かつて月の影響で地球の1日の長さが2時間伸び、カンブリア爆発の引き金になった可能性
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「カンブリア爆発」といっても地球が爆発したわけではない。古生代カンブリア紀に起きたとされる、地球最大の爆発的な進化のことだ。実はこの現象に、月が関係しているかもしれないという。
7億~2億年前、月の影響で2度にわたって地球の自転が一気に減速し、その結果、1日が2時間以上長くなり、日照時間が急激に伸びたのだ。
新たな研究によると、これが生物の多様性が爆発的に増える結果につながった可能性があるという。
「1日の長さの変化は、太陽エネルギーの分布や温度に影響を与え、気象や大気の力学を左右する可能性がある」と、『PNAS』(2024年8月6日付)に掲載された研究で説明されている。
・月の影響で地球の1日の長さが変化
現在、月は地球から38万4400km離れたところをぐるぐる周回している。だが、誕生してから常にそこにあったわけではない。かつて月はもっと地球のそばにいたのだ。
現在、地球の1日は24時間だが、大昔はもっと短かった。20~10億年前は1日が19時間だったとされ、7000万年前は1日が現代より30分短かったと考えられている。
自転にブレーキがかかっているのは、月のせいだ。月は地球に引力を及ぼし、その運動エネルギーを吸い取って、地球から遠ざかる。こうして地球の自転は遅くなり、1日が長くなっていく。
だが月が遠ざかるスピードの推定は今のところ大まかなもので、大きな欠陥があるという。
と言うのも、そのモデルに従って15億年も過去へさかのぼると、地球と月が衝突してしまうことになるからだ。
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photo by iStock・月の影響で1日が長くなり、カンブリア爆発を引き起こした可能性
成都理工大学(中国)の地質学チームによる今回の研究では、7億~2億年前の海で集められた岩をもとに、地球の自転の歴史を明らかにしようと試みている。
潮汐の影響を受けて形成された堆積物の層や岩石は「タイダライト(Tidalites)」と呼ばれ、潮汐の強さが記録されている。
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そこで研究チームは、月と地球との間で働く潮汐力のモデルとこれらのデータを組み合わせ、地球の自転速度を割り出してみることにした。
その結果、7億~2億年前の期間において地球の1日が2.2時間長くなっていたことが明らかになったのだ。そしてこの間、月はおよそ2万0000km遠ざかったと推測された。
だがこの間、地球の自転が一定の割合で減速したわけではない。それが一気にスピードダウンした時期が2つほどあったのだ。
それはグラフにすると階段のようなラインとなり、一度スピードダウンすると、その速度でしばらく安定する。
減速期間の1つである6億5000万~5億年前にかけては、「カンブリア爆発」として知られる生命の劇的な多様化が起きた。
もう1つの3億4000万~2億8000万年前の時期においては、大規模な氷河が地球をおおっていた。
研究チームの仮説によれば、カンブリア爆発は、1日が長くなり、太陽の光に照らされる時間が長くなったことが引き金になったという。
それによって酸素が急激に増え、生物の多様化を強力に後押しした。ならば、そのきっかけは月だったと言えるのかもしれない。
ただし、これはあくまで仮説で、研究チームは、こうした結果について慎重に解釈する必要があると注意をうながしている。
また今回の研究は、氷河が急速に地球を覆ったことが地球の自転にブレーキをかけたという仮説に対して懐疑的だ。
研究チームによるなら、むしろ減速の大部分は潮汐力の直接的な影響だと考えられるそうだ。
References:Geological evidence reveals a staircase pattern in Earth’s rotational deceleration evolution | PNAS / Earth’s days once got 2 hours longer — and that may have triggered one of the biggest evolutionary explosions in history, study suggests | Live Science / written by hiroching / edited by / parumo
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