『豊臣兄弟!』ただの“母の日回”ではなかった!なか・寧々・お市、三人の母が残した「覚悟の言葉」を考察

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『豊臣兄弟!』ただの“母の日回”ではなかった!なか・寧々・お市、三人の母が残した「覚悟の言葉」を考察

『あのころ、“あんたらがいて欲しかった”と思うたような、お大名になりんさい』

大名になったものの「上手くできるかのぉ…」と本音をもらす秀吉(池松壮亮)と小一郎(仲野太賀)に、「あんたらならできる!」と励ます実母・なか(坂井真紀)。

この、揺るぎない絶対的肯定感のある言葉を母に言われ「かっこつけずに頑張るしかない」と、兄弟は決心を固めます。100%認め・誉め・ハッパをかけてくれる……母の言葉は心に沁みたようです。

NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」第18話『羽柴兄弟!』。奇しくも、5月10日(日)は「母の日」でした。そこに合わせたかどうかはわかりませんが、さまざまな『母』が深い印象を残した今回。

※第18話『羽柴兄弟!』振り返り記事:

『豊臣兄弟!』なぜ長篠合戦を描かない?若き家臣団の登場と史実の違いを読み解く…第18回放送を考察

豊臣兄弟を生み育てた実母・なか。秀吉の『最強スター家臣団』となる子飼いの家臣を育んだ母・寧々(浜辺美波)。そして、豊臣の終焉を招いたといわれる茶々(淀殿)を産み育てたお市(宮﨑あおい)。

せっかくの「母の日回」だったので、それぞれの『母』の存在と言葉に注目してみました。

とうとう長浜城の城主となり「羽柴」を名乗ることになった豊臣兄弟。(NHK大河「豊臣兄弟」公式サイトより)

天下人の実母で「戦国一の胆っ玉かあちゃん」・なか

まずは、実母のなか。女手一つで二男二女を貧困時代から育て上げた、たくましいお母さんですが、どこかいつも泰然自若としている女性です。息子たちが異例の出世を遂げていくことに戸惑いを感じているものの、いつも「絶対的な味方でいる」安心感があります。

思えば、豊臣兄弟を「大名でも将軍でもない、それ以上のあの太陽のようにおなり!」と送り出してくれた『戦国一の胆っ玉かあちゃん』でした。

今回、たぶん秀吉が「大名になったのだからもっといい着物を作るように」と呼んだのでしょう、長浜城に商人がたくさんの反物を持ち込んできました。

ウキウキの豊臣レディースはキャッキャッとあれこれ品定め。「これどうじゃろ?」と、母のなかが選んだ渋い銀色の反物に、とも(宮澤エマ)もあさひ(倉沢杏菜)も大絶賛です。

けれども、今だに豊臣家に馴染んでいない(吉岡里帆)は「この反物はどれもこれも粗悪な安物だ」と指摘します。「そのようなことも見抜けぬくせに大名家が聞いてあきれますわ」と。

「言い方」はかなりアレなのですが、「豊臣家は百姓あがりで、反物の良し悪しなどわかるまい」と安物を売りつけようとする悪徳商人に騙されていることを皆に教えるとともに、商人にも「この豊臣家には見る目を持つ武家の娘もいるんだぞ。なめんなよ」と釘を指したのでしょう。

慶なりに、豊臣家を心配し歩み寄っている感じもしました。(ほんと、言い方が…)

そして、注目は最後の宴会の場面。『最強スター家臣団』を構築する選抜大会を経て、信頼できそうな優秀な家臣を選び、満足そうな秀吉は宴会を開きます……。

ニューフェイスも古参の家臣も皆で飲めや歌えの楽しそうな様子を見て「よい家臣に恵まれた」と満足そうにいいながらも、「上手くできるかの」と不安に襲われる秀吉。

そこに、「あんたらならできる」と言いつつ、件の銀色の反物を使って作った打ち掛けを羽織って登場したおっかさま。安物と承知の上で買って仕立てたのでしょう。なかにとっては、大切な息子からの贈り物。それが、安物だろうが・質が悪かろうが・ぼったくられていようが、関係ありません。

