大河「べらぼう」蔦屋重三郎、次の舞台へ!新しい幕開けを飾る桜並木と当代一の花魁・誰袖(福原遥)【前編】

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大河「べらぼう」蔦屋重三郎、次の舞台へ!新しい幕開けを飾る桜並木と当代一の花魁・誰袖(福原遥)【前編】

いよいよ、新章の幕開けとなった大河「べらぼう」の7話『乱れ咲き往来の桜』

4月27日(日)は、今までの総集編「ありがた山スペシャル」として、過去の名シーンの振り返りをして評判となっていました。

記憶に残る名場面として取り上げられたのは……。

蔦重(横浜流星)が吉原を出ていく瀬川(小芝風花)に、吉原をもっといい場所にすることが「こりゃ、ふたりで見てた夢じゃねえの?だから俺はこの夢から覚めるつもりは毛筋ほどもねえよ」と語るシーン。

今までいろいろな登場人物が、「べらぼうめ!」の文句を口にしてきましたが、この場面で、涙を浮かべ泣き笑いの表情になった瀬川の静かな「そりゃまあ、べらぼうだねえ」は胸に染みました。

NHK大河「べらぼう」公式サイトより。蔦重が贈った錦絵本『青楼美人合姿鏡』に自分が登場しているのを見て涙ぐむ瀬川。

そして、真っ白な花嫁衣装をまとった瀬川と、大門の真ん中で仁王立ちになって見送る蔦重。瀬川の微笑みながらの「おさらばえ」も忘れられないと話題に。

さらに、やはり平賀源内(安田顕)。明るくややお調子者の場面、亡き恋人の面影を思い出し静かに涙を浮かべる場面、そして鬼気迫り怒り狂った場面、牢に訪ねて来た田沼意次(渡辺謙)相手にボロボロと涙を流しながら「何が夢か現実か分からない」と話す場面も取り上げられました。一つ一つ、それだけで一話にしてほしいほどの名場面ばかりでしたね。

そんな平賀源内が蔦重に贈ったのが、『耕書堂』という本屋の名前です。「おめえさんはさ、これから版元として書を持って世を耕し、この日の本をもっともっと豊かな国にするんだよ。」生涯記憶に残る名セリフでした。

愛する人々との哀しく辛い別離を胸に刻みながらも、前に進む蔦重と『耕書堂』。いよいよ新章が幕を開け、新しい出会いがスタートしました。

今回は、今までの伏線を回収しつつ、吉原のメインストリートに突如として現れた満開の桜並木の謎と、桜のように蕾から花開き成長した、当代一の花魁・誰袖(福原遥)についてご紹介します。

NHK大河「べらぼう」公式サイトより。花魁・誰袖と蔦屋重三郎。

瀬川の夢「恩が恩を呼ぶ」が蔦重の“新しい幕開け”

12月18日、平賀源内が獄中で亡くなり、改めて「俺、源内先生が死んだって信じねえことにします。」と『耕書堂』の名を広め源内の意思を引き継ぐ覚悟を決めた蔦重。年が明けた安永9年(1780)。この年は、蔦重が版元として成長する上での大きな節目になりました。

前回16回で、蔦重が自ら筆を取り物語を書きながらも難しくて悩む場面で、朋誠堂喜三二(尾美としのり)が「恩が恩呼ぶ、めでてぇいい話だよ。共に考えていた人もきっと喜んでくれるよ」と称賛したのを覚えている人も多いでしょう。この「共に考えていた人」とは、もちろんあの瀬川です。

まさに亀が「恩を返す」話。 『伊達模様見立蓬莱』国立国会図書館デジタルコレクション

蔦重と結ばれた夜、瀬川は「巡る因果は恨みじゃなくて、恩がいい。恩が恩を生んでいく。そんなめでたい話がいい」「助けた亀が恩返しに来るような話がいい」と、“自分が本を書くのなら、こういう話にする”……という“夢”を語っていました。

その夢を元に、蔦重が書き上げたのが『伊達模様見立蓬莱』です。(史実では作者不明ですが「蔦重」ではないかとされています)浦島太郎の「亀の恩返し」のような内容で、助けた亀のおかげで吉原の遊女が幸せになるという、瀬川の“夢”が詰まった話になっています。

蔦重の“夢”を叶えるため去った瀬川。そんな彼女が託したストーリーから生まれた一冊の本『伊達模様見立蓬莱』が、蔦重を新しい舞台へと、背中を押す。そんな、粋で鮮やかな展開にしたのは、まさに森下脚本の妙ですね。

この本が、瀬川に届きますように

ある日。「お前さんは本が好きだったよねえ。これが江戸で評判の『耕書堂』の本だよ」と、誰かが『伊達模様見立蓬莱』を瀬川に渡す。

ぱらぱらとページをめくった瀬川は、蔦重と過ごした夜に語った「こんな本がいい」というストーリーを重三が書籍にした……と知る。

そして、涙ぐみながら離れていても蔦重との深い絆を感じ、新たな宝物にする……そんな風になるといいなと思った人も少なくはないでしょうか。(筆者の妄想です)

