「ドラッグ・ロスをいかに解消するか」世界と日本における小児用医薬品開発の現状と課題の比較

ウーマンアプス

「ドラッグ・ロスをいかに解消するか」世界と日本における小児用医薬品開発の現状と課題の比較

医療用医薬品の研究開発を行う製薬会社日本イーライリリー株式会社は、メディアセミナー「世界と日本における小児用医薬品開発の現状と課題の比較~リリーが目指す小児用医薬品開発の未来~」を開催。

イーライリリー社の研究開発・メディカルアフェアーズ統括本部の坂口佐知氏が登壇し、小児用医薬品における課題と現状を発表しました。

世界でみた「小児向け医薬品開発の課題」

現在、世界人口の約4分の1にあたる20億人が子どもであるため、小児薬は世界中で大きなニーズが存在しています。

しかし小児を対象とした医薬品開発は、対象患者数が少ない点や、患者の発育の面で差がある点など、多くの課題が伴います。

2020年、成人患者に対してUS、EU、日本のうち、少なくとも1地域で承認された103の分子標的抗腫瘍剤のうち、小児向けに承認されたのはわずか19種類にとどまっており、3地域全てで承認されたのはわずか3種類のみでした。

また成人を対象に製品が承認されてから、小児を対象としたデータが含まれるようになるまで、平均して約9年の時間を要しているといわれており、小児用医薬品の開発における「ドラッグ・ラグ」は深刻な状況が続いています。

日本における課題

また米国やEUでは、小児用医薬品の開発が法制化されており、成人薬の開発時に小児用への対応検討が義務付けられていますが、日本にはこのような法制度はありません。

2023年3月時点において、欧米で承認されているものの日本では未承認の薬が143種類存在。
そのうち未着手のものが86種類もあり、内訳をみると、その37%が小児薬であることも分かりました。
三重病院・長尾みづほ氏も登壇し、現場からの意見として次のように見解を述べました。

「アトピー性皮膚炎の有症率は小児~30代が多く、重症度は大人より子どもの方が圧倒的に高いです。
子どものうちに発症すると、長期化・重症化するリスクが高まり、QOLに支障をきたします。
だからこそアトピー性皮膚炎は早期に適切に管理することが重要です」(長尾氏)

治験の承認が進んだ2021年以降、注射薬や経口薬といった全身療法が増え、保護者からは「イライラが減り親子関係が良好になった」、子ども本人からも「痒くないことがこんなに楽だなんて!」などの声が届いているといいます。

適切な薬が迅速に届く未来を目指して

「ドラッグ・ロス」「ドラッグ・ラグ」に対応するため、日本では様々な開発支援策が予定されています。

イーライリリーでも2024年、自己免疫疾患対応の「バリシチニブ」「レブリキズマブ」や、小児がんに対応する「セルペルカチニブ」の3製品で小児適応の承認を取得。小児用医薬品の世界同時開発を行ったことで、開発・承認期間の大幅な短縮に成功しました。

イーライリリーは今後も小児用医薬品開発を続け、より多くの小児患者にとって有効な治療手段を提供することを目指していくそうです。
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