大河ドラマ『べらぼう』つたや三兄弟の癒しキャラ!? じわじわ人気度アップ「次郎兵衛にいさん」の魅力【前編】

お江戸のメディア王として時代の寵児となっていく蔦屋重三郎(横浜流星)こと蔦重の活躍を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。
回数を重ねるごとに、当時の出版事情、蔦重のビジネス戦略の面白さ、平賀源内(安田顕)の洒落た物言いや突然の下ネタ、金のことしか頭にないような妓楼の主・亡八たち、蔦重を慕いつつもおくびにも出さずに陰で支える花の井花魁(小柴風花)etc……さまざまな個性的な登場人物がいろいろなエピソードを紡いでいき、物語が進んでいきます。
そんな中、「ほんわかする」「ほっこりする」「かわいい」と人気が高まっているのが、蔦重・唐丸・次郎兵衛「つたや三兄弟」の中でも、天然癒しキャラ「蔦屋次郎兵衛(じろべえ)」(中村蒼)なのです。
今回は、この独特な味わいを醸し出している注目キャラ「次郎兵衛にいさん」に注目してみました。

大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」公式ホームページより
血のつながりはないものの互いに思い遣る「つたや三兄弟」「つたや三兄弟」ともいわれている、主人公の蔦重(横浜流星)、唐丸(渡邉斗翔)、次郎兵衛(中村蒼)。みな血のつながりはないものの、実の兄弟以上じゃないかと感じるようなさりげない「互いを思いやる気遣い」が感じられます。
唐丸は、ドラマの初回で蔦重が火事の中から助け出し一緒に暮らすことになった利発で絵の才能にあふれる少年。火事の衝撃で記憶を失っているようなので、蔦重は自分の幼少の頃の「唐丸」(本名は柯理)と名付けます。

江戸時代の丁稚の男の子。唐丸のイメージ(ac-illust)
ドラマ第四話では、錦絵を寸分違わずに模写するという才能をみせた唐丸。しかしながら残念なことに、唐丸は自分を脅迫してくる浪人と共に川に飛び込み無理心中を図り、行方不明になってしまいました。
あまりにも衝撃的な展開で、SNSでは唐丸を惜しむ声や「将来、有名な浮世絵師となり再登場する」説の声が数多く飛び交うなか、飄々とした空気を纏う次郎兵衛にいさんが「いやされる存在!」という声が増加中なのです。
めまぐるしくことが起こる新吉原で不動ののんびりキャラたとえば、ドラマ第五話「蔦(つた)に唐丸因果の蔓(つる)」で、怪しい浪人(高木勝也)に強請れられた唐丸が店の金を取っていたとき。いつもはぼ〜っとしている次郎兵衛にいさんが、金の入ってる巾着を持ち上げ「軽くなっている気がする」と気が付きます。
蔦重に「おまえ、なんか高い本買った? 金が減っている気がするんだよ」と聞くも、「にいさんが何か買ったんじゃないですか?」といわれ「う〜ん、俺なのかなぁ…」というのんびりした返答。

働きもので行動派の蔦重とのんびりにいさんのイメージ(ac-illust)
SNSでは次郎兵衛のゆるさに「どんぶり勘定過ぎて笑う」「気が付かなくてかわいい」などという声があがりました。
吉原一の引手茶屋の放蕩息子細かいことは気にせずいつものんびりムードの次郎兵衛にいさん。過酷な吉原の遊女たちの日々、銭ゲバのような妓楼主、騙し騙されの商売の世界など、目まぐるしく変化していくなかで、不動ののんびりキャラです。
この次郎兵衛は、吉原を代表する引手茶屋・駿河屋(高橋克実)の実子。引手茶屋とは、当時の新吉原で芸妓や遊女を手配する役割を担った施設で、文化交流や商談の場としても利用されていました。

引手茶屋を通さなくても、直接妓楼の入り口で遊女を指名し店内に入ることもできますが、引手茶屋を通すとまずは酒や肴でもてなされ、茶屋の女将が客の好みを聞き取り妓楼と遊女を手配し、つきっきりで客の面倒を見るのです。
もちろんお代は高く付きますが、引手茶屋は遊女の揚代ほかのさまざまな支払いをすべて立てかえてくれるので、手持ちがなくても後払いで遊べるというメリットがありました。
ドラマの中の駿河屋市右衛門は、両親に捨てられた幼い蔦屋重三郎を養子として迎え支えた重要人物として登場。実在の人物ではないのですが、引手茶屋「駿河屋」自体は実在しているそうです。
史実では、蔦重は7歳のときに母親と別れて「喜多川氏」の養子になったのですが、同氏は「蔦屋」という店を経営していたため、駿河屋市右衛門=喜多川氏ではないかと推測されています。
そして、駿河屋市右衛門の実子・次郎兵衛は、蔦重の義理の兄さん。
次郎兵衛は、親父さんから吉原に向かう手前の五十間道で小さな茶屋の経営を任されてはいるものの、実際は蔦重が切り盛り。さらに蔦重はその軒先で貸本屋も営むという働きっぷりです。

新吉新の大門をくぐったところ。 新吉原大門口中之町浮絵根元 奥村政
その反面、次郎兵衛はいつも、店先で呑気に座っているイメージが。けれどもぼ〜っとしているようで見るべきところはちゃんと見ています。
目端が効き行動力がありいつも機敏に動く蔦重を、親父さんが一目置いていることに嫉妬する様子もなく、おおらかに接しています。
その上、蔦重が親父さんの期待を裏切る行動をして殴られたとき、止めようとして自分が殴られて鼻血を出す始末。
そして、常に洒落た着物を身に付けて着こなしている道楽者で洒落者なのです。
【後編】に続きます。
トップ画像:大河ドラマ「べらぼう」公式ホームページより
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