中年汁男優を描いた映画『おやじ男優Z』はなぜ高評価なのか (5/6ページ)

東京ブレイキングニュース

唯一それは有り得ないだろうと思ったのは「業界のトップ女優が中年の汁男優が共同生活するボロ屋に逃げ込んで来る」という設定だけである。 それがこの映画の "たったひとつの優しいウソ" だと言えよう。

[華のないオッサンだらけの広報活動 = 終わらないエピローグ]

 主演の坂ノ上朝美がいない以上、この映画の広報活動ができる人間は池島監督や俳優達くらいしかいない。普通は映画というと主演のキレイどころがあちこち回るものだが、この映画に関してはその手法が不可能なので、40~60代のむさ苦しいオッサン連中が中心となって老体にムチを打って駆けずり回っている。例えばなかみつ氏などは、豪雪の夕張で汁男優の正装(白ブリーフ一枚)でZポーズを決めるパフォーマンスを繰り返し、1人でも多く集客しようと身体を張った。そうした滑稽かつ哀愁漂う光景は、まるでゆりあを失ったおやじ汁男優が必死で足掻いているかのようで、映画のエピローグに見えてしまう。様々な要素が現実とリンクし過ぎてしまったが故に、終わらない映画になってしまったのだ。

 池島監督は坂ノ上朝美についてこう語る。

「彼女の置き土産に応える意味でもさ、我々はこの映画を成功させないといけない。この映画の成功を田舎のどこかにいるであろう彼女が知ってくれたら、それが坂ノ上朝美への最高のはなむけになると思うんだ」

 西成のオッサンの遺言から始まったかのような『おやじ男優Z』は、現実世界で奇跡と人情ドラマを何層にも重ねながら膨れ上がっている現在進行形のプロジェクトだ。この映画はファンタジーを盛り込んだ人情もののように見せかけて、実はドキュメンタリーよりも深く現実を描いている。シナリオの中心になっているのは「絶望のどん底にいる中年男の再生物語」ではあるが、全体的にサラっと見られる軽妙なタッチで描かれており、笑いの要素も強い。

 だが、同時にこの映画に関わった大勢の人々の情念を感じる事ができ、他にはない独特の空気感を醸し出している。 固すぎず、重すぎず、娯楽として消化できるバランスで、されど見終わった後にじんわりと何かが残る。 それに惹かれてついつい二度三度と劇場に足を運んでしまう。

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