日本エレキテル連合は本当に「一発屋予備軍」なのか?
【ラリー遠田のお笑いジャーナル】
11月に入り、2014年もそろそろ終わりが見えてきた。今年一番のブレイク芸人といえば、やはり日本エレキテル連合だろう。未亡人朱美ちゃん3号と細貝さんのキャラクターに扮して、「いいじゃないの~」「ダメよ~、ダメダメ」と言い合う2人の姿をテレビで見ない日はない。
そんな彼女たちは今、津波のように襲いかかる熱狂の最中にいる。そして、人々の好奇の視線にさらされながらも、「一発屋になるのでは?」という不安とも戦っていかなければいけない。お笑い芸人にとって「売れる」というのは素晴らしいことだ。好きな仕事をして、多くの人に求められ、多くの仕事が舞い込み、多くのお金を手にすることができる。
だが、一方で、急に売れすぎることにはリスクも伴う。爆発的に売れた人がたどる道は、売れっ子への道か、いわゆる一発屋への道か、2つに1つだ。大ブレイクという劇薬を服用した結果、一気に羽ばたいていくのか、副作用で身を滅ぼすのかは、誰にも予測できないのだ。
(ちなみに、一発屋というのは蔑称なので個人的にはあまり率先して使いたくはないのだが、意味がわかりやすいし、芸人自身がわざとネタとして使うこともあるので、あえて本稿ではこの表記を用いることにする)
果たして、日本エレキテル連合は一発屋になってしまうのだろうか? その可能性について、過去の事例と比較検討してみることにしよう。
ゼロ年代の一発屋芸人とは異なる環境でブレイク
一発屋芸人として一般に知られているのは、ダンディ坂野、波田陽区、レイザーラモンHG、ヒロシといった面々。彼らの売れ方は並大抵のものではなかった。だからこそ、今でも彼らのうちの多くは一発屋芸人というくくりでテレビに出演する機会もそれなりにある。このあたりの人たちは、ゼロ年代(2000~2009年)のお笑いネタ番組ブームの時代に、時勢に乗って爆発的な人気を博した。
ただ、彼らがテレビに出まくっていたときの状況と、日本エレキテル連合の今の状況には大きな違いがある。それは、お笑いネタ番組の有無だ。
ゼロ年代のお笑い全盛期に売れた人たちには、出るべき番組がいくらでもあった。実際、彼らにははっきりとここから売れたというきっかけのようなものがあった。例えば、ダンディ坂野は『爆笑オンエアバトル』から、波田陽区は『エンタの神様』から、ヒロシは『笑いの金メダル』からだ。
だが、日本エレキテル連合にはそれがない。明確なきっかけがあるわけではなく、数少ないネタ番組などでコントを披露しているうちに、そのコントの内容がゆっくりと時間をかけて広まっていった感じがある。だからこそ、お笑い業界の中で「最近、彼女たちが面白い」と噂されてから、実際に世間が騒ぎ出すまでにかなりのタイムラグがあった。これはひと昔前には見られなかった現象だ。
実際、日本エレキテル連合が世間で取りざたされるようになったのは2014年の中盤だが、業界内やライブシーンではその前からブレイクの兆候はあった。ライブでの動員数は順調に伸びていたし、2013年の時点でもネクストブレイク芸人の1組として専門家の間では話題に上っていた。2013年10月には、朱美ちゃんネタを含むDVD『シリアル電気』(コンテンツリーグ)もリリースしていて、ネタの面白さと独特の世界観には定評があった。
いわば、お笑い業界の内部から見れば、日本エレキテル連合はこれまでの一発屋芸人の枠には収まらない存在なのである。そもそも時代が違う。売れるまでの過程も違う。そして芸風やネタのスタイルも違う。
今は、世間でも朱美ちゃんと細貝さんしか求められていないから、彼女たちもそれに応えているだけ。次はどういうキャラクターを作ればいいんだろう、どういうギャグを考えればいいんだろう……などと悩んでいるような感じではない。そもそもそういうタイプの芸人ではないのだ。
一発屋になりたくてなる芸人はいないし、一発屋にさせたくてそうする事務所もない。過去のモデルケースが豊富にあり、それが多くの人に知れ渡っている時代にたまたまひと山当ててしまったことで、日本エレキテル連合は「一発屋予備軍」という汚名を着せられてしまうことになった。
だが、心配はない。過去に出てきた人たちと日本エレキテル連合は、たどっているコースが異なる。当然、着地するときの状況も今までとは違うものになるだろう。世間の人たちには、あまり色眼鏡で見ないで、彼女たちの芸そのものを素直に味わってもらいたいものだ。
- ラリー遠田

- 東京大学文学部卒業。編集・ライター、お笑い評論家として多方面で活動。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務める。主な著書に『バカだと思われないための文章術』(学研)、『この芸人を見よ!1・2』(サイゾー)、『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)がある