【プロ野球】キャンプ直前12球団の「コーチ力」を分析

デイリーニュースオンライン

プロ野球全球団がキャンプイン。いよいよ2015年のシーズンが始動する
プロ野球全球団がキャンプイン。いよいよ2015年のシーズンが始動する

 今週末の2月1日(日)から、プロ野球にとっての“正月”ともいうべき春季キャンプがスタートする。

 一軍監督の目に留まるべく、二軍の若手選手は必死に練習するが、一軍監督が二軍選手を見るのは休日のみで、監督は普段、コーチの報告に耳を傾けるのみ。ただ、コーチの報告がすべて正しいとは限らない。いい素材を見落としていたり、間違った方向に誘導しているケースも少なくないからだ。

 残念ながら、コーチなら誰もが高い指導能力をもっているというわけではない。選手に合わないコーチングをして、選手を潰す人も少なくないのだ。

 また、時に「お友達内閣」などと揶揄される通り、指導力より人間関係で選ばれるため、監督の顔色をうかがうコーチが実に多い。悪く言えば「ゴマすり人間」。盆暮れに付け届けをしたり、監督の家の庭掃除など小間使いのような仕事さえできる——そんな人がコーチになっているのも日本プロ野球界の実情である。

 ベストなコーチとは「野球理論が高く、人間的にも優れた人」だが、両方を兼ね備えた人物はほとんどいない。

オリックス・福良氏と楽天・米村氏の卓越した“コーチ力”

 そんな中で、現12球団において「いいコーチだ」と思える人を挙げてみよう。まずはオリックスの一軍ヘッド、福良淳一さんだ。現役時代、連続守備機会無失策の日本記録を打ち立てるなど守備は上手く、セカンドから冷静に野球を見ていた人である。

 バッターとしても通算犠打.224を残した。オリックスで1、2番を組んでいたイチローから「福良さんのようにすべての試合に必要とされる選手になりたい」と言われてもいる。

 野球に対してクレバーであり、1球ごと戦術も組み立てられるため、一軍のベンチに必要な人だ。09年に日本ハムがリーグ優勝できたのも、一軍ヘッドが福良さんだったからだ。

 二軍コーチとしても選手の長所を伸ばそうと熱心だったが、一軍ヘッドとなって2年目の昨年、オリックスは2位に躍進した。福良さんがベンチに座るオリックスは、今季も手強いだろう。

 楽天二軍野手コーチ、米村理さん(元阪急)も「選手をやる気にさせる術」に長けている。91年からずっとユニフォームを着ているのも、球界が米村さんの力量を認めているからだ。

一軍コーチは「環境づくり」、二軍コーチは「指導力」

 ご存じの通り、球界には「一軍が上」との空気がある。現役時代に実績を残した人が一軍コーチ、そうでない人が二軍コーチとなり、年俸も一軍コーチのほうが高い。

 一軍は「技術のある選手の集まり」であり、選手が野球に集中できる環境を整えられる、そんな人がコーチに適している。逆に、技術が未完成の二軍には「指導力」に長けたコーチが必要であり、高いお金を払ってでも招聘するべきだ。

 現12球団で、従来の考えを排除した組閣だと思えるのは巨人とソフトバンク。大西崇之(巨人一軍外野守備走塁コーチ)や水上善雄さん(ソフトバンク二軍監督)など、他球団出身の元選手を積極的に雇用している。

 また、コーチとは自分と同じ、あるいは似たタイプを育てることはできても、タイプの違う選手は育てにくい。バント職人はホームランバッターを指導できないし、先発完投型の投手もクローザーを育てきれない。

 同様に、左投手は左投手が、左打者は左打者が教えるべきで、投手・打撃コーチとも、少なくとも左右2人必要だが、ここ数年、一、二軍とも投手・打撃コーチを左右揃えているのは中日だけである。

ゴマすり人間の集まり? プロ野球・組閣の問題点

 ベテラン選手ともなると、キャンプでは身体に染みついた調整方法をとる。現役時代のオレは、キャンプ前半は守備練習で基礎体力を作り、後半はみっちり身体をいじめ抜いた。夜は身体を休ませていたが、1995年にロッテGMに就任した広岡達朗氏は、ベテランに夜も練習を要求してきた。

 GMの命を受けて「愛甲、素振りをしてくれ」と言ってきた某“忠臣コーチ”に反発すると、「頼むよ、これ(と言って親指を立てた)の命令だから」と言ってきた。このコーチは「球団幹部の家の庭掃除をしていた」そうだ。

 また、こんなコーチもいた。チームの状態が明らかに悪いとき、監督の采配に問題がある、というチーム内の空気を察した選手会長のオレは「監督に進言して欲しい」と某コーチに言ったところ、「言えない」と返ってきた。「選手時代、世話になった義理がある」そうだ。

「何のためのコーチですか」などと押し問答した挙句、こんなことを言ってきた。

「西村(徳文・前ロッテ監督)たちは、オレのグラスが空いたら作り直すぞ」

 だから何だ? 選手をホステスだとでも思っているのか、という言葉がのど元まで出たが、「この人に言ってもムダだ」とあきらめた。

 この件でわかる通り、引退後のユニフォームが約束されるのは「先輩に気に入られる選手」という現実があるのだ。

愛甲猛(あいこうたけし)
横浜高校のエースとして1980年夏の甲子園優勝。同年ドラフト1位でロッテオリオンズ入団。88年から92年にかけてマークした535試合連続フルイニング出場はパ・リーグ記録。96年に中日ドラゴンズ移籍、代打の切り札として99年の優勝に貢献する。オールスターゲーム出場2回。
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