【豊臣兄弟!】大嫌いになり申した!小一郎が信長に示した信じる力、豊臣にあり織田になかった“兄弟の絆”
「あなた様のことが、大嫌いになり申した!」
魔王・織田信長(小栗旬)に、ドストレートに「大っ嫌い!」と言い放った小一郎(仲野太賀)。痛快な場面でした。
今回も面白い展開となった大河ドラマ「豊臣兄弟!」。第6話『兄弟の絆』の副題そのまま、今回のテーマは「兄弟の絆」そのものが描かれました。
そして、4話『桶狭間!』、5話『嘘から出た実』の伏線が生きた回でもあります。「兄弟の絆」とともに、『人を信じる力』の強さが大きなテーマでした。
主人公の小一郎(仲野太賀)と藤吉郎(池松壮亮)の輪郭が鮮明に浮き上がった今回。その『人を信じる力』をメインに振り返って考察したいと思います。
※第6話『兄弟の絆』の解説・考察記事はこちら↓
「豊臣兄弟!」小一郎と直の今後に暗雲漂う、信長が本当に見たかったものは?第6回放送の解説と考察 “戦わずして勝つ”が信条の信長の罠信長の命により鵜沼城の城主・大沢次郎左衛門(松尾諭)の調略に成功。藤吉郎は人質として鵜沼城に残り、小一郎は小牧山城に戻り信長と次郎左衛門の謁見に成功!……と思いきや。
次郎左衛門の従者の荷物の中から、刃物が発見されてしまいます。「知らぬ!」と否定する次郎左衛門を「斬れ」と小一郎に迫る信長。そうなると、鵜沼城に人質に残った兄の命が危ない。
愛する妻のため調略に応じた大沢殿がそんなこざかしいマネするか!と思いつつ、ノブは即決過ぎ?と感じたのですが、やはり訳ありでしたね。
「吟味もせず大沢殿を斬っては、この先誰も織田の味方にはならない」という小一郎に、信長は翌日までに「大沢の無実を証明しろ」と猶予を与えます。
実は、荷物に武器を仕込んだ犯人は、ほかならぬ信長でした。次郎左衛門の力量を恐れ、寝首をかかれる前に殺してしまうための罠だったのです。
次郎左衛門を斬れば、人質の藤吉郎も当然斬られることも承知のうえでしょう。
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「美濃攻め」の前哨戦は被害を少なく成果をあげたいもの。そこで、次郎左衛門に無実の罪を着せて斬る。身分の低い“猿”が犠牲になっても仕方あるまい……そんな冷酷な判断があったのでしょう。
信長の“藤吉郎の命を軽んじる発言”に、小一郎の瞳に暗い怒りの炎が静かに燃え上がりました。
鵜沼城主・大沢次郎左衛門と息子の大沢主水(NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより)
『人を信じる力』がテーマに流れるドラマ『豊臣兄弟!』の制作統括を務める松川博敬チーフ・プロデューサーによると、“この作品は『人を信じる力』の物語なのではないか”と感じるようになったそうです。
過酷な状況の戦国時代、身近な人間を「信じなければ」生きていけない。けれども、信じることで裏切られたり命を取られたりすることもある。それでも信じないと前に進めない……その『人を信じる力』の強さがこのドラマの根底に流れているそうです。
今回の第6話『兄弟の絆』は、「この回を見て欲しくてこのドラマを作った」というほど。
信じ合う気持ちが強かった豊臣兄弟、信じ合うことができなかった織田兄弟が対照的に描かれていました。
この『人を信じる力』の差が、この天下を分けることになった……そんな意味も含まれていたように思います。
破格な藤吉郎の『人を信じる力』の強さ藤吉郎の『人を信じる力』は、第4回『桶狭間!』から始まっていました。
「親方様は必ず勝つと信じている」と言い切った藤吉郎。そんな兄を「信じる」と決めた小一郎。桶狭間の戦いで勝利を納めたことで、『兄弟の絆』は強くなりました。
第5回『嘘から出た実』では、藤吉郎は松平元康(家康:松下洸平)に、「出世の秘訣」を聞きます。
元康は「信長殿を信じろ。己を信じて進め。大事なのはここじゃ(と胸を叩きつつ)!熱意は人を動かす。」と答えました。
実は、その後「すべて逆のことを言うてやったわ!わはははは」と大笑いしていましたが。
つまり、元康は「信長のことなど信じない」「己を信じて進むことなど無理」「気持ちや熱意で人は動かせるもんか」と思っているのでしょう。
けれど、その“嘘”を額面通り吸収した藤吉郎(つまり元康のことも信じた)は、『人を信じる力』をより強固にしました。
戦国時代では、“疑うこと”ことは生き残っていくためには必須です。“信じる”ことは、相手に隙を見せることになってしまいます。人がいい悪いとかの問題ではなく当たり前の生存戦略でした。
けれども、藤吉郎はもって生まれた性分もあるのでしょう。元康の言葉をそのまま信じ、自分の“真理”として昇華しました。
自分が仕える主君を信じる、そんな己も信じる、そんな熱意が人を動かす。
ここに、豊臣兄弟の強さの原点が生まれたのです。
自分の嘘が藤吉郎の力になるとは思いもしない家康。(NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより)
母なかは藤吉郎の『人を信じる力』を信じていた?今回驚いたのは、藤吉郎が「信長の罠」を前田利家(大東駿介)から事前に聞かされていたこと。「信長は、次郎左衛門に無実の罪を着せて殺すつもりだ」と。
