【豊臣兄弟!】“無事を信じて待つ”身の辛さに気づいた小一郎…なのに、直に迫る悲劇とは?
「豊臣兄弟!」第7話『決死の築城作戦』。前回に引き続き、 “兄弟の絆”が描かれました。
第6話『兄弟の絆』では、藤吉郎(池松 壮亮)・小一郎(仲野 太賀)“兄弟”の、互いに信じ合う絆の強さと、織田信長(小栗 旬)・信勝(中沢 元紀)“兄弟”の、互いに信じられなかった絆の脆さの対比が鮮やかに描かれていました。
そして、今回は、アナザー“兄弟”が初登場。
川並衆(木曽川流域で勢力を誇った土豪たち)の筆頭・蜂須賀正勝(高橋努)と、かつて正勝と義兄弟の仲で、現在は反目し合う織田の家臣・前野長康(渋谷謙人)の“兄弟”です。
【豊臣兄弟!】後に藤吉郎(秀吉)を支える義兄弟──前野長康と蜂須賀正勝、明暗別れたそれぞれの末路袂を分ち合っていた二人は、藤吉郎の交渉術により絆が復活。いろいろな人々に関わるたびに、豊臣兄弟の絆はどんどん強くなっていくようです。
そして、 “信じて・祈り・待つ”(しかできない)という辛い体験をすることで、ようやく直(白石聖)の心情を理解した小一郎。
このドラマの松川博敬チーフ・プロデューサーが「このドラマは「人を信じる力」の話をしている」という通り、改めて「信じる力」が沁みる展開となった第7回を考察してみました。
蜂須賀正勝(左)と前野長廉(右)NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより
胸に秘めた気持ちが炸裂!思いをぶつける直前回、随所に散りばめられた「直の孤独と別れの予感」。
藤吉郎が寧々にプロポーズして、ハッピーオーラに包まれた“豊臣家族の輪”。けれど、そこには加わらず一人離れて祝福の涙を流していた直。彼女の抱える悩みや孤独がひしひしと伝わる場面でした。やはり、直は小一郎と、別れる決意をしていました。
『豊臣兄弟!』直(白石聖)の孤独と別れの予感…“家族の輪”に入れなかった直は豊臣秀長の原点だった今回、祝言直前に藤吉郎と寧々が口喧嘩をします。
「今日のお寧々はお市様(宮﨑あおい)と比べて遜色ない(くらいきれい)」と口を滑らせた藤吉郎にカチンときた寧々が言い返す、という他愛のない内容です。(“人たらし”なわりにデリカシーがない藤吉郎)
喧嘩を止めようとする小一郎に対し、「こんな婚礼やめたほうがええわ」と、無表情で言い放つ直。「花嫁のことを一番に思わなくてどうするんじゃ!」と。
寧々の加勢をしているようで、「兄ばかり優先する」小一郎に対しても言っているのではないでしょうか。
さらに「どうせ口先だけじゃろ!あんたら兄弟はいつもそう!お寧々様、こんなのと一緒になっても悲しい思いをするだけ。考え直されませ!」と、ものすごい“毒”を吐きます。
「これ以上、兄者をこけにしたら許さん」と怒る小一郎にひるまず「ま〜、仲のよろしいこと!いっそ、あんたらが夫婦になったらどうじゃ!」と、直節が炸裂しました。
以前、3話『決戦前夜』でのこと。清州に到着したとき、キャッキャッとはしゃぐ兄弟を見ながら、「まるで、あの二人が夫婦になるようじゃ…」と直が呟いていたのを覚えていますか。ずっと心の中に残っていたのですね
小一郎に対して感じていた、孤独・不安・心配などが溜まりに溜まってブチキレてしまった。そんな己を責め、さらに自分を追い込んでしまう直が切なかったです。
「中村に帰る!もうあんたとは一緒になれんわ…本気じゃ」と宣言します。
直の剣幕に度肝を抜かれ、仲直りをした藤吉郎と寧々。喧嘩を止めるための直の芝居か!と思った小一郎は、「なかなか芝居が上手いのう」と言います。
けれども、「すまん。あれは芝居じゃない。本気じゃ」と直。静かに別れの決意を湛えたまっすぐな瞳が悲しかったですね。
”豊臣家族”の祝福の輪には入らず離れて見守る直。NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより
