「格安古民家で、憧れの移住ライフ!」...の「意外と大きな出費」

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和風建築。写真はイメージです(TANAKA Juuyohさん撮影、Flickrより)
和風建築。写真はイメージです(TANAKA Juuyohさん撮影、Flickrより)

2015年正月の連載企画「地方移住」。第1回で「田舎暮らしの生活費」、第2回で「就農と地域おこし協力隊」、第3回で「一般企業への就職や起業、フリーランス」についてそれぞれ解説した。

移住先と仕事が決まったら残るは「家」。一般人にとって人生最大の買い物だろう。購入するにしても借りるにしても、田舎物件は都会のマンションやアパートのように気軽に移り住むというわけにはいかない。

いい土地を見つけて「ここに理想の家を建てたい」と思っても、未造成地だと水道や排水、電気、ガスといったライフラインを整備しなければならず、初期費用は1000万円を超える。
かつて人の住んでいた中古物件なら最低限の問題はクリアしているものだ。潤沢な予算のある人以外は、中古物件を狙うのがいいだろう。

和風建築。写真はイメージです(TANAKA Juuyohさん撮影、Flickrより)

購入~田舎物件は今が「底値」

物件によってピンキリなのはいうまでもないが、購入するとなると最低いくら用意がいるだろうか。またどの条件を下げれば安めの物件が見つかるか。
田舎暮らしライターの山本一典さんは次のようにアドバイスする。

田舎物件はここ10年でほぼ底値に達しており、築浅の物件を除けば1000万円以下、地方によっては500万円以下でも取得は可能です。木造建築物は税制上、25年で建物の価値がゼロに近づきますので、築25年以上だとほぼ土地代のみの価格と考えられます。
地方都市や高級別荘地は地価が高めですが、過疎地に近づくほど安くなります。その差は大きく、敷地は数十坪から1000坪以上までの開きがあります。
安い物件がほしい人は過疎地が狙い目ですが、雪や寒さに耐えられるか、その適正も考えるべきです。

大地震の不安が増している今、耐震性も重要なチェックポイントだ。現行の耐震基準は1981年6月1日に定められたが、それ以前に建築確認を受けた建物は「既存不適格建築物」の可能性が高い。購入前には耐震診断を必ず受けておきたい。

下見は慎重に。アポなし訪問は非礼と心得よ

一軒家の物件に強いのは地元の不動産業者だが、住む場所が決まっていない、どういった物件が出回っているのか掴みたいという移住希望者は、行政の空き家バンクにアクセスしてみよう。
JOINニッポン移住・交流ナビの「空き家バンク・住まい情報」には、自治体発の空き家・住まい情報が全国から集まっている。

「全国で空き家が増えているという割には物件数が少ない」と思った人もいるだろう。それもそのはず、田舎の不動産物件は市場に出にくく、日本の空き家で登録されているのは数%もない。

掲載物件の中には住所が特定できそうなものも多く含まれている。それでもアポなし下見はやめるべきだ。警戒心の強い人もいるし、うっかり私有地に入ったらトラブルの元になりかねない。

下見は気象条件の悪いときに実行したい。そのほうが悪いところがはっきり見えるからだ。空き家になって2年経過している物件は、雨漏りやシロアリ、柱の腐食など細かい所までチェックする。


築年数約40年の建売住宅。空き家になって久しく、傷みが激しい(編集部撮影) 資金がないなら「公営住宅」がベター

誰も住んでいない家は湿気ですぐに傷み出す。住んでくれるのなら格安家賃でもありがたいというのが家主の本音だが、田舎の賃貸借契約はすぐに成立しない。狭いコミュニティの中で暮らしている田舎の人は、借主が信頼に足る人物かひどく気にするからだ。

予算のない人におすすめなのは自治体が運営する公営住宅だ。「定住者促進住宅」なら月の家賃が2~5万円程度で済み、リフォーム代もかからないのも魅力。集合住宅なら同じ移住者が身近にいる可能性が高く、しかも建物の構造上光熱費は割安になる。収入の少ない世帯は「市町村営住宅」という手もある。

北海道幌延町の公営住宅(Asakoさん撮影、Flickrより)

公営住宅(@幌延町)

