「小さい会社」は、なぜ強くなれるのか―静岡県立大学・岩崎邦彦教授が語る「小ささを強みに変える」マーケティング (2/5ページ)
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岩崎氏は「大は小を兼ねない」とし、多様化する市場にきめ細かく応えられることこそ、小規模企業の競争優位になり得ると説きます。
同書では、消費者・買い手、中小企業経営者、そして廃業者という3つの視点から中小企業のマーケティングを分析しています。成功企業だけを見ることで生じる「生存者バイアス」を避けるため、廃業者の調査も組み合わせ、「何が明暗を分けるのか」を立体的に捉えている点が特徴です。
また、これからのマーケティングでは、論理やデータに基づく「サイエンス」と、人の感情や共感を動かす「アート」の双方が不可欠だと指摘。価格や機能だけの一元的な競争から離れ、「好きだから選ぶ」「共感するから選ぶ」というブランドの力を育てることが、小さな会社の強さにつながります。
■「何でもできます」では選ばれない――引き算でつくる、自社だけの「マーライオン」
小さな会社ほど「あれもできます、これもできます」と強みを足し算しがちです。しかし岩崎氏は、「色々という色はない」「総花という花はない」と表現し、何でもできることを訴えるほど企業の個性やイメージが薄れてしまうと指摘します。
そこで重要になるのが、他社に負けない明確な「シンボル」をつくることです。岩崎氏は、シンガポールと聞けばマーライオンを思い浮かべるように、企業にも顧客の頭の中に鮮明なイメージを生む存在が必要だとして、これを「マーライオン効果」と呼びます。
「すべてが得意」ではなく、「これなら負けない」を明確にする。足し算ではなく引き算によって強みを研ぎ澄ませることで、限られた経営資源を集中させ、顧客から選ばれるブランドへとつなげる考え方です。
■成功事例を真似るのではなく、「自分だけの土俵」で一番を目指す
ブランドづくりの出発点は、広告やロゴの制作ではありません。岩崎氏は「ステップ0」として、まず社内で「ブランドとは何か」の認識をそろえ、「ステップ1」で自社がどのようなブランドになりたいのか、その理想像をスタッフ全員で共有することが重要だと説明します。
同時に、成功企業の事例をそのまま模倣しても強いブランドは生まれないと指摘します。必要なのは、自社独自の土俵をつくり、その領域で一番を目指すこと。「真似をするのではなく、真似をされる。