プロ野球の定説、日本シリーズ「2戦目必勝論」は本当か?|プチ鹿島コラム

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 4勝1敗でソフトバンクが日本一になったプロ野球日本シリーズ。

 監督や評論家になったつもりであーでもないこーでもないと観戦するのがオヤジのたしなみ。7戦のうち先に4勝したら決まるこの短期決戦でオヤジが居酒屋や職場で吹聴する説がある。それが「2戦目必勝論」だ。

 これは西武ライオンズの黄金時代を築いた森祇晶が唱えていたことから定説となっている。2戦目に勝てば、次の3連戦までの移動日を気分よく過ごせるという精神的なメリットなどをあげている。

 この「2戦目必勝論」は本当なのか? 実際に調べた本がある。2009年に出版された「日本シリーズ全データ分析 短期決戦の方程式」(小野俊哉 ちくま新書)だ。

 WBCや五輪での国際試合も注目されたこの頃、著者は「短期決戦の本質を定量的に導き出せるものはないか、と考えたときに浮かんだのが、日本シリーズ」だとし、2008年までの日本シリーズ全59大会350試合のスコアを電子化し、解析を試みた。

 森祇晶は選手時代を含め日本シリーズ20連勝している実績を持つが、1戦目が12勝7敗1分け(勝率・631)で、2戦目は13勝7敗(勝率・650)だった。実際には1戦目も2戦目も勝率はあまり変わらなかった。

 日本シリーズ全体の歴史でも、日本一になったチームの2戦目の勝敗は38勝21敗(勝率・644)、1戦目については37勝20敗2分(勝率・649)。全体でも2戦目の勝率が高いという実績は特にないのだ。

 注目すべきは「第3戦」であることを著者は指摘する。巨人の監督だった川上哲治は日本シリーズ11度出場、11回優勝を達成しているが、特徴のひとつが「3戦目までに2勝1敗を必ず確保」し、とくに第3戦に限って言えば「10勝1敗」と完璧な成績だった。

 先述の森祇晶がシリーズで敗退した4回のケースを見ると、3シリーズが1、2戦連敗スタートだった。つまり、第3戦までに「2勝1敗」を確保できるか、ここがポイントなのだ。ちなみにこの本のデータ以後の2009年から2014年を調べてみると、2011年のソフトバンク以外はすべて第3戦までに「2勝1敗」を確保し、第3戦を勝利していた。

 この事実、阪神・和田監督に誰か早く言っておくべきだったか……。

 あと、この本では「野球とは、日本シリーズ、ペナントレース問わず、2試合に1試合ある3得点以下の試合の勝率をいかに上げるか、そこの格闘である」とし、「日本シリーズで3得点以下だった試合の勝率」を、4回以上出場した13監督で比較している。歴代順位は三原脩、川上哲治、森祇晶のそうそうたる順だった。

 そして大注目は、最下位の13位が西本幸雄だったのだ。そう、大毎、阪急、近鉄を率いて8度シリーズに挑戦し、ついに一度も頂点に立てなかったあの「悲運の名将」である。3得点以下だった試合での西本監督の勝率は「1勝24敗」。データって怖い。

 考えてみると今年の日本シリーズも3得点以下で決まった試合が2試合。サヨナラ3ランで決まった第4戦も接戦とカウントすれば3試合だった。この事実、和田監督に誰か早く言っておくべきだったか……。

 とりあえず世のオヤジたちは、来年からは第2戦ではなく「第3戦必勝論」を居酒屋で吹聴することをオススメする。

著者プロフィール

putikashima

お笑い芸人(オフィス北野所属)

プチ鹿島

時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。

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