ここは“理想の村”なのか!? スペイン南部に存在する “共産主義者のユートピア” (2/2ページ)

新刊JP


 その中心人物であるゴルディーヨは、1979年にマリナレダ初の村長選挙で勝利して以来、圧倒的な支持を受けて当選を重ねてきた。尊敬する人はチェ・ゲバラ。彼が行動を起こすたびにこぞってメディアが注目し、称賛と批判を浴びてきた人物だ。
 ゴルディーヨが築き上げた“共産主義のユートピア”マリナレダは資本主義の中の「異端的存在」以上にならないのか、それとも「目指すべき道」となるのか。

 景気がいいときは誰もマリナレダに注目しない、危機が訪れるたびにみんながマリナレダに集まるとマリナレダ議会の若手議員は指摘する。20代半ばの青年の「今回の危機は経済危機であり、政治危機であり、腐敗による危機であり、国全体の危機なんだ」という言葉は、スペインの状況をはっきりと示している。しかし、その一方で彼は、マリナレダが、ゴルディーヨが成し遂げてきたことを誇りにしている。そして「こんな資本主義の危機なんて、なんてことないさ」と言い放つのだ。

 「理想の村」というタイトルに、心魅かれるかもしれない。「ユートピア」という言葉に、のんびりとした田舎の村の風景を思い浮かべるかもしれない。しかし、平和と安らぎだけを求めて本書を読まない方がいいだろう。本書の原題は“THE VILLAGE AGAINST THE WORLD”(世界に対抗する村)である。
 では、村人たちの生活はまったく描かれていないのか、というとそうではない。神父がいない教会、仕事や家をもてる可能性の高い若者、無線インターネットは無料、保育所は子どもたちの食費も込みで月12ユーロなど、魅力的な記述が並ぶ。

 失業率が高いスペインにおいて“異端”ともいえるこの村の存在が、今後世界にどのような影響を与えるのか。あまり注目されてこなかった、この“ユートピア”を知るための重要な一冊である。
(金井元貴/新刊JP編集部)

(*1)「飢餓によるストライキ」ともいわれる。公共の場などを占拠し、座り込みなどを行う。
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