「女の子一人では乗るもんじゃない」夜行列車で男たちに囲まれた 向かいの席に何かが投げられて(秋田県・60代女性) (1/2ページ)
今ではなくなってしまった、東京から東北へ向かう夜行列車。
乗客は「おじさん」ばかり。そのなかでひとり、若い女性が。すると意外な展開に。
秋田県在住の60代女性・Aさんの思い出。
<Aさんからのおたより>
今から45年ほど前、東京の大学に進んだ私が秋田に帰省するため、上野発の夜行列車に乗ったときのことです。
車内に入ると乗客は、出稼ぎ帰りのおじさん達ばかり。ワンカップを片手にもう出来上がっている人もいました。
昼の特急「つばさ」や「いなほ」にすればよかったと後悔しましたが、後の祭り。もの珍しそうに私を眺めるおじさん達の前を通って、空席だった4人がけのボックス席を選んで座ると、カバンの中から文庫本を取り出して読み始めました。
「どこに行くのか」「何歳か」その時、私の向かいの席にぽんと何か置かれました。袋に入ったおせんべいでした。
「姉ちゃん、食べろ」
通路を隔てた横の席のおじさんからでした。
それを皮切りに、つまみやらチョコレートやらたくさんのお菓子が私のところに集まってきました。
「どこに行くのか」「何歳か」
などおじさん達に聞かれて答えているうちに、車内は賑やかな宴会状態に。
家族のこと、田舎のことを話す人、みんな故郷に帰るのを楽しみにしていることが伝わってきて、心の中がほっこりしてきたのを覚えています。
優しいおじさん達のおかげで、夜中もぐっすり眠ることができました。
夜行列車に乗ったのは、あれが一度きりその後、東北新幹線が開通すると夜行列車もなくなり、今ではあの頃の半分近くの時間で東京にも行くことができるようになりました。
でも、残念ながらあんな素晴らしい出会いはもうありません。
ただ夜行列車に乗ったのは、あれが一度きりでした。おじさん達から、
「女の子一人では乗るもんじゃない」
と言われたので。