「子連れで泊まった旅館で、高そうな湯呑みを割ってしまった。すぐに仲居に事情を話して弁償を申し出たけど...」(神奈川県・50代女性) (1/2ページ)
旅先でかけられたその言葉は、人生で何度も思い出されるものになりました――。
神奈川県在住の50代女性(投稿時)・Sさんの、育児中の体験談。
<Sさんからのおたより>
今から20年ほど前でしょうか。小学生と幼稚園生の娘を連れて、家族で伊豆に旅行に行きました。
旅行といえど、小さい子供を連れており目が離せません。
私は心から落ち着いてのんびり過ごすことは、正直できていませんでした。
高そうな湯呑みを割ってしまって...宿に着くと、担当の仲居さんが丁寧にご挨拶して下さり、子供達のことも大変気にかけて良くして下さいました。
一方私は、仲居さんの素晴らしく行き届いた心遣いに、感心するやら、ありがたいやら、自分はまだまだだな、と心ここにあらずの状態で急須でお茶を淹れようとしたところ、うっかり揃いの湯呑みをひとつ、ぶつけて割ってしまいました。
どうしよう、とても高そうなお湯呑み。弁償しなければと、すぐに仲居さんに来ていただき、事情をお話ししました。すると仲居さんは......。
「お怪我はありませんか? 大丈夫。形あるもの、いつかは壊れます」
それだけ言ってさっと割れた湯呑みを片付けて持ち帰ってくれました。
「あの、お代は?」と言っても聞こえない素振り。翌朝フロントで支払いの際に事情を話し、弁償を申し出ましたが受け入れてもらえず、せめて担当の仲居さんに心づけをと申し出ましたが、それも丁寧にお断りされました。
翌朝、仲居さんの姿はなく...担当の仲居さんの姿を翌朝はどこにも目にすることがなかったので、朝までの勤務で交代されたのかと思っていましたが、宿を後にする際、何事もなかったかのように手を振ってお見送りしてくださっているではありませんか!
気づいた時には間に合わず、手を合わせるように宿を後にしました。
「形あるもの、いつかは壊れます」。あれ以来、思いやり溢れるその言葉は、あらゆる場面で思い出され、子育て中においても何度登場したことか。
素晴らしい心遣いの言葉であると思います。心から感謝しています。