監禁そして脅迫…鳥山検校のモラハラぶりに驚愕!大河『べらぼう』3月30日放送の解説&レビュー
鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)が再び重版事件で捕まり、いよいよ衰運が露わになる中、本屋として着実に台頭していく蔦屋重三郎(横浜流星)。他人の不運を踏み台にするようで気が引けるものの、平賀源内(安田顕)に「本を通して人々にツキを与えればいい」と諭され、明るい前途が見えてきたようです。
一方その頃、お江戸の市中では座頭金(ざとうがね。盲人らによる高利貸し)が暴威を奮い、苛烈な取り立てに旗本の娘が吉原遊郭に売られる事態が頻発。これを憂慮した田沼意次(渡辺謙)は長谷川平蔵宣以(中村隼人)を抜擢し、当道座(盲人集団)に捜査の大鉈を振るいました。
そんな当道座の頂点に立つ鳥山検校(市原隼人)は、身請けした瀬以(小芝風花)を喜ばせようと心を尽くしますが、どうしても彼女の心をとらえ切れません。
瀬以(小芝風花)に詰め寄る鳥山検校(市原隼人)。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。
そこで瀬以を監禁し、返答次第では斬るとまで脅した鳥山検校。すると彼女は斬られる覚悟で、蔦重への思いを打ち明けたのでした。
かねがね不穏なものを感じていましたが、鳥山検校のモラハラぶりに、視聴者からは驚愕の声が上がっています。瀬以と蔦重は、今後どうなってしまうのでしょうか。
NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」第13回放送「お江戸揺るがす座頭金」今週も振り返ってまいりましょう!
道陀楼麻阿(朋誠堂喜三二)のユーモアが光る「吉原遊廓の歩き方」
吉原遊廓を国に見立てて、女郎屋を郡、遊女を名所に見立てた『娼妓地理記(しょうぎ ちりき)』。
架空の国家「大月本国(だいがっぽんこく)」は5つの島国から構成され、また多くの島々が国々を囲んでいました。
国々は北から江町国(えのちょうのくに。江戸町一丁目)十五郡、東に二町国(にのちょうのくに。江戸町二丁目)十一郡が続きます。
南東には角町国(すみちょうのくに。角町)十一郡、西に京町国(きょうまちのくに。京町一丁目)十六郡が広がっていました。
そして南に新町国(しんまちのくに。京町二丁目)十郡と、その沖合には九郎介島(くろすけじま九郎助稲荷)や羅生門島(らしょうもんじま。羅生門河岸)などが浮かんでいます。
劇中では三田万郡(~屋)の清花(心開いたらもう格別)や美濃郡(~屋)のみやこ野(初々しいのに輝いている)が言及されていました。きっと多くの読者が、この言わば『吉原遊廓の歩き方』を手に胸躍らせたことでしょう。
本当に足抜けしちゃったうつせみと新之助
”足抜”以来の再会を果たした二人。まさか再び”足抜”するとは……NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。
前回の俄祭りで「神隠し」に遭った?うつせみ(小野花梨)と小田新之助(井之脇海)。
何だかお祭り騒ぎに乗じて大門から出て行ってしまいましたが、まさか二度目の足抜を敢行するとは思いませんでした。
確かに松の井(久保田紗友)の姐さんも、何となくそれを促すような素振りでしたが……。
結局、松葉屋では「神隠し」として本件を処理し、損害分は新之助の師匠?である源内からエレキテルを強奪して賄うことにしたようです。
いいのでしょうか、それで……ちなみに、これが次週の伏線となります。
しかし逃げおおせたはいいものの、以前に言及されたような「夜鷹に博打」なんて末路をたどらぬよう、二人の幸せを願うばかりです。
鳥山検校の嫉妬が爆発「そなたは吉原に戻りたいのか」
瀬以(小芝風花)に詰め寄る鳥山検校(市原隼人)。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。
浄瑠璃を聞いて欲しいと願えばそれを叶え、かつての同僚に反物を贈って欲しいと言えばそれを叶え、本が好きだからと部屋一杯の書籍を与え……身請け以来、妻を喜ばせるために全力を尽くしてきた鳥山検校。
一方の瀬川改め瀬以もまた、そんな夫の思いに応えようと振舞ってきました。
しかしどうしても蔦重への思いは断ち切れず、そのいちいちが夫を傷つけてしまうことに悩んでいたのです。
しかし実際に瀬以が身請け(結婚)後に何かしらの関係を持ったというならともかく(そもそも持ったことがない)、元彼が忘れられないでいるからと不義密通に問うのは、さすがにいかがなものでしょうか。
それこそ瀬以の言う通り「過去は変えられない」し、「自分だけは騙せない」のですから。
だったらそもそも身請けを断れば……と言いたいところですが、当時の遊女たちにそんな選択肢も余裕もなかったでしょう。
鳥山検校の気持ちも解らなくはありませんが、やはり暴挙と言わざるを得ません。