「ま〜た、いいかげんなことを」という小一郎に「いいかげんじゃないよ。あんたらならできる。あんたらだからこそ、できる」というなか。

楽しそうな家臣たちのほうを見ながら、「あんたらは、ずっと向こう側にいたんじゃないか。あの頃、あんたらが“いてほしかった”と思ったようなお大名になりんさい」と。

母の「絶対的な肯定感」ほど、子にとって無敵に感じる援護はないでしょう。

「どうじゃこの着物!」と自慢するなかに「べっぴんじゃ!」と誉めつつ、「まったく安物がよう似合っておるわ。わはははははは!」と笑う兄弟。

母親に向かってすごく失礼なのですが、込み上げる不安や緊張がおっかさまの言葉で和らいだ様子。「安物の粗悪品と知りつつ息子からの贈り物なので喜んで打ち掛けにした母」を嬉しく思ったでしょう。

なかはあえて安物の反物を打ち掛けにして着ることで、「大名になったからとかっこつけないでいい。ありのまま昔の気持ちでやればいい」ということを息子たちに身をもって教えたのだと思います。

「かっこつけとってもいかんのう。わしらはもともと百姓あがりじゃ。民たちと一緒に泥まみれになったらええんじゃ。」という小一郎の言葉に頷く秀吉。「皆、わしの宝じゃ。皆で良き夢をみよう」という秀吉の言葉に頷く小一郎。

このままの秀吉でいてくれたら……と、思いつつ、農村の貧困時代からまったく変わらないなかの「無敵の胆っ玉かあちゃん」ぶりに、胸がジンとしました。

何があっても絶対的に肯定してくれるのは変わらない頼もしい母・なか(NHK大河「豊臣兄弟」公式サイトより)

育てる意義を見出す「戦国最強ファーストレディー」・寧々

そして、豊臣家を支える『最強スター家臣団』となる子飼いの家臣を育んだ母・寧々。

今回、寧々の父・浅野長勝(宮川一朗太)が亡くなり線香をあげにきた小一郎は、ひさびさに寧々が面倒をみていた加藤清正(伊藤絃)と福島正則(松崎優輝)に再会し、その成長した姿に驚きます。

史実では、加藤清正の母は秀吉の実母・なかとは従姉妹、福島正則の母は秀吉の叔母・松雲院の子と伝わります。秀吉にとっては血縁関係で小さい頃から寧々が可愛がって育てたとか。ドラマでは、すでに元服を迎える年齢にまで育っていました。

ひさびさに登場した寧々は、今までとはガラッと変わり、前髪もなくなりセンターパーツにした長い髪と上質な着物姿で、すっかり大名の奥様という落ち着きと貫禄が増していました。

寧々は小一郎に初めて「私は幼き頃に父と母に貰われた子なのです」と打ち明けます。実際、寧々の実父は織田家の家来・杉原助左衛門(または定利)で実母は朝日と伝わっています。(なぜ浅野家に養女にだされたのかは諸説あり)

ドラマの中で寧々は、「自分は養女であったけれども、浅野の両親は慈しんで大切に育ててくれた。だから自分もそうでありたい。」と言います。

気が強くてちょっとわがままだけれども、屈託のない性格で明るい寧々。

以前は、夫・秀吉の女遊びに怒り「女遊びは許しませぬ!」と言いつつ「自分には子が産めないから、ほかに好きな女性ができ子ができたら身をひく」と泣いていたこともありました。けれども清正と正則を預かり見守るうちに、「子を産めなくても育てることはできる」という自信がついたようです。

二人が幼い頃の場面はありませんでしたが、きっと愛情を降り注いでくれる寧々を慕い懐いて育ったのでしょう。「二人とも私の可愛い子たちです」と、彼らを見守て微笑む寧々の表情は、自信と慈しみに満ちていました。

