漫画が人生と言い切る『人間力』さそうあきら(漫画家) (1/2ページ)
「漫画を描いているうちに、最初の面白さがどんどん色褪せていって、自分の漫画にも飽きるんです。それが漫画家の宿命だと思う」
今回、僕が描いた漫画『マエストロ』が映画化されました。一度は潰れたオーケストラ楽団をカリスマ指揮者が復活させるというお話です。主人公の指揮者は痩せている老人で、誰がやるのかなと、思っていたんですが、西田敏行さんと聞いて、なるほど、そうきたかと思いましたね。
西田さんの俳優としてのカリスマ性みたいなものは、僕が描いた指揮者に通じるところがあって、映像化された作品では、それが出ているなって思いました。いくつか撮影の現場にお邪魔させてもらったんですが、西田さんが、休憩時間とかにボーっとお茶飲んでいたりすると、その時は気が付かないで通りすぎちゃうような感じなんです(笑)。でも、演技に入ると、存在感がずば抜けているっていうのは肌で感じました。
僕は、音楽漫画がずっと描きたかったんです。小学校時代にピアノを習って、大学卒業後にインドネシア音楽のガムランをしばらくやっていたんです。ガムランはインドネシア語で叩くって意味で、銅鑼みたいなものや鍋を逆さにしたものを叩いて合奏するんです。そこで知り合った人たちと交流しているうちに、音楽の漫画を描きたい衝動が湧き上がっていきました。
でも、漫画で音楽を描くって、音が表現できないので、そんなもの成立するのか。どうすれば、読者に想像してもらえるのかと考えたんですが、それは読者に自分の音楽体験を当てはめてもらえばいいんだと気が付きました。それで、初めて描いた音楽漫画が『神童』だったんです。
『神童』はひとりの天才ピアニストの物語だったので、次は合奏の楽しさを描きたくて『マエストロ』を描きました。オーケストラって同じ奏者を集めても指揮者によって、まったく音が変わるんですよ。
それが不思議で指揮者と演奏者の関係ってどうなんだとか、そもそも指揮者って何者だろうかって思い、5人の指揮者を取材させて頂いたんです。それぞれタイプは違うんですが、明るい人が多かったんですね。そこから出来上がったのが、今作の主人公である下ネタ好き変人キャラの天道でした。
転じて、奏者の方は暗かったですね(笑)。