漫画が人生と言い切る『人間力』さそうあきら(漫画家) (2/2ページ)
オーケストラっていう組織が、自分を抑えなきゃいけないっていうプレッシャーを凄く与えるみたいで、生真面目な人が多いんですね。漫画では、多種多様なキャラとして描き分けました。
漫画を描き始めたのは、大学生の頃でした。早稲田大学の漫画研究会に入ったんですが、今、人気漫画の『深夜食堂』を描いている安倍夜郎君がひと学年下にいました。彼は当時から絵が古いとか言われていましたが、今も同じ絵柄なんですよ。ひと回りすると、古いものも新しくなるんだなって思いましたね。
大学時代の僕は、そんなに熱心に漫画を描いていなかったのに、漫画で食べていこうと考えていましたので、就職活動はしなかったんです。今、考えると恐ろしいですが(笑)。
デビューしてからは、食えないほどではなかったですが、そんなに単行本も出ませんでしたし、出ても売れないって状況が、ずっと続いていました。長編の『神童』を描かせてもらった時、作風が変わりましたね。キャラを中心にドラマを動かしていくと、今まで恥ずかしいと思って、描かなかったようなことも描けるようになったんです。
漫画家としてデビューしてから、もう30年経ちますが、何が辛いって作業時間が長いので、描いているうちに、最初の面白さが色褪せていくんです。そして、自分の漫画にも飽きるんです。それが漫画家の宿命だと思うし、それとの戦いですね。
でも、僕には漫画しかないので、辞めようとか思ったことはありません。漫画は人生そのものです。最近は大学で若い人を教えているのですが、それもいい人生経験だなって思います。ただ正直、その時間を含め、好きな楽器を練習する暇があったら、やっぱり絵を描いていたいですね。
撮影/弦巻 勝
さそうあきら さそう・あきら
1961年2月9日、兵庫県生まれ。商社マンだった父親の仕事の関係で子どもの頃、インドで過ごす。そこで『巨人の星』と『タイガーマスク』に出会い、何度も繰り返し読んだ経験が、後の漫画家への道を開く。早稲田大学在学中にちばてつや賞を受賞。その後、『神童』で手塚治虫漫画優秀賞を受賞。同作と『マエストロ』で文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞受賞。『トトの世界』はNHKでドラマ化された。現在は、京都精華大学で漫画を教える傍ら、精力的に漫画創作活動に励む注目の漫画家。