策士なのに直の気持ちに超鈍感な小一郎故郷に帰るために部屋で荷造りをする直に、小一郎は「あれは(別れを告げたこと)本気だったのか?」と詰め寄り「他に好きな男ができたのか」と問います。
女心に鈍感過ぎる小一郎。「べらぼう」の蔦重を彷彿させる鈍感さでした。
「父親から縁談の話があるから戻ってこいといわれている」と言う直。「そういうことが嫌で村を出たんじゃないんか!」と小一郎に詰め寄られ「まあ、心変わりじゃ」と答えますが、目に涙が浮かんでいるのが切ない。
さらに、タイミング悪く、あさひの夫・甚介(前原瑞樹)が「殿に墨俣城攻略を任された!藤吉郎が呼んでいる」と駆けつけ肝心な会話は途切れます。
「また…」というように顔を曇らせる直に、「あとで話そう」という小一郎。「私はもう決めたんじゃ、話すことなんかない!」と叫ぶ直の気持ちは痛いほど分かります。
そんな直の心情を察した母・なか(坂井真紀)は、直に「兄弟が心配でしょうがない。直さんがいてよかった。これからも私の弱音をきいてちょ」と、さりげなく寄り添います。その会話を廊下で聞きつけ「あなたがいなくなったら私はどうするのよ!」と、引き止める寧々。
「小一郎のことが嫌いになったの?」と問うも、「その逆じゃ。このままだと私が小一郎に…」と言いつつ直は倒れてしまいました。
前回「藤吉郎さんと私とどっちが大切なの!」と口走ったことを後悔していた直。次は「侍はやめて!」などと口に出しそうな自分が怖い、そんなことを言ったら小一郎に嫌われると、追い込まれた心境だったのでしょう。
失いそうになってわかる存在の大きさ熱病に倒れうなされている直。「何かできることはないのか?」とうろたえるばかりの小一郎に「ないっ!」と叱ったのは寧々でした。
「ただ祈って、信じて、待つしかない。直もそうやって戦に出たあなたのことをずっと待っていたのよ。」と言います。
小一郎の脳裏に浮かぶのは「生きていれば十分じゃ」と戦から戻った自分を抱きしめた直、「あんたにはただ生きていて欲しい」と訴えた直の姿。
彼女が危険な状態なのに、なすすべはなく、祈って・信じて・待つしかない。やっと、その辛さがわかった小一郎でした。
小一郎は、寺に行き、今まで貯めた小銭をすべて捧げ「直をお救いください」と雨に打たれるのも構わずに祈り続けます。その祈りが通じたのか、意識が戻った直。
そんな直を抱きしめ「お前の気持ちなんもわかっておらんかった。辛い思いをさせて気づいてやれなくてすまん。わしは死なん。かならず直のもとに生きて帰る。だからどこにも行かんでくれ。」と、言ったのでした。
無事を祈り信じて待つしかない身の辛さを小一郎に教える寧々。NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより
「お主がわしの帰る場所なんじゃ。」「お主がわしの帰る場所なんじゃ。」と直に告げた小一郎。
前回の「豊臣兄弟!」の直の存在や心境の考察記事で、直は『私が小一郎が帰ってくる唯一の場所」になりたかったはずと書きました。
『豊臣兄弟!』直(白石聖)の孤独と別れの予感…“家族の輪”に入れなかった直は豊臣秀長の原点だった今回、その通りの言葉を小一郎が直に伝えたので、とても喜ばしかったのですが……。
自分が痛みを感じることで人の痛みを理解できる、そんな積み重ねが、温厚で人望が厚いと史実でも伝わるのちの秀長を形成したのかもと思うと、直は「秀長の原点」を作った存在として、このドラマでは必要なキャラクターなのでしょう。
やっと二人は夫婦に?と願いたいのですが、小一郎の正妻として「慶(吉岡里帆)」の存在を公式が発表しています。
そして、気になるのは「直」の紹介文に「乱世に翻弄される悲劇のヒロイン」と書いてあること。この悲劇とは、いったい何を表しているのでしょう。
