大河「べらぼう」稀代の天才・平賀源内(安田顕)が「暗闇」に陥り悲劇的な終焉を迎えてしまう“なぜ?”【前編】

Japaaan

大河「べらぼう」稀代の天才・平賀源内(安田顕)が「暗闇」に陥り悲劇的な終焉を迎えてしまう“なぜ?”【前編】

「さらば源内」……。

大河「べらぼう」公式のこのフレーズの発表には、「寂しい」「悲しい」「分かってはいたものの」と、平賀源内(安田顕)退場の予感に、惜しむ声が寄せられていました。

先週、五代目花魁瀬川(小芝風花)と鳥山検校(市原隼人)という、人気の人物が「自分にとって“光”である大切な存在が、“夢”を叶えるために身を引いて去っていく」という切ない別れをした余韻を引きずっている最中なのに、矢継ぎ早に今度は「あの源内先生が…」という展開になりそうです。

「平賀源内」という人は、あまり歴史には興味がないという人でも、“江戸時代の有名人”として知っていると思います。

ドラマでは、安田顕さんという名優が演じていること、髪型や着物の着こなしがおしゃれなこと、さまざまなエピソードや心に残る名言を残していることなど、魅力的な人物として描かれています。

筆者も、源内は逸話に富む人物なので、以前も「美少年好きの生粋の男色家の面」「女形の歌舞伎役者・瀬川菊之丞との関係」「源内による男色小説『根南志具佐』ほかの作品の数々」について、ご紹介してきました。

大河『べらぼう』で男色家・平賀源内が愛した実在の女形・瀬川菊之丞の生涯【前編】

美青年に惚れた閻魔大王!大河『べらぼう』で蔦重が遊女に読んだ平賀源内の男色小説『根南志具佐』の内容とは?

NHK大河「べらぼう」公式HPより

「さらば源内」……という、迎えたくない日が刻々と迫ってきた今回は、天性の才能に溢れまさに輝く「光」のような存在だったのに、徐々にその光を失い「暗闇」に陥り悲劇的な終焉を迎えてしまう“なぜ”がテーマ。

あらためて源内の魅力を回想しつつ探ってみたいと思います。

才能と自信にあふれお洒落だった源内の魅力

『物類品隲』宝暦13年(1763年)刊国立科学博物館の展示wiki

平賀源内は、幼少期から周囲が驚くような才能の持ち主で、大人になってからは江戸でもトップクラスの本草学者(漢方なども扱う植物学者)になりました。医学の心得や建築設計の知識もを持ち、鉱山開発など手広く行うという、幅広い才能を発揮しました。

さらに、小説・脚本・油絵・陶器ほか、芸術活動も行うクリエーターでもありました。

軽妙洒脱で頭の回転が速い人物

キャラクターとしては、安田顕さんが演じているように、実際、自他共に認める天才ぶりを否定しない自信満々な性格で、ある時は大風呂敷を広げ、人の意表をつくような奇想天外な発想を次々繰り出す、頭の回転が早い人物であったと伝わっています。

脚本でも源内は、賢く多才ぶりを発揮しつつもどこか子供っぽいおちゃめなところもあり、早口でどこまで本気かわからないような軽妙洒脱な話っぷりが特徴。時に調子がいいなという感じがあっても、憎めない人物です。

蔦重(横浜流星)と平賀源内(安田顕)NHK「べらぼう」公式HPより

初回登場したときから、面白おかしいまさに“陽キャ”というイメージの源内。「日本におけるコピーライターのはしり」ともいわれ、ドラマの第2話「吉原細見『嗚呼御江戸』」では、歯磨き粉「瀬石膏」を売り出すときに「金に困って出したんで、効果があるかはわかんないけれど、ひとつ助けると思って買ってちょうだい!」という意表をついた広告で大ヒットさせた有名人として描かれていました。

そんな源内に吉原のガイドブックの序文を書いてもらおうと、吉原でもてなす蔦重。瀬川こと元・花の井花魁が、男色家の源内は恋人で亡くなった二代目瀬川菊之丞に想いが残っていることを察し、歌舞伎役者の男装姿で舞い、源内の思い出に寄り添う場面は印象的でした。

静かに恋人と過ごした時間を想い出しつつ涙を浮かべる源内の姿は、明るくてちょっとうさんくさい“陽キャ”とはまったく逆の、繊細でどこか孤独な影を纏っていました。

平賀源内の恋人だった二代目瀬川菊之丞

源内自らが発明した「金唐革紙」製の洒落た巾着

「べらぼう」で描かれる源内は、「キンキン先生」(吉原の通人、もしくは通人をきどるかっこつけているだけの人)が好んで真似していた、細い本多髷のような特徴的な髪型をしています。

