建築費高騰で「理想の空間」はどう変わる? 住宅・クリニック設計で問われるコストと機能 (2/3ページ)
同事務所では、医療施設に必要な条件を満たしたうえで、自然光や視線の抜け、木目などの素材感を取り入れることにより、利用者の心理的な負担を和らげる設計を検討しているという。住宅設計で用いられる空間づくりの考え方を、医療施設に応用する形だ。
一方、クリニックでは建築基準や衛生面への配慮に加え、将来の医療機器更新や診療体制の変化も想定しなければならない。デザインの自由度をどこまで確保できるかは、施設ごとの条件によって大きく異なる。見た目の印象だけでなく、数年後、十数年後の使い方まで考えた設計が必要になる。
なぜ施主と設計者の意思疎通は難しいのか
建築家や設計事務所への依頼に対して、「費用が高そう」「自分の要望をうまく伝えられるか不安」と感じる人もいる。住宅なら家族構成や生活習慣、クリニックなら診療方針やスタッフの動きなど、建物に求められる条件は施主ごとに異なる。
そのため、「何部屋ほしいか」「どこに受付を置くか」といった表面的な条件だけでは、実際に使いやすい空間になるとは限らない。同事務所では、ヒアリングの際に日常の行動や診療の流れ、将来的な使い方まで確認しながら、優先順位を整理していくという。設計者との対話を通じて、施主自身が何を最も重視しているのかが明確になるケースもある。
ただ、こうした進め方には時間がかかる。早期開業や短期間での建築を優先する場合には、仕様があらかじめ決まったパッケージ型の建築の方が適しているケースもある。設計事務所への依頼がすべての施主に向いているわけではなく、予算や時間、建物に求める自由度によって選択肢は変わってくる。
建築費高騰時代に考えるべき「優先順位」建築を取り巻く環境は、資材価格や人件費、社会的なニーズによって変化し続ける。