今回、二人の心の距離が縮まって直がやっと幸せになりそうなだけに、今後の展開が怖いです。
「生きているだけで十分」。直の心情がやっとわかった小一郎。NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより
「乙女みたい」と言われている荒くれ者の蜂須賀正勝さて、一方で今回強烈な印象を残したのが、川並衆の筆頭・蜂須賀正勝と義弟の前野長康の関係。
正勝は、絵に描いたような泥臭い荒くれもので、「わしは誰の下にもつかぬ!」と豪語するツヨツヨのキャラクター。
演じる高橋努さんも「蜂須賀は、“泥臭さ”を持った人物……「男の中の男」そんな武将だと思います。」という内容のコメントをしています。
そして「おちゃめな面も入れたい」とご本人が言うように、SNSでは「乙女っぽい」「可愛い」と評判に。
というのも…
以前は義弟だった前野長康に「この織田の犬が!」と斬りかかりつつも、トドメを刺せずに刀を止め悩む。
藤吉郎がいきなり長康をドロップキックで川に突き落としたとき「え?えぇぇぇ〜」というすごく狼狽した表情を見せる。
あっけに取られた隙をつき、藤吉郎に「仕事の話をしにきた」とかぶせられ「いいだろう」と答えてしまう。
そして、「あなたは軍神じゃ」と言われて切なさそう。
などなど、強面の風貌なのに、表情が繊細なキャラクターだからでしょう。
「前野殿の屋敷に行ったとき、空き家となって時間が経つのに思ったよりも綺麗だった。誰かが手入れをしていたようだ。本当は戻ってきてほしいと願っていたのではないか」と藤吉郎に指摘された正勝。
空き家の屋敷を掃除して手入れしてたのですね。絆は断ち切れてはおらず、信じていたのでしょう、またいつか長康と共に手を携えて働けるときを。
そこに、敵の斎藤龍興(濱田 龍臣)軍が前野邸に押し寄せてきたという知らせが入ります。
「一緒に戦いに行こう!前野殿も待ってるはず」と正勝に声をかける小一郎。「お前に何がわかる!」と言われるも「わしにはさっぱりわからん。けれど、兄者がそう言うならそうなんじゃ!」とにこやかに返します。
「兄者がそう言うならそう」なんという迷いのないパワーワード。
「兄弟の絆」と「人を信じる力」というテーマが、このドラマの根底に流れていることを改めて感じました。
瞬時に絆が戻った正勝と長康の義兄弟愛敵に包囲された前野邸に駆けつける、蜂須賀軍と豊臣兄弟。
「久々の勝ち戦じゃ。墨俣の砦作りわしひとりでは手にあまる。また、一緒にやるか正右衛門」正勝
「むろんじゃ!」長康
仲違いしたブランクについて余計なことは言わず、これだけで一気に元の義兄弟に戻る二人。決別はしても、お互いの絆を感じながら言い出せず、元に戻るきっかけを待っていたのでしょう。
長康が、最初は礼儀正しく、藤吉郎に突然川に蹴り落とされても怒らず(というか、藤吉郎の作戦とすぐ察した)紳士的だったのに。
正勝に「また、一緒にやるか!」と言われた瞬間に、「おお!」といきなり、ニヤリとして川並衆らしいワイルドな顔に変わったのがよかったですね。
負けつづけ、疫病神とののしられるようになった義兄弟。久々の戦では囮に使われた。「だからもう誰の下にもつかない」と決めた兄。「そんな烏合の衆ではこの乱世は生き延びれない」と織田についた弟。
そんな義兄弟の仲を元に戻し、さらに自分の強力な戦力とした豊臣兄弟。
「この川波衆がお主らに力を貸す!」
ともに手を携え、自分らを見下し利用した世の中を見返す戦いが始まる……目に涙を浮かべて抱き合う豊臣兄弟と義兄弟たち。まるで王道の少年漫画のようにぐっとくる場面でした。
「兄弟の絆」「人を信じる力」が、運命を動かし変えていく。人間と人間のつながりが丁寧に描く「豊臣兄弟!」。今後の展開が楽しみですね。(とはいえ、直の行末がすごく心配なのですが)
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