実際、寧々は豊臣秀吉の精神的な支柱となり、豊臣家の人事を支え外交官の役目を果たし、子飼いの家臣を育て……と、大活躍をした『戦国最強のファーストレディー』。あの織田信長も徳川家康も一目置くようになったほどの人物です。

「母の日」らしく、天下人のパートナーに相応しい「堂々とした母」になって再登場した寧々が印象的でした。

子飼いの家臣を育てることで貫禄と自身が増した寧々。(NHK大河「豊臣兄弟」公式サイトより)

残された姫たちのため「前に進む」を選ぶ戦う母・お市

そして、守山城(※)に預けられていたお市と三人の娘たちは、ひさびさに岐阜城の信長と再会を果たします。

※守山城:近年の研究によると、お市の方と三姉妹は、信長の叔父の織田信次に預けられ、尾張国守山城で過ごした後岐阜城に移ったとされる。

微妙に気まずそうに目が泳ぐ信長。けれども、お市は、ひたっとまっすぐに信長の目を見つめて堂々と挨拶します。

まだ幼い浅井三姉妹に「わしが怖いか」と尋ねる信長。

長女の茶々(増留優梨愛)は、亡き父・浅井長政(中島歩)が手作りをした『三つ盛亀甲』のお守りを胸に忍ばせていました。母・お市からは「怖くなったらこのお守りを思い出すのです。父上が守ってくださる」と教わっていました。

魔王・信長にひるむことなく胸のお守りを手で押さえつつキッと睨むように「怖くありませぬ!茶々はそんな弱虫ではありませぬ!」と言い返しました。実に、いい「面構え」でした。

そんな茶々に「さすがは長政の子じゃ」と亡くなった父親を讃える信長。浅井長政の存在をタブーにせず、幼い姫に褒め言葉を贈るノブの気遣いが優しい。長政のことは大好きでしたものね。

お市と二人きりになって思わず、ため息をつく信長。「あの子らが怖いのは兄上のほうでしょう」と指摘するお市に「相変わらず手厳しいのぉ」と気まずそうに表情を変えます。

「心配には及びませぬ。兄上は長政殿を最後まで助けようとしたと子らには伝えている」というお市に、「しかしそうはならなんだ。すまぬ」と頭を下げる信長。頭を下げたのは意外でした。本気で助けるつもりだったということだったのでしょうか。

夫・長政の介錯をした時に覚悟を決めたというお市。
「行くも地獄 戻るも地獄 ならば前へ」「あの子らが同じ思いをせぬよう 兄上が作ってくだされ」

思い返せば、長政はお市に三姉妹のことを「そなたのような姫に育ててくれ」と頼んでいましたね。気丈な茶々は、母・お市の方によく似た気性のようです。

のちに秀吉の側室となり子を産んで、最後には豊臣に引導を渡す役目を果たした茶々(淀殿)。

さすがの母・お市も、織田と浅井の血を引いた自分の娘が、豊臣に幕を下ろす役目を果たす……そこまでは想像もしていなかったでしょう。

「行くも地獄 戻るも地獄 ならば前へ」絶対的な強さと覚悟をまとった母の言葉は沁みました。

毅然とした表情で信長をひたっと見つめるお市と茶々。(NHK大河「豊臣兄弟」公式サイトより)

三者三様、豊臣に関わった母たちの生き方

いつも味方でいてくれる「胆っ玉かあちゃん」なか、慈愛に満ちた優しさで見守ってくれる「育ての母」寧々。「たとい女人たりといえども、こころは男子に劣るべからず」という言葉を残した「戦う母」お市。

それぞれの人生をかけた「母」の生き方や言葉に胸を打たれた、「母の日」の第18話『羽柴兄弟!』。制作側が「“戦国もの“というと、合戦や国盗りの話題で男性中心に描かれることが多いので“武将の数だけ女性あり“と、登場する女性を増やして丁寧に描いた」……という、このドラマらしいなと思いました。

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参考:「豊臣家の女たち」福田 千鶴 著

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