日本エレキテル連合が起こした奇跡と勝負の年|ラリー遠田コラム
2014年は、多くの若手芸人にとってとてつもなく厳しい年となった。なぜなら、お笑いネタ番組が激減し、若手が世に出るための機会がほとんどなくなってしまったからだ。
3月23日、『オンバト+』(NHK)が終了した。その結果、実に十数年ぶりに、全国ネットの地上波テレビでレギュラー放送のお笑いネタ番組がゼロになってしまった。漫才、コント、ピン芸といった若手芸人のお笑いネタがまとめて見られる場所はもはや地上波には存在しない。かろうじて、10月15日にはフジテレビの深夜で『オサレもん』(フジテレビ)というネタ番組が始まった。
この「お笑いネタ番組ゼロ時代」では、無名の若手芸人が売れるための道のりは限りなく険しくなっている。いくら面白くても、センスがあっても、見た目が良くても、それだけではなかなかのし上がることはできない。『R-1』『キングオブコント』『THE MANZAI』といった賞レース番組はあるが、たとえそこに出ても、優勝しても、そのまま安定した地位を築けるとは限らないのだ。
そんな逆風の中で、日本エレキテル連合がすさまじい勢いで人気を獲得していったのは、まさに奇跡のような出来事だった。コントの中で使われていた「ダメよ〜、ダメダメ」というフレーズが独り歩きして世間に浸透。最終的には新語・流行語大賞まで獲得してしまった。
過去に例のない売れ方でジワジワとブレイク
日本エレキテル連合の売れ方には、これまでの他のブレイク芸人の売れ方とは違う1つの特徴がある。それは、これといった特定のきっかけがない、ということだ。
一般に、「売れた」「ブレイクした」などと言われる芸人のほとんどは、何らかの番組出演などがきっかけとなって、そこから一気に注目を集めるものだ。『THE MANZAI』などの賞レース番組で活躍して売れる、というのは一番分かりやすいケースだろう。それ以外にも、『エンタの神様』『爆笑レッドカーペット』などのネタ番組をきっかけにしてチャンスをものにした芸人も多い。
だが、日本エレキテル連合には、はっきりしたブレイクのきっかけとなる番組がなかった。もちろん、いくつかの番組に出てはいたのだが、どれか1つが大きく影響したという感じはしない。彼女たちは、本当にじわじわと、地道に、着実に、見る人の心をつかんでいった。そして、あるときから急に、その勢いが加速していったのだ。
ライブやテレビを通して、彼女たちが上り詰めていく過程を目の当たりにしてきた私から見ても、まさにそういう感じがする。実は、2013年の後半あたりから、ライブシーンでは彼女たちの人気がじわじわと上がっていた。彼女たちの出演するライブのチケットがやたらと売れる。熱心なファンが増えている。そういう噂が飛び交っていた。
そして、2014年の前半には、彼女たち自身も少しずつテレビに出るようになっていたし、有名なタレントが彼女たちのファンであることを公言したりする現象が起き始めた。この時期に世間の人もその面白さに気付き始めた。そして、2014年後半に入ってようやく、雪崩を打ったような大ブームが起こったのだ。
『エンタの神様』などのネタ番組は、芸人が一気に知名度を上げるための加速装置となることがある。ただ、日本エレキテル連合は、そういった特定の加速装置を利用せずに、自らの力だけで今年一番の売れっ子芸人になった。これは文句なしの快挙だ。
日本エレキテル連合のコントでは、作り手の原初的な衝動がかなり生々しい形で表現されている。それが世間に強烈なインパクトを与えた。「お笑いネタ番組ゼロ時代」だからこそ、彼女たちのような芸人にスポットが当たりやすくなっているのかもしれない。人々の目がお笑いに向いていない時代では、まずは「面白い」とか「楽しい」ではなく、「何これ!?」と思われなくてはいけない。驚きと衝撃を与えることで初めて、ネタの中身に注目してもらうことができる。
そういう意味では、彼女たちの勝負はこれから。2015年のさらなる飛躍に期待が高まるのだ。