自衛官が格安で泊まれる”現代の軍人会館”とは?

デイリーニュースオンライン

市ヶ谷の防衛省からわずか3分の距離にある
市ヶ谷の防衛省からわずか3分の距離にある

 現役自衛官にとっての“帝国ホテル”が「グランドヒル市ヶ谷」だ。このホテルは防衛省のすぐ横という立地から、平日には制服姿の自衛官がホテル施設を利用する姿が度々みられる。そんな現代の“軍人会館”と呼ばれる「グランドヒル市ヶ谷」に泊まってみた。

「防衛省・自衛隊のOBの方でしょうか? OBの方であればそれを証明するものをお持ち頂ければOB料金で対応させて頂きます」

 宿泊予約の申し込みのため電話を入れると、さっそくフロントの係に人からこう告げられた。ホテルはシングル利用で通常料金が1泊1万1320円だが、防衛省・OBはそれが7360円になるのだ。超都心にありながら、そんな格安料金で泊れてしまう。

 ちなみにこのOBとは、本来は自衛隊や防衛省を定年退職した人、または防衛省・自衛隊を25年以上勤め上げた人のことを指す。だが防衛省・自衛隊OB何人かに聞くと、「たとえ1年しか自衛隊に在籍していなくても口頭で退職年月日と所属部隊を申告すればOB料金での宿泊が可能」という。防衛大を任官拒否した者、自衛隊に3日しか在籍しなかった者で、このOB枠を悪用して東京宿泊の拠点にしている人間もいるという話も耳にする。

自衛官はこのホテルで結婚式を挙げるのが夢

 ホテル内を歩いていると、確かにホテルロビーには空将補が制服姿で新聞を広げていたり、陸将が制服姿でコーヒーを啜っている。結婚式場に向かうカップルの男性は、1等海尉の制服姿だ。やはり一般のホテルとはどこか違う。

「自衛官にとって、この“グランドヒル市ヶ谷”は靖国神社に匹敵するほどの特別な存在です。ここで結婚式を挙げるのは多くの現役自衛官にとっては夢です」(グランドヒル市ヶ谷で挙式をした3等海佐)

 1964年(昭和39年)に創業したグランドヒル市ヶ谷は、旧陸軍士官学校跡地に建てられた。その立地条件もあって防衛省共済組合との関係が深く、防衛省・自衛隊関係者からの利用を格安で受け入れてきた。平日のレストラン利用者や夜の宴席の利用も「○○1等陸佐を囲む夕べ」など自衛官の利用が目立つ。

 防衛省関係者とグランドヒル市ヶ谷関係者によると、「防衛省が出資したり、補助金を出したりという関係にはない。ただし防衛省本省と近い立地にあることから創業以来、互いに関係を保っていることは確か」と、軍が創業に関与したといわれる旧軍人会館(九段会館)との違いを詳らかに語る。

戦後の自衛官は九段会館よりグランドヒル市ヶ谷

 2011年(平成23年)、取り壊されたかつての九段会館(旧軍人会館)もまた旧軍関係者や防衛省・自衛隊関係者の間では人気があった。しかし2000年(平成12年)に防衛省が六本木から市ヶ谷に移転したことにより、「本省まで歩いて3分」という立地から防衛省・自衛隊関係者のこのホテルへの人気は不動のものとなる。

「九段会館にも宿泊したこともありますが、あそこは2・26事件の戒厳司令部が置かれるなど歴史を感じる建物。宿泊時、2・26で処刑された青年将校の霊が出てくるなどの話も聞いた。グランドヒル市ヶ谷は戦後の自衛隊からの関わり。今の自衛官なら上は将官、下は2等兵まで、やはり安心できるのはグランドヒル市ヶ谷ではないでしょうか」(前出の3等海佐)

 制服姿の自衛官が多いということを除けば、何ら普通のホテルと違いはない。宿泊前、「朝6時になると起床ラッパで起こされる」との噂も聞いたがそんなことはなかった。だが、筆者が宿泊中、酔った制服姿の見知らぬ年配男性から宿泊中の部屋をノックされ、「おい! 田中(仮名)1尉、飲みに行くぞ!!」と声がけされたのには、やはり防衛省・自衛隊と縁が深いホテルならではだ(笑)。

 また室内の清掃は一般的なホテル同様、基本午前中に行われるが、筆者が午後の清掃を申し出ると「昼12時までの申告をお願いします」とピシャリ。このあたりがいかにも自衛隊らしい。自衛隊ファンにとっては居心地のいい空間であることは確かである。

(取材・文/中田剛)

「自衛官が格安で泊まれる”現代の軍人会館”とは?」のページです。デイリーニュースオンラインは、自衛隊やってみたカルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