大河ドラマ「べらぼう」のラスボス、実は田安賢丸(寺田心)?ほか…1月26日放送の振り返り&レビュー

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大河ドラマ「べらぼう」のラスボス、実は田安賢丸(寺田心)?ほか…1月26日放送の振り返り&レビュー

『一目千本』で大ヒットを飛ばした蔦屋重三郎(横浜流星)。次は錦絵を出版しようと知恵を絞りますが、なかなかスポンサーが見つかりません。

そこへ現れた西村屋与八(西村まさ彦)の協力によって話は順調に進み、礒田湖龍斎(鉄拳)の手による美人画&呉服カタログ『雛形若菜初模様』の出版にこぎつけました。

平賀源内(安田顕)から耕書堂という号を授かり、これで蔦重も版元(板元)デビューかと思ったら、同業者組合の圧力によってあえなく頓挫してしまいます。

実は西村屋は鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)とグルであり、鶴屋喜右衛門(風間俊介)まで出てきて蔦重の新規参入を阻んだのでした。

「蔦重が手を引けば丸く収まる」「これも吉原のためだ」当初は好意的だった忘八連中からも梯子を外されてしまった蔦重の悔しさは、似たような経験を持つ方も多いのではないでしょうか。

NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第4回放送「『雛形若菜』の甘い罠」気になるトピックを振り返っていきましょう!

視聴者の素朴な疑問

蔦屋重三郎。第1回で田沼意次に直談判したのはもちろんフィクション(画像:Wikipedia)

視聴者の方から、こんなご質問をいただきました。

「どうして蔦重と関係のない江戸城の話を間に入れるの?物語に集中できないんだけど」

まぁ何でかと言われれば「物語の進行に必要となるから」なんですが、視聴者の誰から誰もが歴史的な流れを予習して大河ドラマを観るとは限りません。

ごくざっくり言うと、今は田沼意次(渡辺謙)に制されている田安賢丸(寺田心。松平定信)ですが、やがて政権を握って後世に言う「寛政の改革」を主導します。

どちらの財政政策も理にかなっていた。江戸時代の田沼意次の財政政策と松平定信の寛政の改革

この改革は蔦屋重三郎たちの出版・表現活動に大きな打撃を与えました。いわば本作品におけるラスボスと言ったところでしょうか。

そのラスボスがどんな紆余曲折を経て権力を握るに至るのか、その様子を描いているのです。

だから今はほとんど関係ないようでも、それぞれのストーリーを楽しんでいきましょう!

錦絵とは?浮世絵とは違うの?

葛飾北斎「富岳三十六景 凱風快晴」

吉原に対する思いを買われ、忘八たちが蔦屋重三郎に持ちかけた錦絵の案件。

まったく「口はいいから手(協力)とカネを出せ」ってモンですが……現代でもビジネスあるあるですね。

それはそうと、錦絵って何だ?と思われた方も少なくないのではないでしょうか。浮世絵との違いもよく分かりません。

ざっくり言うと、錦絵とは浮世絵の一種で、名前の由来はその鮮やかさでした。

浮世絵の種類には諸説ありますが、主なものをピックアップすると、このようになるでしょうか。

浮世絵の種類 モノクロ……墨摺(すみずり) 黒+α……漆絵(うるしえ) 黒+手彩色……丹絵(たんえ)・紅絵(べにえ) 2~5色版画……紅摺絵(べにずりえ) 多色版画……錦絵(にしきえ) 黒+多色……合羽絵(かっぱえ) 石版画……石摺絵(いしずりえ)

