映画『UNBROKEN』レビュー!監督アンジー、イスラム国の人質事件への追悼コメントも

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アンジェリーナ・ジョリーの監督最新作『UNBROKEN』(日本公開未定)を紹介します。

出典: youtube

アメリカ合衆国代表オリンピック選手にして、第二次世界大戦で従軍中日本軍の捕虜になり、虐待されつつも不屈の精神で生き延びたルイス・ザンペリーニ氏の伝記映画です(原作は『Unbroken: A World War II Story of Survival, Resilience, and Redemption』Laura Hillenbrand著)。アメリカでは、NBC(アメリカ4大ネットTVのひとつ)で2014年のクリスマス公開に合わせて、アンジーと存命中だった主人公のルイス・ザンペリーニ氏(2014年7月2日に97歳で死去)のインタビューや製作過程を追いかけたトム・ブロコウ(TVジャーナリストで、元看板アンカーマン)によるドキュメンタリー特番が組まれたほか、それ以前からもニュース・ワイド・ショーでもその断片は何度も紹介されていました。

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映画の前半は、乗っていた飛行機が太平洋上に墜落して生き延びるという漂流映画という印象です。日本軍に撃ち落とされたのではなく、味方機を捜索中でのエンジン・トラブルが原因でした。ザンペリーニ(ジャック・オコーネル)と同僚は47日間もの間ゴムボートで漂流することになります。その苛酷さの中でザンペリーニのイタリア移民としての扱い、子どもの頃の生活ぶり、そして、いかにしてオリンピック選手になりベルリン大会に出場したか、というエピソードが挿入されます。1936年のベルリン大会で走った5000mの決勝では8位でしたがファイナル・ラップは驚異の56秒という記録を叩き出しました。そして、ザンペリーニは次の東京大会で走ることを楽しみにしていたのです。

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漂流中の彼らを発見したのは日本軍でした。彼らは東京捕虜収容所本所分遣所(映画の中では大森にあったことになっていますが、実際は、大船にあった横須賀海軍警備隊植木分遣隊という所だったそうです)に送られます。その収容所を仕切っていたのがワタナベ・ムツヒロ曹長(MIYAVI)でした。ワタナベはアスリートとして既に有名だったザンペリーニに特に関心を持ち、酷い暴行を繰り返しました。ザンペリーニが指示に従ったとしても容赦なく、徹底的に殴りつけました。一方で「お前とは友達になりたい」と言ってみたり、キャンディやタバコを差し出したりしたそうです。ワタナベの行動は情緒不安定でもあり、また、虐待によって性的快感を得ていたという声もあります。

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ワタナベは軍曹に昇格して直江津に転勤になり、ザンペリーニはホッとします。それもつかの間、東京大空襲などもあり捕虜たちも東京から鉄道で移動させられるのですが、着いた先は直江津の強制労働収容所だったのです。弱りきっているザンペリーニに対し、ワタナベは更に苛酷な虐待を繰り返します。象徴的なシーンとして、重い木製の梁を長時間担がせ、部下に、ザンペリーニがその梁を落としたら撃てと命令します。見方によっては、イエス・キリストが十字架を担いで町中を引き回され、ゴルゴダの丘に登っていく、それと重ね合わせたようなシーンです。そして、ザンペリーニは不屈の精神で耐えます。

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映画は終戦、捕虜たちが日本の敗戦を知るところで終わります(ワタナベは、捕虜への虐待で重要指名手配戦犯に指名されていますが、すぐに逃走し、米軍占領が終わるまで逃げおおして、結局、戦犯にはなりませんでした)。その後のザンペリーニのPTSDによる苦しみや荒れた生活、更に信仰による立ち直り、そして、全てを赦すことによって救われる、というエピソードはテロップによって紹介されます。そして、1998年の長野オリンピックで、当時81歳のザンペリーニ氏が聖火ランナーとして長野市内を走り、沿道の市民が歓迎しているフッテージが流れます。62年が経過して、彼は日本で走るということを実現したのです。

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映画の中で繰り返される日本軍による捕虜への虐待描写、それが反日的な映画と解釈されてしまったのでしょうが、実際この映画は不屈の精神を持つ男が苦境の中を生き抜き、生還する、そして、受けた残虐行為を赦すことによって自身も苦しみから救われる、という映画なのです。1998年に渡邊睦裕はCBSのニュース・ショー『60 Minutes』(日本ではピーター・バラカンさん司会で『CBSドキュメンタリー』という名前で放送されていたと思います)のインタビューに応じています。それによると、彼が行った虐待は軍の命令などではなく、あくまでも個人的な感情によるものだったそうです(来日時、ザンペローニ氏は渡邊への面会を希望しましたが、彼は決してザンペローニ氏に会おうとはしなかったそうです)。

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第二次世界対戦中の日本軍による捕虜への暴行、虐待が描かれている映画はいくつもあります。『戦場のメリークリスマス』(1980年/監督:大島渚、出演:デビッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけしほか)や、『レイルウェイ 運命の旅路』(2013年/監督:ジョナサン・デブリツキー、出演:コリン・ファース、ニコール・キッドマン、真田広之ほか)でもそういうシーンはあります。『戦場の〜』では、ジャック・セリアズ英軍少佐(デイヴィッド・ボウイ)は首だけ出して埋められ、ジワジワと殺されていきます。日本軍による虐待シーンが多いから『UNBROKEN』は日本での公開は適さないという解釈がありますが、そういうシーンは同様に見る物に苦痛を強います。『UNBROKEN』だけが特別だとは思えません。ただ、ワタナベの情緒不安定さが際立っているので、そう見えるかもしれません。

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アメリカ映画だから敵の虐待シーンを突出して描いているという人もいるかもしれませんが、アメリカも自国が行った虐待をきちんと描いています。『ゼロ・ダーク・サーティ』(2013年/監督: キャスリン・ビグロー)はいきなりCIAによるアル・カイーダ兵士への拷問で始まります。何度もエミー賞に選ばれているTVドラマ、『HOMELAND』(SHOWTIME製作)でもそういう痛々しいシーンは度々でてきますし、実際、CIAもガンタナモで拷問行為をしたことを認めています。

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MIYAVI氏がジョリーやオコンネルと一緒にTVのニュース・ショーに出演した時に、ワタナベ役を演じることで、日本でどんな扱いを受けるか、自身のキャリア(ミュージシャン)への不安はなかったかと訊かれ「恐かったし躊躇いもあったが、アンジーから共に日米間の架け橋になる意味のある何かを創り上げたいと言われた。赦す力、人間がいかに強くなれるか、それが、この映画メッセージの全てであり、この映画を通して苦しみを抱えている人たちはたくさん学ぶことができるだろうということに自信を持っている」と答えていました。問題は、事実を歪め都合の悪い部分を隠す、誤った解釈をしてしまうということではないでしょうか。

最後に、アンジェリーナ・ジョリーによるイスラム国の人質事件へのコメントを紹介します

“Too many innocent people are paying the price of the conflict in Syria and spread of extremism,” Ms. Jolie said wrapping up the first day of her two-day visit to Iraq. “I express my deepest sympathy to the family of Haruna Yukawa the Japanese hostage reportedly murdered in Syria on Saturday, and to all the families and victims of these vile and extreme acts.”

出典: rmnstars

「あまりに多くの人々がシリアでの紛争や過激主義の広がりに対して犠牲を払っています。日本人人質の湯川春菜さんの殺害に、そして、これらの極めて卑劣な行為の犠牲になった方々とそのご家族に対し、深い哀悼の意を表します。」

予告編はこちら

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アンジーとMIYAVIのインタビューなどはこちら

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