けれど、藤吉郎は「殿は、調略に応じれば大沢様の城と領地は安堵すると申した。わしはその言葉を信じるだけだ」と笑顔で言ってのけました。
いざという時の他のプランも用意せず、ただひたすらに信長を信じ切る姿は印象的でした。
あの人たらしな藤吉郎の『人を信じる力』の強さは、いったいどこから来ているのでしょうか。
母親のなか(坂井真紀)が、藤吉郎を心配して落ち込む寧々(浜辺美波)に、「あの子は不死身だから」と笑顔とともに言います。
この言葉の中に真理があるのかもしれません。おっかさんだけは、のちの太陽のように輝く秀吉の姿が見えていて「だから大丈夫」と言っているような、不思議な感じがしました。
史実では、寧々はなかのことを非常に大切にしたと伝わります。もしかしたら、こんなふうに、なかがいつも「大丈夫よ!」と包んでくれる人柄だったから、慕っていたのかもしれません。
「あなた様のことが、大嫌いになり申した!」今回の見どころは、「次郎左衛門を斬って忠義心をみせろ」と迫る魔王・信長と、もともと百姓で合理的に生きてきた「侍の忠義心などふざけるな」な小一郎の対決でした。
前田利家から「今回は全部、信長が仕組んだ罠。それを事前に藤吉郎にも話した」と聞かされた小一郎は覚悟を決めます。(目障りな“猿”だけれど、隠しておくのも気持ち悪いとばかりに筋を通した利家もかっこよかったですね)
小一郎は、信長に対し……
「次郎左衛門を斬れば侍大将にしてやる」と言われても「そんなものはいらん!」と言い返し。
「大沢殿の命は兄の命。この手で兄を殺すことなどできませぬ!わしは兄者を裏切りませぬ。」と言い返し。
そして「このたびのことであなた様のことが、大嫌いになり申した!」。さらに「わしを生かしておいたら、いつか寝首をかくかもしれませぬぞ!」と脅しました。
誰もが恐れて顔色を窺う存在の信長に、すごい無礼な言葉を直球でぶつける小一郎が気持ちいい。
ざわめく家臣たちが刀に手をかけるも、自分を斬れるのはお前らではねえわ!と、「私を斬って信長殿に忠義心を示せばいい」と、次郎左衛門に刀を渡します。
斬られる覚悟を決め涙を流しつつ、最後の言葉が「直、すまん」に泣けました。そんな小一郎を見て彼の言葉を信じ、髪を切り仏門に入ると宣言した次郎左衛門もかっこよかったですね。
「直、すまん」覚悟を決めた小一郎の言葉。(NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより)
家康の嘘「熱意は人を動かす」が「実(まこと)」に次郎左衛門と小一郎は信長に許され、無事藤吉郎も解放された後の、お市(宮﨑あおい)と信長の会話。
お市が「よう許しましたな」と言い「もしかしたら見てみたかったのやもしれぬ。(弟が)兄を見殺しにしてのし上がろうとする姿をじゃ。」と答える信長。
「それにしては…」。と言葉を切るお市。「嬉しそうですね」と続けたかったのでしょう。
「兄貴を絶対に裏切らない、兄のためなら自分の命を捨てる覚悟を持つ弟もいる」という事実を突きつけられて、どこか、「負けても嬉し」な信長。非常に人間っぽく描かれています。
そんな兄の心情が手に取るように近いできるお市。この兄妹の絆も強いですね。
信長は、仲が良かった自分の弟・信勝(中沢元紀)に裏切られて殺したことがトラウマとなり、それ以来『人間不信』になってしまったとか。『人を信じる力』は持ち合わせない信長。
そんな信長に「忠義心を見せろ」と迫られて「わしは兄者とは違う」ときっぱり言う小一郎。合理主義者で懐疑的な彼は、藤吉郎のような迷いのないまっすぐな忠義心を持つことはしません。
けれども裏切ったり騙したりもしない小一郎。次郎左衛門と兄の命を守ろうとする、熱意で人を動かしました。
はからずも、家康が前回、適当に言った「熱意は人を動かす。」な嘘が「実(まこと)」になりました。
次郎左衛門のその後については諸説あり事実は定かではありませんが、「出家することで豊臣兄弟の命を救うことになった」という脚本もよかったと思います。
この“もののふ”は愛する妻・篠(映美くらら)とともに、穏やかで幸せに暮らしてほしいと願うばかりです。(懐に忍ばせていた相棒の礫も川に捨てたことですし)
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最後に第4回の『桶狭間!』のとき、戦いから戻った小一郎を直の「生きておればそれで十分じゃ!」という言葉を思い出させる今回。
人質から解放され、無事に戻って来て、寧々にプロポーズした藤吉郎。
生きる選択をして武器を捨て妻のもとに戻った次郎左衛門。
命が消えると覚悟するも、助けた次郎左衛門に助けてもらった小一郎。
誰もが本当は「愛する家族や想い人のもとへ生きて帰りたい」と思い、待っている側は「ただ、無事に生きて帰って来てほしい」と願う。「豊臣兄弟!」では、現代にも通じる、そんな人間らしい部分を描いていると思います。
今後、どのような展開になっていくのか、この後待ち受ける史実を知る約460年後を生きる我々ですが、史実と創作の融合でどう驚かせてくれるのか楽しみですね。
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