※厳密には異なるケースもあります。また細かな説明は長くなるため割愛します。

従来は単色(モノクロ)の版画に手で色をつけていましたが、見当をつけることで色を組み合わせたり重ねたりできるようになりました。

色をにじませずに組み合わせ、あえて重ね合わせることで絶妙な色合いを生み出す技巧に、江戸職人の苦心と誇りが偲ばれます。

その集大成が錦絵であり、他の作品に比べて多くの手がかかったことから、版行費用がかかったのです。劇中では「1~2両で200枚摺れる」と言っていました。

1両の価値については諸説ありますが、仮に10~30万円/両とした場合、10~60万円で200枚すなわち浮世絵1枚あたり500~3,000円となるようです。

一枚絵としてなら払えない金額でもありませんが、これを販売するとなると別のコストや利益も乗せなければなりません。

高価な商品を取り扱うには、まだまだ「名」が認められない蔦重でした。若いうちは、どうしてもこういう壁にぶち当たりますよね。

蔦屋重三郎の号「耕書堂」ほか

礒田湖龍斎「雛形若菜の初模様 たまや内 しづか」右下に「耕書堂」の印が見える。

平賀源内につけてもらった版元の号。書をもって世を耕す、耕書堂(こうしょどう)。実によい心意気ですね。

まぁそんな源内先生は、田沼意次の意を受けて亡き徳川吉宗の文書を偽造(改竄)していますが……。

いやいや、これで政治の硬直がほぐれて先に進むのであれば、つまり書をもって世を耕しているということ(屁理屈)です。

そっちはともあれ、蔦屋重三郎には耕書堂の他にも号や別名がありました。

蔦屋重三郎の名前 本名:喜多川柯理(きたがわ からまる)
※実家は丸山(まるやま)。 屋号:蔦屋(商売上の名乗り) 通称:重三郎(成人男性が用いる。本名を呼ぶのは憚られるため) 狂号:蔦唐丸(つたの からまる)
※狂歌師としての号。

また蔦重には薜羅館(へいらかん)という号もありました。薜羅とは蔓(つる)や蔦(つた)を表し、そうした植物で編んだ隠居者の衣服や住居を意味するそうです。

見たところ晩年の号ですが、劇中では用いられるのでしょうか。

なお蔦屋重三郎の商標は「富士山に蔦葉」。蔦葉紋はその繁殖力から一家繁栄などを象徴し、武家などに好まれています。

今後あちこちにこの商標が散りばめられることでしょう。

唐丸は葛飾北斎?東洲斎写楽?

東洲斎写楽「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」。いつか唐丸がこれを描くのだろうか。

水に濡らして滲んでしまった礒田湖龍斎の下絵を、いきなり手直ししてしまった唐丸。

乾かしてトレースするのかな?と思っていたら、何と見ながら描き写す高等技術を発揮しました。

聞けば日頃から絵の勉強をしていたでもなく、何となく出来てしまったとのこと。

ちょっとリアリティに欠ける展開でしたが、この設定は後に唐丸が偉大な絵師になる前兆を描いていたのでしょう。

はじめは喜多川歌麿(蔦重が喜多川姓なので)か?と思いましたが、喜多川歌麿は蔦屋重三郎とほぼ同年代。とっくに成人している蔦重に対して、いまだ小僧姿ではさすがに不自然です。

ここはあくまで予想ですが、唐丸は後に葛飾北斎(蔦重の10斎年少)か、出自の不明な東洲斎写楽になるのではないでしょうか。

劇中の安永3年(1774年)時点で蔦屋重三郎は25歳、唐丸が北斎なら15歳。15歳なら成人してそうなものですが、そこは誤差の範囲内……でしょうか。

果たして唐丸がどう化けるのか……楽しみですね!

(※ちなみに九郎助稲荷が化けた説もあるようです)

第5回放送「蔦(つた)に唐丸因果の蔓(つる)」

蔦重(横浜流星)は鱗形屋(片岡愛之助)のもとで働き、暖れん分けで本屋になる道を選択しようとしていた。そんな中、唐丸(渡邉斗翔)はある男にしつこく脅されていた…。

※NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより

かくして今回は既得権益の洗礼を受けてしまった蔦屋重三郎。しかしこれしきで挫けてはいられません。

志のために一生懸命仕事に励み、試行錯誤していく主人公って、魅力的ですよね!ね?

血気盛んな年頃でも、女の事ばかり考えているような蔦重ではないのです。多分。

本屋になる目標のために奮闘する蔦重。来週はどんな活躍を魅せてくれるのか、楽しみに待っていましょう!

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