「天狗の髑髏」に「雷獣のミイラ」!?史実と伝承が交差する…日本各地に眠る奇怪な物体たちの正体

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「天狗の髑髏」に「雷獣のミイラ」!?史実と伝承が交差する…日本各地に眠る奇怪な物体たちの正体

今年は妖怪をテーマにした大きな展覧会がありました。東京・寺田倉庫で行われていた「動き出す妖怪展」が記憶に新しいのですが、現在は京都で百鬼夜行を模した「怪々YOKAI祭2026」が行われています。

妖怪ネタはそろそろ尽きただろう…そう思った筆者、日本には「人魚」以外にも、たくさんのミイラや不思議な物体が残されていることを知りました。

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天狗は犬の姿だった?

和歌山県の慈光圓福院には「天狗の髑髏」が残されています。1723年(享保8年)に伝わったものとされていますが、実際、何なのかはわかっていません。その頭蓋骨は長いくちばしをもったペリカンのような形をしています。

そもそも天狗は「天の狗(いぬ)」と書く通り、古来中国では犬とされていました。それは隕石が落下する衝撃音が、犬の吠える声に聞こえたためと言われています。

しかし日本では、『日本書紀』に登場した際に「あまつきつね」と読みがあてられて、犬ではなく狐と考えられるようになりました。

隕石=空をかけるという特徴から鳥の特徴も加わり、室町時代には頭部が鳥で、体が人の姿をした姿に変容したそう。

慈光圓福院でこの謎の頭蓋骨を前に様々な識者が意見を交わしましたが、あの平賀源内が「天狗のしゃれこうべだと皆が騒いでいるなら、そういうことにしてもよかろう」といって、論争に終止符を打ったそうです。源内、平和主義者なのか面白がっていたのか?

『天狗髑髏鑒定縁起』

温泉地でお土産になった雷獣のミイラ

岩手県花巻市の雄山寺や、新潟県の西生寺など、日本各地に「雷獣」と呼ばれるミイラが残されています。後者のミイラは、雷が落ちてきたときに一緒に空から降ってきた雷獣だと伝わっています。

『信濃奇勝録』にも長野県の蓼科山には雷獣が住んでおり、「姿は子犬に似て毛は狢のよう、目の周りが黒。ツメは5本で、鷲のように鋭い。冬は穴を掘って土にもぐるから〈千年もぐら〉と呼ばれており、普段はおとなしいが雨が降りそうになると狂暴になり手が付けられない、夕立の時は雲に飛び込んでいく」と記されています。

江戸時代の俳人・栗本玉屑は出羽の国で、なんと若者たちが「雷獣を捕まえて食べた」ことを聞き、書物に残しています。

これほどまでに各地で見つかる「雷獣」。雷の鳴っているときにたまたま見つけた獣を「雷獣」としたのでしょうか。

ちなみに昭和10年頃、花巻温泉周辺では、動物の遺体を加工した「雷獣(あるいは河童、人魚など)のミイラ」が土産ものとして販売されていたそうです。観光資源として活用される雷獣は、それだけ身近な存在だったのですね。

『鳥獣魚冩生圖 雷獣』(栗本丹洲画、国立国会図書館)

竹原春泉画『絵本百物語』に「かみなり」の題で描かれた雷獣(Wikipedia)

大学という名の不思議な妖怪

「荒木家妖怪絵巻」という昨今有名な絵巻物があるのをご存じでしょうか。福岡県の志賀島出身で、江戸時代から続いた医者の家系です。その絵巻物に「大学」という名の妖怪?が登場します。

この大学が登場したのは、現在の滋賀県・岐阜県あたりの寝物語という里。大学という名は誰が名付けたのかと問うと、先祖の名で、山の殿の一の臣だという。

里の人が山の殿とは酒吞童子かと問うと、それには答えずに「荊大学」と名字を含めて名乗ったそうです。彼は古い鏡や剣、革の袋を持っていたが決して手放さなかったようです。

年齢は400歳、肌はイノシシの毛のようで、おならが非常に臭いという特徴があったようです。おならが臭いって…。ともあれ地元の人は彼を「山黒様」とよんで尊敬し、関係は良好だったそう。

江戸時代後期の『北越奇談』という書物にも、赤い髪で裸の大男が現れたとあります。
大学と大男などは、絵巻を見ると共通して裸で剛毛のようです。結局正体はよくわかりませんが、地元の人と交流し、害のない存在だったようです。

荒木家妖怪絵巻より

豊臣政権を揺るがした、降ってきた「毛」

文禄5年7月15日、豊臣秀吉の時代に京都で空から毛が降るという怪異が起きました。その毛は、馬の尾のような白や黒、赤い毛が降り、長さは15~60cmにもおよんだそうです。

毛が降る2日前には伏見城が大破するほどの大地震がおき、世間は秀吉への天からの警告だと恐れられました。

毛の目撃例はこのときだけではありません。

1707年(宝永4年)、富士山で史上最大の大噴火が起こりました。江戸が暗くなるほどの火山灰が空を覆ったのですが、その時も空から毛が降ってきたそうです。伊能忠敬の義理の祖父が毛を拾い集め、現代にも残されているそうです。

1793年にも江戸で毛が降ったという記録が残されていますが、この毛はいったい何なのでしょう?

火山毛というマグマが引き延ばされてできるガラス繊維という説もありますが、おだやかな噴火の時にしか発現しないそうなので、すべての毛の説明にはならないそうです。

「神社姫」になった人魚

その肉が不老長寿を与えるとして有名な人魚。人魚の肉を食べて800歳まで生きた八百比丘尼の伝説も相まって、いつしか人魚は妖怪を超えて神のような存在に。その後は江戸時代には疫病除けや商売繁盛を授ける存在としても変容していきました。

江戸で赤痢が流行ったときに、美しい女性の顔と龍の体を持つ「神社姫」という妖怪が現れます。これは文政2年(1819年)、肥前国のある浜辺に現れた、全長2丈あまり(約6メートル)の、2本角と人の顔を持つ魚のようなものが原型のようです。

以前こちらでも紹介されましたが、「神社姫」は人魚の系譜をくむ妖怪とされています。

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その神社姫は「豊作が続いた後、永病が流行するので自分の絵を張り付けるように」と予言したとされ、厄除けの絵として描かれるようなりました。

人魚のミイラは「雷獣」と同じく、見世物やご利益アイテムとして積極的に作られていたようです。

日本の寺社には奉納された奇怪な存在が、まだまだありそうですね!

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参考書籍:『妖怪大探検』(PHP研究所)など

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