「じゃあサヨナラって降ろされへんで」 夜の田舎道を走るタクシーで、運転手のおじさんに「ここで停めて」と頼んだら...・
大阪府在住の30代女性・Kさんは、中学1年生の冬に初めての家出をした。
行き先は田舎にある祖父母宅。終電で最寄り駅に向かった後、タクシーに乗ろうとしたが......。
<Kさんの体験談>
中学1年生のクリスマスの夜のことです。
私の家は門限が厳しかったのですが、反抗期だった事もあり、その日は友人と遊んだ後、家に帰りませんでした。初めての家出です。
とはいえ、ずっと友人宅には居られないので、最終電車に乗って祖父母宅を目指したのですが......。
3台のタクシーに乗車拒否された後、ようやく乗せてくれたのは...祖父母宅は大阪府内でも田舎で、駅からさらに車で20分ぐらいかかります。終電の時間なので辺りは真っ暗。タクシーに乗るしかないので、行き先を伝えて乗れるタクシーを探しました。
しかし、家出少女感が明らかだったからか、3台連続乗車拒否......。
タクシーに乗ること自体不慣れだった私は、心がおれそうになりました。
そんな中、1台のタクシーが乗せてくれました。
祖父母宅の住所が分からないので、「○○病院の近くまでお願いします」とだけ言うと、運転手さんは「○○病院は今閉まってるよ?」。
「その近くに祖父母宅があるからそこに行きたいんです」と返すと、「分かったよ~」と言って車を走らせてくれました。
運転手さんは特に何か質問してくるでもなく、私は暖かい車内にホッとしつつも、じっとメーターを眺めていました。お小遣いをかき集めた様な金額しか持っていないからです。
「払えないから停めて!」と言っても...持っていたのは確か、2000円弱。深夜料金は割増ですぐに運賃が所持金に追いつきそうになりました。
その場所からなら歩いて行けそうだと思ったので、「すみません、ここで降ります、停めてください」と伝えると、運転手さんはタクシーを停車させ「病院はまだ先やで? どうしたん?」と聞いてきました。
私は1円や10円玉交じりの所持金を支払い皿に出し、「お金これしかないからここから歩いて行く。ありがとうございました」と言ったのですが、運転手さんはそのお金を受け取ると、また車を走らせました。
「お金は本当にこれだけしかない。払えないから停めて!」という私に、運転手さんはこう答えました。
「お姉ちゃんこんな時間にな、事情は知らんけど、病院までまだ先やのに夜中に歩いて行くなんか危ないやんか?おっちゃんも、さすがにじゃあサヨナラって降ろされへんで。このお金でいいよ。おばあちゃんの家の場所言うてみ、そこまで送るから」
私は涙でぐしゃぐしゃになりながらおっちゃんに場所を説明しました。
家出したことを打ち明けると、笑い飛ばして...その後家出をしたことを打ち明けると、おっちゃんは笑い飛ばしながら、「親が心配してるから早く連絡しなさい」と諭してくれました。
そして、おばあちゃん家についたときにも「病院からまだ先やんか! こんなとこまで歩かれへんって夜中に! 送って良かったわ!」と笑いながら言ってくれて、私は泣きながら、何度もお礼を言いました。
白髪混じりのおっちゃんで、たぶんあの当時で60代後半~70代だったと思います。年齢的にもうご存命じゃないかもしれませんが、「ありがとう」を伝えたいです。
あの時は救われました。本当にありがとうございました。
私は今では結婚して、真面目に2人の子の母になり忙しい日々を過ごしています。
自分に得がなくても、あの時助けて頂いた様に困っている人が居たら必ず助けるようにしています。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、ありませんか?
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな誰かに伝えたい「ありがとう」や「ごめんなさい」を心の中に秘めている――。そんな人も、読者の中にいるかもしれない。
Jタウンネットでは読者の皆さんの「『ありがとう』と伝えたいエピソード」「『ごめんなさい』を伝えたいエピソード」を募集している。
読者投稿フォームもしくは公式X(@jtown_net)のダイレクトメッセージ、メール(toko@j-town.net)から、具体的な内容(どんな風に親切にしてもらったのか、どんなことで助かったのか、どんなことをしてしまい謝りたいのかなど、500文字程度~)、体験の時期・場所、あなたの住んでいる都道府県、年齢(20代、30代など大まかで結構です)、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。
(※本コラムでは、読者の皆さんに投稿していただいた体験談内の場所や固有名詞等の情報を、プライバシー配慮などのために変更している場合があります。あらかじめご了承ください)