元Google研究者がAIにニオイを判別する「嗅覚」を与える企業を設立
[画像を見る]
すでに視覚や聴覚をもつAIに、Googleの元研究者が新たな感覚を与えようとしている。それはニオイを判別する「嗅覚」だ。
アレックス・ウィルチコ氏らが2022年に立ち上げたスタートアップ企業「Osmo」は、ニオイのデジタル化に取り組んでいる。
その目的はAIに嗅覚を与えることで、「人間の健康と幸福を高めること」だ。だが機械にニオイを感じられるようにして何か良いことがあるのだろうか?
実はある。ニオイには病気の兆候が隠されているということだ。いずれは病院でAIにニオイを嗅いでもらって、病気の早期発見を行うなんて時代が来るかもしれない。
・AIに嗅覚を与えることに情熱を燃やす元Google研究者
元Googleの研究者で、スタートアップ企業「Osmo」のCEOでもあるアレックス・ウィルチコ氏は、「ニオイに取り憑かれている」と話す。
嗅覚は、非常に強い感覚でありながら、あまり解明が進んでいない。ウィルチコ氏はこれまで、それを理解することに情熱を注いできた。
ミシガン大学で神経科学を学び、ハーバード大学では嗅覚の神経を研究して博士号を取得。
その後、Googleの研究部門Google Researchの科学者として、分子構造からニオイを予測するAIの開発に取り組んできた。
Osmo社はもともと、その当時ウィルチコ氏が取り組んでいた研究プロジェクトだったものだ。だが2022年、Googleなどの支援を受け、ついにスタートアップとして始動することになった。
同社のミッションは、私たちの嗅覚をデジタル化することで「人間の健康と幸福を高めること」だという。
[画像を見る]
photo by iStock・AIが的確なニオイの判別を行うことで病気の早期発見につながる
そもそもAIに嗅覚を持たせたら、人間にどう役立つのだろう?
嗅覚を得たAIの利点はいくつもあるが、とりわけ大きいとされるのが病気の早期診断だ。
ニオイには病気の兆候が隠されていることがある。だが、現在のコンピュータはそうした情報をまったく理解できない。
そこでニオイのデジタル化を進めて、医療に活かそうというのが、Osmoが目指す大きなゴールの1つだ。
だがこれを実現するまでには、まだしばらく時間がかかる。
そこでひとまず同社が目指すのは、香水・シャンプー・虫除け・洗剤など、身の回りにある香料を安全なものにする手助けをすることだという。
[画像を見る]
Osmo社は、数千のニオイ分子を使用して、分子の構造からニオイを予測するAIモデルを訓練している / image credit:Osmo・AIに嗅覚を与える方法
ニオイのデジタル化は、AIによって進められる。
Google Research在籍時、ウィルチコ氏は機械学習を通じて、ニオイマップの開発に取り組んでいた。花や果物の香りなど、さまざまなタイプのニオイ分子をAIモデルに学習させるのだが、じつはこれがかなりの難題だった。
なぜならニオイを作り出す分子の構造が、とても複雑だからだ。結合がたった1つ移動するといった些細な変化だけで、バラの香りが腐った卵のような悪臭に変わってしまう。
だがAI技術の進歩のおかげで、分子の異なる構造パターンを把握し、そこからまた別の分子のニオイを正確に予測できるようになってきた。
もう1つの問題はそのための学習データだった。大規模言語モデルとして知られるAIチャットボットは、インターネット丸ごとのデータを使って訓練される。
だが、AIの嗅覚を鍛えるとなると、それに匹敵するクオリティのものが香料企業にすらなかったのだ。
そこでウィルチコ氏らは、自分たちでデータを作ることにした。
数千の分子と調香師による香りの説明を集め、このデータをグラフニューラルネットワーク(GNN)に入力する。GNNは機械学習の一種で、データポイント間の関係を検出して分析してくれる。
この助けを借りて、ウィルチコ氏らのAIモデルは、原子と結合と分子構造からどのようなニオイがするのか学習を進めている。・ニオイのテレポートが実現する可能性も
最終的にOsmo社は、ニオイのデジタル技術によって、ある場所のニオイをまったく別の場所に再現、すなわちニオイのテレポートを実現したいと考えている。
あるニオイと完全に同じニオイを再現できないのなら、自分を誤魔化しているに過ぎない。だがニオイのテレポートができれば、AIモデルが本当にニオイを理解しているという証明になる。
もちろん、ニオイによる病気の早期発見にも引き続き取り組んでいくとのこと。すぐに実現することはないだろうが、ウィルチコ氏らはそれを目指して今日もニオイAIの開発に取り組んでいる。
References:Osmo / Former Google researcher's startup uses AI to digitize smell
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』