このジュエリー、何でできてると思う? 意外すぎる〝灰色の素材〟に6.8万人驚がく

まるで希少な宝石のような見た目をした美しいガラス細工が、X上で注目を集めている。
2025年4月11日、東京都在住の会社員・天然逆さめがね(@stellar_chaton)さんが投稿したのは、エメラルドのように綺麗なブルーグリーンのガラス玉の写真だ。
見ているだけで吸い込まれそうなほど美しいが、実はこれ、ただ綺麗なだけではない。その珍しい〝原料〟も、多くのユーザーの関心を集めている。
天然逆さめがねさんは、画像と共にこう説明している。
「三宅島の火山灰を利用して作られた三宅島ガラス綺麗な色です。」
え! 火山灰から、こんな綺麗なガラス玉が作れるの!?
Jタウンネット記者は4日、このガラス玉について、まずは天然逆さめがねさんに話を聞いた。
透き通るような青さ天然逆さめがねさんが三宅島の火山灰から出来た「三宅ガラス」の存在を知ったきっかけは、鉱物標本や合成石の販売などを手掛ける シーサーズ・ラボ(@shisas_lab)の公式アカウントの投稿だ。
同アカウントが3月17日にポストした三宅ガラスの宣伝を見て、28日、「ミネラルマルシェTOKYOミュージアム」(東京都千代田区)のプレオープン日に購入したという。入手した感想を、天然逆さめがねさんは、こう語る。
「改めて見てもやはり綺麗としか言いようがない色で、20数年ほど前に一目惚れしたパライバトルマリンというエレクトリックブルーの宝石の色に似ています。とても思い入れのある色です」
それにしても火山灰から、どうやってこんなに綺麗なガラス玉が出来上がるのか。どうしてこのような色合いになるのか。
記者は10日、この三宅ガラスを開発した東京都立産業技術研究センター(本部:東京都江東区・以下、都産技研)に話を聞いた。
「火山灰の有効活用法」を模索した取材に応じた同センター職員の田中実さんによると、三宅ガラスが誕生したきっかけは、2000年夏に発生した三宅島・雄山の噴火だった。
噴火に伴って大量に降り積もった火山灰への対応が求められる中、都産技研では早々にその火山灰のサンプルを入手。
以後、「三宅島火山灰の有効利用(産業への利用)」を目標に、火山灰サンプルの成分分析や、ガラス原料への利用可能性の探求、ガラスサンプルの実験室レベルでの試作を繰り返していったという。
「当時、開発に携わっていたメンバーの所属する研究室では、三宅島と同じく伊豆七島である新島の抗火石を利用した『新島ガラス』を開発した経験がありました。その経験もあって、『三宅島の火山灰を活用したガラスを作る』という試みが始まりました」(田中さん)
そうして、2000年末にはガラス工場でのテスト溶融、製品化試作に至り、2001年1月に特許出願を果たして、同年3月に「三宅ガラス」の名で製品化に漕ぎつけた。
以後、特徴である「三宅島の美しい青い海をイメージした色」をセールスポイントに、「三宅ガラス」を使用した食器やグラスなどが製造された。また「三宅ガラス」に巧みなカットや研磨が施された「三宅ガラスジュエリー」の製品化も行われていったという。
三宅ブルーができるまで「三宅ガラス」の原料には、三宅島の火山灰、けい砂、ソーダ灰、石灰石を使用。
調合した原料を1450度の高温で溶融させたあと、「吹き」や「プレス」で成形したのちに徐冷を行えば完成だ。
田中さんによれば、その最大の特徴である美しいブルーの色合いには、原料である火山灰中に含まれる「鉄分」が深く関わっているという。
「火山灰を含むガラス原料(最適比率で各原料を調合したもの)を溶融した際に、先の鉄分が還元されて、ガラス中に多くのFe2+イオン(鉄二価イオン)が出来ます。そのイオンが生成されるために、このような色が生まれます」(田中さん)
火山灰を活用した美しすぎる「三宅ガラス」に、X上では6万8000件以上のいいね(11日昼時点)のほか、こんな声が寄せられている。
「吸い込まれそうですね!」「きれい。ターコイズとも翡翠とも取れない色」「ラムネの瓶の色と似ていますね。何だか懐かしい匂いが感じられる色合いです」「FF7のマテリアみたいで綺麗ですね〜。回復できそう」
こうした反響に対し、田中さんは
「この微妙な色合いのガラスは、『三宅島の美しい青い海をイメージした色』。この色を出すためには多くの苦労がありました。そういう意味で開発チームメンバーは大変喜ばしく感じております。さらにこうした注目が、三宅島に魅力や関心を持ってもらう、島の観光などに繋がることを願います」(田中さん)
ちなみに、記者が7日にシーサーズ・ラボを運営する山崎祐哉さんに話を聞いたところ、
「現在、宝石としてカットされた『三宅ガラス』はもう製造されていないと聞いております」
とのこと。
ただ、シーサーズ・ラボでは多数の在庫があり、全国で展開されている天然石・鉱物の展示即売会「ミネラルマルシェ」で店頭販売しているそうなので、「三宅ガラス」が欲しい人は同店の出展情報をチェックしてみては。シーサーズ・ラボでの販売価格は500~3000円ほどだ。