らは、そのために火星の地震(火震)を利用することにした。
地震の波(地震波)を調べれば、それが伝わってきた地中がどのような状態だったのか知ることができる。
そこでライト氏らは、この地球で地下水脈や油田をマッピングするために使用されるものと同じ岩石物理モデルを用いて、2022年12月21日に眠りについた火星探査機「インサイト」が集めた火震のデータを分析した。
その結果、火星の地下には、液体の水がたまった破砕火成岩の層があるだろうと推測されたのだ。
液体の水が大量に存在することが明確になれば、かつての火星の気候がどのようなものだったのかを知る大きなヒントとなる。それどころか、そこに生命がいないとも限らない。
研究チームは、火星で生命の証拠はまだ見つかっていないが、少なくとも原理的には生命を維持できる場所を特定したとすら主張している。
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インサイトの下にある火星の内部の断面図。地殻の上部5kmは乾燥しているようだが、そのさらに下、11.5~20kmの岩石層の亀裂は、液体の水で満たされている可能性がある。その水の量は、かつて火星に存在した太古の海よりも多いという/Credit: James Tuttle Keane and Aaron Rodriquez, courtesy of Scripps Institute of Oceanography・火星の海は地下へと染み込んでいた
川が流れた跡や、三角州、湖の堆積物、水が変質させた岩石など、かつて火星に豊富な水があっただろうことを示す痕跡はいくつも残されている。
ところが、30億年以上前、火星が大気を失うと、そうした水もまたどこかへ消えてしまった。
今回の発見は、消えた水は宇宙へと逃げたのではなく、地殻に染み込んだらしいことを示している。
インサイトは、2018年にNASAによって火星に送られ、2022年にミッションを終えた。その間集められた地殻・マントル・コア・大気のデータは、火星を知るうえで欠かせないものだ。
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インサイトが火星で撮影した初の自撮り写真 / image credit:: NASA/JPL-Caltech
火震についていえば、インサイトは最大マグニチュード5の揺れを検出している。それらは隕石の衝突や火山活動によるもので、火震波となって火星の内部を伝わる。
こうしたデータからは、地上から5kmほどの上部地殻に水や氷がないことが判明しているという。
このことから、極地を除くに地域には、たとえ凍ったものだったとしても地下水がほとんどないらしいと推測できる。
だが今回の研究では、それよりもっと深い地殻を分析し、そこには豊富な水が残されているだろうことを明らかにした。
仮に火星の地殻がどこも同じような状態なのだとすれば、その水量は大昔の火星に存在した古代の海を上回ると考えられるそうだ。
この研究は『 Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載された。
References:Scientists find oceans of water on Mars. It's just too deep to tap. / written by hiroching / edited by / parumo
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