もっとも公営住宅にいつまでも住める保証はない。「いつかは一軒家に」という人も大勢いるだろう。
まずは移住先で地域の人と仲良くなり、条件に合った空き物件の情報に接したら、すかさず交渉に入る。相手に気に入ってもらえれば、「年間1万円」「一升瓶分の酒をもらえれば」と破格の条件を引き出せることもある。

リフォーム~トイレの水洗化だけで50万円

現況渡しの中古物件で避けられないのがリフォームだ。見た目は何の問題がなさそうでも、住んでいるうちに欠点が露わになってくることは珍しくない。業者に頼む場合、100万円を超えるなら見積りをとりたい。

「かなり状態のいい建物でも50万円以上かかるのが普通です。平均的には300万円前後、大規模リフォームになると1000万円を超えるケースも珍しくありません。高額になるのは基礎や屋根に手を加える場合。ただし、雨漏りが発生しているような建物は構造体への悪影響が考えられるので、避けた方が無難です。
傷みやすいのは床下と水回りですが、セルフリフォームでコストダウンを図っている移住者も少なくありません。トイレの水洗化は浄化槽の助成を受けても50万円前後かかります」(山本一典さん)

リフォーム工事中の住宅。写真はイメージです(yoppyさん撮影、Flickrより)

意識の高いリフォーム進捗です。#py_bg2014

空き家の増加は自治体にとって頭の痛い問題で、その数を減らすべくリフォーム費用の支援制度を設ける自治体は増えている。
手厚い補助をしている自治体の1つが静岡市だ。「静岡市中山間地域空き家情報バンク」を通して借りた物件をリフォームした場合、最大200万円(改修経費の10分の9以内)が補助される。

引っ越し~業者によって料金に大差なし

引越し運賃の基本料金は、国が定めた運賃表をベースにして、上下1割の範囲で業者が値段設定する。言い換えるとビックリするほどの料金差にはならないということだ。東京から岡山を例にとると――。

単身者で荷物が少ない/作業員1名、軽トラックの場合は3~6万円単身者で荷物が多い/作業員2名、2トントラックの場合は6.5~12万円3~4人家族/作業員2~3名、4トントラックの場合は13~24万円田舎の必需品~筆頭はやっぱり「車」

現代人の生活にネットがすっかり定着したのと同じように、田舎暮らしをする人にとって車は不可欠。このほか暖房に薪ストーブを選ぶ人にはチェーンソー、地域の共有地手入れなど使う草刈機、家庭菜園をするなら農具も必要になってくる。

「田舎暮らしの必需品は何といっても車です。中古車なら20万円くらいから購入できますが、そのほかに重量税と自賠責保険料、自動車税、任意保険料などが必要です。2年間で最低でもトータル40~50万円の出費は覚悟すべきです。
薪ストーブを使う人はチェーンソーが必需品です。数万円の安物もありますが、性能を考えると10万円以上が無難です。草刈り機は広い敷地で使えるエンジン式が3~6万円前後。100坪以上の畑を耕す人は歩行式の耕耘機があると便利で、定価で6~20万円くらいです。」(山本一典さん) ダイハツ・ミライース。写真はイメージです(TTTNISさん撮影、Wikimedia Commonsより)
ダイハツ・ミライース。写真はイメージです(TTTNISさん撮影、Wikimedia Commonsより) 草刈機で草刈りをする男性。写真はイメージです(松岡明芳さん撮影、Wikimedia Commonsより)
草刈機で草刈りをする男性。写真はイメージです(松岡明芳さん撮影、Wikimedia Commonsより)

最後に。田舎暮らしに憧れてはいるが地域の共同作業が無理という人に対し、山本さんは別荘地を勧める。

田舎で暮らすことは、基本的には地域社会に入っていくことを意味します。そこでは葬式の手伝いや用水路の清掃といった共同作業があり、移住者にも同じことが求められます。農村集落内の家を選ぶ人は、それが自分にできるかどうかを自問自答してください。とくに自治体の空き家バンクを利用する人は、それが最低条件と考えるべきです。
私には無理という人は、迷わず別荘分譲地の家を選んでください。こちらは民間の不動産業者から買うのが普通で、定住だけでなく別荘として利用することも可能です。

お正月特別企画として全4回でお送りした「地方移住」企画。取材から見えてきたのは、移住のためには十分な準備と計画、そして何より、当人の強いやる気が必要だということが見えてきた。2015年、編集部では引き続き、「地方の時代」の未来を探っていきたい。

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