儲かるフードビジネスの公式は、「小さい」×「高い」
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その発想はなかった
飲食業は、消費者がその場で消費するため、「インターネットショップ」との直接対決がないという強いポテンシャルを持っています。あのAmazon.comですらも飲食市場に参入する際は、飲食チェーンを買収して乗り込むほか手段はありません。 しかし、強いポテンシャルを持つ飲食ビジネスとはいえ、そう簡単にうまくはいきません。うまくいく店もあれば、失敗する店もあるのです。では、どのように戦い、どのように勝ち残ればいいのでしょうか。 そこで今回は4つの儲かるフードビジネスの公式についてご紹介したいと思います。
既存の売上が厳しい
キャンペーンやWEBサイトの見直しなどをしてみたが一向に成果がでない。一時的には売上が上がるが、すぐに元に戻ってしまう。
もっと継続的に売上が上がるようにならないだろうか・・・・
そんなときは、新しい「ビジネスモデル」を考えることです。
単なる「販促」では、商品やサービスが変わらないわけですから、消費者が飽きるのは当然。しばらくすれば売上がもとに戻るのも明らかです。
「ビジネスモデル」を変える必要性は企業規模とは関係ありません。
どんな大企業でも常に変革を進めています。
なぜなら、どんな優れたビジネスにも「寿命」があるからです。
世界的に有名なフォーチュン500に載る企業ですら、平均18年で消えると言われています。身近な事例であれば、スマートフォン。iPhoneが出て、グーグルがandroidで追随してわずか3年でスマホがガラケーを駆逐したことは誰もが知るところです。
新しいビジネスで大切なこととは!?
ただし、ここで大切なことがあります。
新しいビジネスを生み出すときに、「0から」考えてはいけない、ということです。
十分にお金も人も余っている企業であれば話は別ですが、限られた資本であるなら、他社や他業種の事例をモチーフに組み立てるのが正解です。
実際、成功している企業や短期間で上場を果たしているベンチャー企業のほとんどが“他社の模倣”です。
ロボットやバイオテクノロジーなど革新的なイノベーションで名を馳せるケースもありますが、そんなのはごくごく稀です。ジャンボ宝くじの1等を当てるほうがよっぽど簡単です。
(なぜなら、宝くじは「当たりくじ」がちゃんと売られているからです。)
とてつもない時間とコスト、そしていつ完成するか見えないプレッシャーに耐えるメンタル的要素も必要で、とても中小企業には合いません。
すでに本業として持っているリソース(資源)を最大限有効活用しましょう。
たとえば、和食の惣菜を展開している「えん」。
新しいモデルとして「だし茶漬け えん」を展開しています。2014年3月時点で2店舗だったのが、2014年12月現在、首都圏を中心に17店舗まで拡大しており、ますます好調の様子です。
急に店舗を拡大すると危ないんじゃないの?
そう思われた方は、一時期有名になった「東京チカラめし」をイメージされたのかもしれませんね。
先に申し上げておくと、「だし茶漬け えん」は、三光フーズが手掛けた「東京チカラめし」とは全く構造が異なります。
一言で言えば、「えん」は「商品」だけで勝負をしていない、のです。
「東京チカラめし」は、「焼き牛丼」だけで牛丼業界に乗り込んだことが最大の敗因です。
出始めの最初の半年くらいは消費者もマスコミも押してくれます。実際多くの経済ニュースで「これは牛丼革命だ!これからは煮るではなく「焼く牛丼」だ!」と取り上げられました。しかし、明らかに「売れる」とわかると業界大手の「すき家」や「吉野家」が放っておきませんでした。畳み掛けるように、そして徹底的に安く「焼き牛丼」をあっという間に投入してきました。
こうなると消費者の考えはどうなるでしょう?
「焼き牛丼=東京チカラめし」が、
「あー腹減った。時間ないし吉牛に行こうっと。
へー、焼き牛丼ってのがあるんだ?おもしろそう。安いし、これにしよ!」
以上です。
「焼き牛丼」の需要が消えた今、「すき家」も「吉野家」でも、メニューで焼き牛丼は見かけません。
商品だけで安易に勝負を賭けるとこうなってしまうという、とても悲しい事例です。
※三光フーズはすでに一部店舗を除き「東京チカラめし」事業を売却済です。
事業損失は20億以上に及ぶとか。
「暗い話」はここまでにして、「素晴らしく、ぜひ参考にしたい話」をしましょう。
「えん」と「東京チカラめし」の最大の違いは何か?
