製作費100億円のPVはバンダイゲームのパクリ…中国空軍は日本の敵ではない!
こんにちは。中国人漫画家の孫向文です。2014年8月、人民解放軍の空軍のプロモーション動画が、youkuをはじめとする中国のネット上で公開されました。Youtubeにもアップされていましたので、よろしければご覧ください。
どうでしょうか? まるでハリウッド映画みたいで、かっこいい動画ですよね。5億元もの予算がかかっているとも言われているこの映像ですが、実は、たくさんの突っ込みどころがあります。
一つ目。それは動画の冒頭部分で漢族を含むたくさんの少数民族が寄り集まって遊んでいる光景が映し出されています。そして、戦闘機が飛び立つと、子どもたちが一斉にその様子を見るために駆け出していくのですが、中国では、こんなに少数民族が一同に会すことなんてありません。僕自身は、漢族なんですけど、チベット人やウイグル人とも遊んだことなんてありません。
このPVは、最終的に漢族の子どもが人民解放軍の一員となり、56の少数民族を含む中国全土の国民を守るストーリーになっています。
ですが現在、ウイグル地区に人民解放軍の戦車が入って、反乱分子を殺戮しまくっているのはご存知の通り。目下、香港デモにおいても、人民解放軍のヘリコプターが威圧を繰り返しています。
PVを見た人の中には、次のような感想をネットに書きこんだ者もいました。
「人民解放軍の戦闘機が飛び立ったのを見たとき、てっきり原っぱで遊んでいる少数民族を撃ち殺すのかと思った」
確かにその方が今の人民解放軍の実情にはぴったりの内容ですよね(笑)。
バンダイナムコゲームスの映像が使われている!
さて、もうひとつ、この映像にはいかにも中国らしい重大な突っ込みどころがあります。
中国の戦闘機が、敵対する戦闘機と空中でデットヒートを繰り広げながら撃ち落とすシーンがあります。いわゆるドッグファイトと呼ばれている戦闘シーンですが、迫真の映像ですよね。でも、これに対して、ネットユーザーから疑問の声が上がったのです。
「あれ、日本のゲームのCGじゃないか?」
まさか……と思いました。でも、その「まさか」だったのです。この部分は、日本のバンダイナムコゲームスの3Dゲーム「エースコンバット アサルト・ホライゾン」の動画でした。
人民解放軍の威信をかけたPVですよ。5億元もの予算がかかっているPVですよ。なのになぜ、敵国である日本の映像をパクッているのでしょう? もはや意味不明です。
では、最後にネットユーザーの感想を引用しておきましょう。
「中国空軍は世界一安全だ! なぜなら、彼らはPV動画を作るためだけに飛んでいて、普段はろくに空を飛ばないからだ!」
そうです。戦闘機を飛ばすのはお金がかかるので、人民解放軍の空軍の生涯飛行時間は米軍の10分の1以下と言われています。しかも、その数少ない活動であるPVすらもパクリだというのだから、いったい何のために存在しているのやらという感じですね。トホホ……。
まあ、多額の制作費を中抜きして手抜き映像を作る辺りは、いかにも中国らしいとも言えるでしょう。
著者プロフィール
漫画家
孫向文
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)
(構成/杉沢樹)