【プロ野球】現役引退した選手がコーチになれるかどうかの境界線

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花形職業No.1だが現役でいられる期間は短い。引退後の進路はどうなる?
花形職業No.1だが現役でいられる期間は短い。引退後の進路はどうなる?

 現役引退後のセカンドキャリアを支援する——プロ野球選手会が転職情報サイト「イーキャリア」で引退選手に向けた求人情報の運用を始めた。毎年入ってくる新人と同じ数の選手がクビ宣告される過酷な世界。戦力外通告を受けた選手の第二の人生、その事情を取材してみた。

引退後に球界に残れるのは「処世術」のある選手だけ

「球界全体で『帰りのことは心配するな』と言える仕組み作りが必要」とした選手会の言葉通り、これまで選手のセカンドキャリアをサポートするシステムはほとんどなかった。バッティング投手、ブルペン捕手、スコアラー、マネージャー、広報、スカウトなど球団職員としての再雇用もあるが、引退選手全員を賄えるわけではなく「性格や人格がポイント」だと某球団関係者が続けてくれた。

「様々な外部の人間と接する広報は人当りの良さが必要だし、同じ作業を延々と続けるバッティング投手やブルペン捕手も、根気のある人じゃなければ無理。新幹線や飛行機の座席の手配もやる球団マネージャーの場合、一軍選手の相性を見抜き、仲の悪い選手を隣同士にしないなどの配慮が必要」という。

 球界を去る場合は畑違いの仕事に就くことになる。代表的なのが焼肉店やスナックなどの飲食業。知名度で客を集める形だ。

「最初は“名前”で何とかなるけど、お付き合いできてくれるのは文字通り最初だけ。味やサービスを心がけないと長続きしない」と、自ら店を出して失敗した元選手は語る。

「お客さんに『コーチとかできないの?』と聞かれるたびに、球界のウラ事情を話してあげたよ。“おべんちゃら”が言える人がコーチになれるんだ。もちろん指導力を認められた人もいるけど、中には監督の家の庭掃除をして10年以上もコーチを務めた人もいた。そうした処世術がなければ球界には残れない」という。

プロ野球界を出た選手の「第二の人生」は多種多様

 また、サラリーマンとして再出発する選手も少なくない。多くは「元選手」の肩書を使っての営業職だが、こちらも長続きするケースは少ないという。

「会社は名前に期待するけど、飲食店と同じで、その世界に興味をもたないと勤まらない」(前出・元選手)。現役時代の貯金を資金として会社を興すケースもあるが、成功例は数少ないという。

 そんな中、意外な成功例が保険業務だ。「プロ野球を辞めたとはいえ、地元では英雄視されているよね。保険の勉強さえできれば、人が人を紹介してくれる」。こちらは地方出身者に有利な仕事だという。その他、地元に戻って漁業や農業に従事したり、現役時代に培った麻雀の腕を活かして「麻雀教室」の講師を務める例もあるそうだ。

 プロアマの雪解けにより元プロ野球選手の指導が解禁され、高校野球の指導者となる選手は増えている。大越基氏(元ダイエー、現早鞆高校)のように甲子園出場を果たす指導者も増えることだろう。

「有名選手の場合、高額な報酬が必要ですが、そうすると短期間で結果を出さねばなりません。有望な中学生の獲得も重要なので、すぐに結果は出せません。理想は母校での指導ですが、野球部が危機に見舞われているPL学園出身者など、肩身の狭い思いをしながら他校のコーチをしています」(高校野球関係者)

 また、引退後一度もユニフォームに袖を通さない大物選手も珍しくないが、「球団の言うことをきいてくれないから、頼まないのではなく頼めないんだ」とも。そうした大物の場合、「現役時の貯金」を切り崩していくことになるが、「中には投資話をもちかけられ無一文になった選手もいます。現役時代の栄光がウソのような悲惨な生活をしている大物も少なくありません」(野球ライター)。野球界しか知らない選手が陥りやすいケースである。

意外と成功例が少ない「芸能界」への転身

 昔は定番だった解説者も、地上波での野球放送が減ったことで「狭き門」となっている。手弁当でキャンプを取材しながら仕事を増やした金村義明氏(元近鉄)のような例は稀である。

「タレント性があれば芸能界で活躍できるけど、成功例は板東英二氏と江本孟紀氏ぐらいだよね。一時期はテレビに顔を出せても、タレント性がなければすぐに消える。まあ、どんな仕事を選ぶにしろ、元選手というプライドと肩書きを捨てねばならないよ」とは前出の元選手。野球に人生を懸けた選手にとって「野球を忘れる」のは、想像以上に大変なようだ。

(取材・文/後藤豊)

Photo by SHIKI via flickr

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