それは「既存リソース(資源)」を使っている点です。
東京チカラめしの場合、「東方見聞録」や「金の蔵jr.」などの居酒屋を本業としていた三光フーズにとって「焼き牛丼」には何の共通点もありません。「飲食」というカテゴリー以外。
一方「えん」の場合、本業は「惣菜・お弁当」です。お茶漬けに使える材料はすでに本業で持っています。お肉屋さんが「焼肉屋」をやっているのと同じ構造です。つまり、材料を共同で「安く」仕入れることができるのです。
これだけではありません。
まずは、お店のコンセプト。「和食」×「ファーストフード」としています。このコンセプトを表すのが日本人になじみ深い「お茶漬け」。
駅ナカでよく見かけ、若い女性に人気がある「スープストック東京」は洋風。それを反対にして「和風」に。いいパクリ方ですね。
次はお店の規模。お店は客数15人程度で満席になってしまうような「狭いスペース」。4人掛けのテーブルすらありません。せいぜい2人掛けまで。
店舗規模が小さいと、どんなテナントにも入りやすく、また賃料を抑えることができます。
実際、「お茶漬け えん」は、ラゾーナ川崎や有楽町イトシアなど近年できたかなりの人通りがある駅前・駅直結の場所を構えています。
お店の中はどうでしょうか?
お店に入いるとすぐ「食券販売機」が目に入ります。メニューは10種類程度。鯛茶漬けや鮪のお茶漬け。日本人なら、週に何度でも食べられるメニューが並んでいます。
食券を購入し、席につくとすぐに店員さんがお水を運んできて、「食券」を確認して奥に下がります。
そして、なんとわずか3分ほどで、トレイに載ったお茶漬けセットが運ばれてきます!
飲食の世界では「7分」。ITの世界なら「7秒」。
これは人間がガマンできる時間だと言われています。※パソコンの場合、何かを押して反応するまでの時間のことを指しています。
レストランなどで、「おっそいなー。注文通っているのかなぁ?」とイライラするのは「7分」を超えているからです。(まぁ、お腹が減っているのもありますが。)
このような人間心理をクリアするために、わずか3分ほどで注文したものが出てくる仕掛けは、「店内で調理をしていない」から、です。
いわゆるセントラルキッチンと呼ばれ、あのサイゼリアと同じ方法です。
本部でまとめて作ったものを一斉に店舗に送っています。お店側ではほとんど調理をする必要がないように。実際、「えん」にはキッチンスペースが見受けられません。せいぜい洗い物(これもディッシュ・ウオッシャー)用の場所が確保されているくらいです。
店員さんは、食券を確認すると本部から送られてきたものを順番にトレイに盛り付けます。
白いどんぶりに、ごはん、鯛を盛り付け、お椀にお味噌汁をよそって、小鉢そしてお茶の入った「小さな土瓶」を乗せるだけ。とても簡単です。だれでもできます。
手順を「ポンチ絵」で描いたマニュアルさえあれば、スタッフは日本人である必要がなく、人件費を安く済ませることができます。アルバイトの教育にかかる費用も手間もグンと減ります。(実際、サイゼリアはこのやり方+安さで成功しているといっても過言ではありません)
①食券購入(レジ・精算の手間が不要)→②盛り付けだけ。すぐに出せる→③お茶漬けだから食べるのが早い→④次のお客さんがすぐに入れる
このようにお客さんの回転を徹底的に上げ、かつ人件費を抑えるオペレーションをとりながらも、肝心な現在の「トレンド」を見逃していません。
「高」原価商品のみを提供!
「だし茶漬け えん」で提供される10種類ほどのメニューは、900円前後します。
(1,000円を超えるとさすがにお客さんがドン引きします。たかがお茶漬けに1,000円はねーだろ!となっちゃいます。)
ファースフードにしてはちょっと高いなと感じる価格帯ですが、ここにも「パクリ」が隠れています。それは同じファーストフードのモスバーガーやフレッシュネス・バーガーです。スープストック東京もそうです。
席には、どんな食材を使っているのかが書かれたPOPが置かれています。
食材は、国産のものを使用しているとアピール。お客さんは当然高いんだろうなと感じます。
待っている間、当然お客さんはそれを見るでしょう。なるほど、こんないい食材を使っているのか。なら、900円でも仕方がないな、と。
で、実際食べてみると、本当においしい。頼むとすぐに出てくる。お昼時に並んでもまぁいいかと考えてくれるわけです。
いままでの飲食と言えば、いかに原価を下げるかでしたが、「俺のイタリアン」の出現以降、明らかに原価を十分に投じたものであれば、多少値段がしても消費者のOKが出るようになりました。
むしろ、何の特徴もなく「ただ安い」だけでは振り向いてもらえなくなっています。
今、コンビニコーヒーの躍進で、一番厳しい立場に立たされているのが「ドトール」だと言われているのも、納得できますね。
原価を上げるとともに、高い販売額を付ける。
そしてローコストオペレーションを組む。
結果、お客さんがどんどん入れ替わりながら、一人あたりの儲けも高い。こんな構造になっているからこそ、順調にお店を広げていくことができるわけです。
「小(少)」×「高」
儲かる飲食ビジネスの公式はこの一言に尽きるでしょう。
「小」さいスペース、「少」ないメニュー、「少」ないオペレーション、
そして、「高」い値段と「高」い原価です。
ファミレスのような「大量顧客」×「大量メニュー」はもう時代に合わないのかもしれません。