瀬以に弾む笑顔を与えたのは
絶えず心を配り、瀬以が笑顔になれる環境を与えたのは、まぎれもなく鳥山検校だった。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。
古巣の仲間たちとは親しげに話すのに、自分とはなかなか打ち解けてくれない……鳥山検校の焦る気持ちも共感できます。
しかし瀬以にとって、吉原遊廓は物心ついた時から20年以上(※)過ごしてきた故郷のような場所です。
(※)五代目瀬川が吉原遊廓へやって来た年月は不明ながら、劇中で蔦重が「20年かけててめぇ(自分)の想いに気づいた」と語っていることから、そのような設定と分かります。
その故郷で築いた関係を、いきなり夫と築こうと言うのは無理があるでしょう。
かつて「時が二人を夫婦(めおと)にする」とは誰が言ったか、尊い関係を築き上げるには、やはり時間がかかるのです。
また瀬以が笑って話せるのは、もう二度と吉原遊廓へ戻る心配がないからとも言えるでしょう。
真っ只中では地獄でも、終わってしまえば「よいこともあった」と振り返る余裕ができるものです。
その環境を瀬以に与えたのは、紛れもない鳥山検校ではありませんか。
言わば瀬以の笑顔は、鳥山検校が与えたもの。今はまだ自分に向けられていなくても、その日は決して遠くなかったはずです。
数少ない瀬以の持ち物
常に本でつながれていた二人。NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。
「文の類いはないようですが……」
瀬以を監禁し、その所持品を検(あらた)める鳥山検校。特に不義密通の証拠となるようなものはなく、代わりに数冊の本があるばかりでした。
『塩売文太物語』
『一目千本』
『細見嗚呼御江戸』
『細見籬の花』
『青楼美人合姿鏡』
どれも蔦重がくれたり、作ったりした本ばかり。ここから蔦重との関係を探り出すのは、さすがは感覚の鋭い鳥山検校。
もし瀬以がいつも懐中に入れている通行切手(※女しお、の名入り)を見たら、それはもう激怒したでしょうね。
(※)かつて足抜を考えるまでに追い詰められた瀬川に、蔦重が与えた偽造の通行切手。しお(塩)と言う偽名は、『塩売文太物語』のヒロインである「小しお」からとっており、自分がその相手役「助八」となって助け出すシナリオを考えていました。
しかしわずかな持ち物の大半が蔦重に関係する本ばかりでは、鳥山検校ならずとも二人の関係(少なくとも瀬以の想い)に気づいてしまうのではないでしょうか。
木を隠すなら森の中、身一つで逃げ出してきたのではないのだから、もう少し本を持ってきていた方がよかったかも知れませんね。
逐電・出家した森忠右衛門とは?
劇中では頭を丸め、裃姿で登場した森忠衛右門。永年真面目に慎ましく生きてきたにも関わらず、逐電・出家にまで追い込まれる姿が視聴者の胸を打ちました。
この森忠右衛門は実在の人物で、座頭金だけでなく多重債務に苦しんだ挙句に自害を図るも、息子の森震太郎に止められます。
家族そろって逐電した後、菩提寺で出家。医師となって出直しを図りました。
しかし幕医の須磨良川(すま りょうせん)が窃盗騒ぎを起こしたことから、一味と疑われぬよう自ら出頭。その場において検校たちの悪業が暴かれたのです。
かくして多くの人々が救われたものの、森忠右衛門は投獄された後、間もなく世を去ってしまいました。
「永年真面目に勤めても、学問があっても役に立たない」人々はそう噂し、彼の哀れな最期を悼んだのか笑ったのか……。
森震太郎は逐電の罪により追放され、彼らを匿った菩提寺の関係者もそれぞれに罰せられています。
物価はどんどん上がるのに給料は20年間据え置き。相対的に生活はどんどん苦しくなり、最後は悪徳金融に手を出して破綻……何だか他人事には思えませんでしたね。
第14回放送「蔦重瀬川夫婦道中」
瀬以と再会した蔦重。二人の未来は?NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。
蔦重(横浜流星)は大文字屋(伊藤淳史)から空き店舗が出ると聞き、独立し店を持てないかと考える。そして、いね(水野美紀)からエレキテルが効果のない代物だときき…
※NHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」公式サイトより。
今回も実に盛りだくさんでしたね。次週はどうやら、蔦重と瀬以が短い夫婦道中を楽しむようです。
この中途半端な幸せが、後でどれほどの苦しみをもたらすか……考えただけでもう、今から気が重くてなりませんね。
いよいよ書肆として独立を目指す蔦重。一方でエレキテル・ツイテールはツキが落ちてしまうのでしょうか?次回も心して見届けたいと思います!
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