春になると突如現れる「吉原・仲之町の桜並木」

さて、『伊達模様見立蓬莱」を含む、全10冊もの新作・黄表紙本を一気に出版した蔦重。『伊達模様見立蓬莱』の巻末には、蔦重自身が他の本の宣伝をしている口上のページがあり、蔦重自身も舞台に上がり新作の宣伝をしていました。

最後のページに蔦重と思われる人物が幕を引き、木の枝には新作の書名が書かれた短冊が。『伊達模様見立蓬莱』 国立国会図書館デジタルコレクションhttps://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100399917/13?ln=ja

さらに蔦重は、りつ(安達祐実)に紹介された、戯作者・浄瑠璃作家として名高い烏亭焉馬(柳亭左龍)に、「話の中に、耕書堂の名前をちらっと出してもらえませんか?」と頼んでいましたね。

そして、1780年(安永9)正月、江戸の外記座で初演され現代でも知られる演目『碁太平記白石噺』7段目「新吉原の段」では、「本重」なる蔦重のような貸本屋が登場していました。

ドラマでは芝居好きの娘さんらが実際に耕書堂を訪れて、蔦重に劇中のセリフ「細見を急ぎます」を言わせて、キャ〜ッとなるところはまさに現代と同じ。蔦重が「会いに行けるアイドル」となっている展開が面白かったです。

余談ですが、蔦重が一気に出版した10冊の作者は、朋誠堂喜三二、画は山東京伝や北尾重政などが多くみられたのですが、中でも面白いのは『夜野中狐物』という本。「よのなかこんなもの」と読ませるのが、なんとも洒落ています。

花が咲いた桜の木をメインストリートに移植

三代 歌川豊国「吾妻源氏雪月花之内花」

寒さも緩み、春が訪れる頃には『耕書堂』は大ブレイクし大賑わいとなります。今回、蔦重が吉原の大道り・仲之町に咲き誇る満開の桜並木を見上げながら、そぞろ歩くシーンがありました。花びらがひらひら舞う桜並木、これは人工的に作られたものです。

当時、吉原では、客を呼んで楽しませるためにいろいろな年中行事を催していたのですが、3月の「春の夜桜」は名物だったとか。その年の寒暖に合わせて桜の木を植える日を調整し、他所から満開に近い桜の木を運び仲之町に移植。散ったら撤去するという大事業だったそうです。

『江戸名所花暦』(文政10年/1827)の「新吉原」の項目には、

毎年三月朔日よし、大門のうち中の町通り、左右を除けて中通りへ桜数千本を植うる。

〜中略〜花遅ければ朔日より末に植込むこともあり。葉桜になりても、人なほ群集す

と、数千本の桜を植えたと一文があります。(実際には、もっと少ないという説も)


新吉原と書いてあるページ。遊女他多くの人で賑わう様子が。『江戸遊覧花暦』(筑波大学附属図書館所蔵)出典: 国書データベースhttps://doi.org/10.20730/100304967

当時、桜並木の足元には、黄色の山吹を植え周りは青竹の垣根で囲い、夜はぼんぼりを灯して夜桜を楽しんだそうです。夜の闇にほのから灯りに照らし出されたピンク色の桜は、さぞかし幻想的だったでしょう。

この桜並木はかなり見事だったようで、江戸っ子はもちろん、地方からの観光客や参勤交代の武士など大勢の人が訪れました。普段は自由に出入りできない一般女性にも解放され、花魁を一目見たいと訪れる人も多かったそうです。

新吉原の桜並木。渡辺延一

桜のように花開いた「かをり」こと「誰袖」

そんな時期。まるで桜の開花に合わせたかのように、蕾から花開き成長した姿で登場したのが、「大文字屋」のかをり(稲垣来泉)こと、成長した誰袖(たがそで/福原遥)です。

かをりは、第7回「好機到来『籬(まがき)の花』」で初登場した大文字屋の秘蔵っ子で物おじしない明るい少女。蔦重のことが大好きで、往来で昼間から抱きついていた姿が印象的でした。「スキスキ!」モード全開のかおりをあしらう蔦重も面白かったです。

NHK「べらぼう」公式サイトより。「かをり」と蔦屋重三郎

当時、かをりはまだ遊女の卵、振袖新造の立場。おそらく、まだ客を取らない、つまり「売り物」にはなっていない立場だったからこそ、くったくなく吉原の男である蔦重に抱きつけたのかも。

一方どんなに蔦重を想っていても、すでに廓の看板花魁となっていた花の井は、自分が「売り物」であることが分かっていたので、“売る側の立場”いる蔦重に抱きつくことなど決してできません。

まだ幼さの残るかをりの天真爛漫さと、自分の想いは奥深く胸に秘めた花の井の対比が、切なく感じたものでした。

けれども、そんなかをりも、吉原を代表する花魁・誰袖となり客を取る立場になっていく。美しく大人に成長した誰袖。「美しい!」「どんどん綺麗になっていく」と、ネットでは大評判です。

けれども、大人になり花魁になったということは「客を取る立場になった」ということ。誰袖の少女時代の無邪気さとこれから待ち受けている運命を思うと、複雑な思いにもなるのでした。

次回の【後編】に続きます。

新吉原の大門。歌川豊春 新吉原夕暮れ透視図

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