そして、エキゾチックで派手な柄の着物や羽織を粋に着こなし、持ち歩いている巾着は「金唐革紙」製。

この「金唐革紙」は、江戸時代に海外から日本に渡ってきた美しい装飾用革で、革の凹凸をつけて金の箔押しを施し模様をつけたもの。幕府に献上された後に一般に広がり、刀の鞘やタバコ入れなどに用いられたそうです。

金唐革紙(旧沼田貯蓄銀行天井)

非常に高価な素材だった「金唐革」を、より手軽に大衆的にと「金唐革紙」を考案したのが平賀源内だったとか。源内が制作した金唐革紙製の「文箱」は源内直筆の書状とともに現代にも伝わっています。

西洋文化の巨匠と同様、美少年を愛した源内

今回、ドラマ「べらぼう」で平賀源内が「男色家」だったということに驚いた人もいるようです。

美少年が集まる男娼茶屋や美形の女形役者などをこよなく愛し、風来山人(ふうらいさんじん)名義で、男色小説『根南志倶佐(ねなしぐさ)』・若い男娼が在籍する陰間茶屋のガイドブック『江戸男色細見』・狐の化身である絶世の美少年と一緒に過ごす夢のような日々を描いた『乱菊穴捜(らんぎくあなさがし)』という滑稽本など、真の男色家ならではの作品を生み出しています。

平賀源内がいつから男色を好んだのかは定かではありません。けれども、多様性に富む発想が、既成概念に捉われないクリエイティビティを生み続けられた要素なのでは、と思います。

平賀源内は「お江戸のレオナルド・ダ・ヴィンチ」と称されることもありますが、そのダ・ヴィンチミケランジェロも、男性の同性愛者だったそう。(諸説あり)

レオナルド・ダ・ヴィンチの肖像画

ミケランジェロは50代の頃、20代の美しい貴族の青年に惚れ込み、300にも及ぶ詩のラブレターを送ったそう。ダビンチは、美少年を愛し自分の邸宅に住まわせたり、男娼を買った罪で2度逮捕されたこともあるとか。源内は西洋文化の大巨匠と通じるものがあったようです。

周囲を魅了する明るさや輝きの中に感じる繊細さ

才気煥発・軽妙洒脱・自由奔放に見える人柄や生き方は、周囲の人たちを魅了したのでしょう。支援する人々は多く、学者や文人、時の老中田沼意次(渡辺 謙)まで、華麗な人脈も築いています。

しがらみや立場、常識に縛られて生きる人が多いなか、源内の天衣無縫で時代の最先端を臆さずに進む行動力に「次に何をしでかしてくれるのだろう?」と期待をしつつ、見守っていたかもしれません。

常に新しいもの・珍しいものをもとめて、日本全国をかけ巡っていた源内は、ひらめきでさまざまな分野に手を付け熟慮せず、見切り発車的に進め大成しなかったことも多々あったようです。

破天荒にみえて繊細な源内は、人からの期待をひしひしと感じつつも「源内らしくない」と言われてしまいそうな、とどまる・熟考する・中止するなどが「引くに引けない」「カッコ悪くてできるか」という気持ちもあったのかもしれません。

「光」が強ければ強いほど、その分「影」も濃くなり「闇」は深まります。

さまざまなトラブルを抱えるようになった源内は、自分の作品が不評だったことに激怒したり、ちょっと尋常ではないような奇妙奇天烈な絵を描いたりなど、奇異な行動をするようになっていったとか。

ドラマの15回「死を呼ぶ手袋」では、「エレキテルの悪口」を耳にして町人に抜刀(竹光ですが)したりなど、徐々に闇に蝕まれてきたかのように見えるシーンもありました。

1787年発行の蘭学書「紅毛雑話」に描かれたエレキテル

ドラマの登場人物(もちろん視聴者にも)に「夢」や「生き方」について、思わずハッとするような自然体の名言を与え続けてきた源内が、なぜ闇に落ちて行ったのか。

「生まれる時代が早過ぎた」「今の時代にいたら、さまざまな方面で偉業をなしとげただろう」と惜しむ声をよく聞きます。

封建的な時代の制約・認められない孤立感・経済的な困窮・うちなる葛藤・自分の中の光と影のコントラストの強さへの疲弊なのか……。

そして、なぜわざわざ“幽霊屋敷”に住んだのか。【後編】に続きます。

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

「大河「べらぼう」稀代の天才・平賀源内(安田顕)が「暗闇」に陥り悲劇的な終焉を迎えてしまう“なぜ?”【前編】」のページです。デイリーニュースオンラインは、べらぼう平賀源内江戸時代大河ドラマカルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る