2024年紅麹事案 研究解説記事④ 自社サイトに公開 行政は「モナコリンK過剰摂取」仮説を検討したか-競合仮説不在の手続き問題 (2/4ページ)
この評価において最も頻度の高い副作用は筋骨格系(横紋筋融解症を含む)であり、次いで神経系、消化器系、腎臓(11.3%)、肝臓の順とされた。
【2024年以前の国際的な規制・警告の状況】
● スイス:2014年、紅麹サプリメントを違法と判断・販売禁止
● EFSA(欧州食品安全機関):2018年、モナコリンK 10mg/日で重大なリスクと結論
● ベルギー保健高等評議会:2016年、横紋筋融解症・腎不全リスクを勧告
● ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR):2020年、紅麹サプリの摂取を避けるよう勧告
● フランス・台湾:慢性疾患患者への警告を継続的に発出
● EU:2022年、モナコリン類の1日摂取量を3mg未満に制限する規制を発令
2.行政機関自身のデータベースに存在していたリスク情報
特筆すべきことに、厚生労働省が運営する統合医療情報発信サイト(eJIM)は、2024年以前から「モナコリンKを大量に含む紅麹製品は、筋肉・腎臓・肝臓へのダメージなど、スタチン系薬剤と同様の潜在的副作用がある」と日本語で公式に掲載していた。すなわち、行政機関自身のデータベースにモナコリンK過剰摂取リスクに関する情報はすでに存在していた。
さらに小林製薬の中央研究所は、紅麹投与群がモナコリンK単独投与と比較して血中移行性が約4倍に達するというPK試験データを保有していたことが確認されている。EFSAが安全上の懸念を示した投与量域(3〜10mg/日)に近いレベルで、製品摂取者が意図せず高い薬理作用に曝されていた可能性がある。当該データが消費者庁への機能性表示食品届出において適切に報告されたか、あるいは行政がそれを安全評価に活用したかについては、確認できる記録が存在しない。
3.競合仮説不在という手続き的問題
科学的な原因究明においては、特定の仮説を「有力」と結論付ける前に、合理的な競合仮説を体系的に評価・除外することが基本的要件とされる。食品安全調査における「鑑別診断的アプローチ」がこれに相当する。
本事案においてより自明な競合仮説として検討されるべきであったのは、「モナコリンK(ロバスタチン)の過剰摂取または高い血中移行性に起因する横紋筋融解症→急性腎障害」という仮説である。