青年はなぜ自殺に追い込まれたのか...JR新宿駅痴漢冤罪事件 (2/2ページ)

東京ブレイキングニュース

 違法な取り調べであっても、条理上、取調官は、被疑者の生命、身体の安全を保護し、健康を保持すべき義務がある。身柄を解放する時点で、痴漢の疑いが晴れたことを告知しなければならない。心身ともに疲れ果てていることが明らかだった信助さんが、自暴自棄的な行動が出ないように、母親に連絡し、迎えに来てもらうか、警察官が自宅に送り届けるなどの対処をすべきだった。

5)原告の母親に対する不法行為。信助さんの自殺を知った跡に、尚美さんは事実を明らかにすることを求めた。しかし、警察官が適切な対応をしていないこと、新宿駅のカメラには信助さんの痴漢行為は映っていないこと、被害者とされる女性と一緒にいた男性らや新宿駅駅員らが信助さんに暴行している様子が映っていること、痴漢の訴えが存在しないことなどを知らせていない。

 さらには、嫌疑が晴れているにもかかわらず、死亡した信助さんを被疑者として改めて捜査。検察庁に書類送検し、「被疑者死亡」を理由に不起訴にした。この捜査を指揮した者と関与した警察官ら全員が不法行為者とした。

 前回の弁論準備で裁判長が変わり、「原告の権利侵害が分からない」と言われ、整理することが求められていたが、清水勉弁護士は「手続きは順調に進んでいる。基本的な主張は変わっていない。この整理のほうがストーリー的にわかりやすい」と話した。

 自殺に至る心境も不法行為によって生じたことについては、「自殺したくなるほどの精神的苦痛を得たということ。まじめな人であればあるほど、汚名を背負っていかになければならないと思ってしまう。そう思う人がいる。気に病む人、絶望感を抱く人もいる。いろんなことを配慮しなければならない。嫌疑が晴れたことを告知をすればよかった。嫌疑が晴れて自殺をする人はいない。自殺は予見できないが、思い込む人がいるとは想像できる。『嫌疑が晴れたからね』と言えば、自殺は止めることができた」と清水弁護士は説明した。

 次回は11月12日で弁論準備(非公開)。今後の焦点は、証人尋問の人選となる。

Written Photo by 渋井哲也

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