18歳少年は実名報道でも『殉愛』には沈黙…世界は下世話でできている|プチ鹿島コラム
先週、妻が美容院に行ったところ、一見、品の良いマダムが「今日発売の週刊新潮で川崎の18歳の少年の名前と顔が載ってるらしいわよ。買わなきゃ」といきなりテンションが上がって喋っていたという。まさかこの人が、という感じの人が。下世話は実在する。日本中のどこにも。
週刊誌の「少年顔出し芸」はお馴染みの伝統芸
今回の川崎市・中学1年男子生徒殺害事件で逮捕された少年の実名・顔写真掲載。週刊新潮編集部は「事件の残虐性と社会に与えた影響の大きさ、少年の経歴などを総合的に勘案し、実名と顔写真を報道しました」とコメントを出している。
このコメントの行間からは「ウチがやらなきゃ誰がやる」的な義憤も感じるが、一方で週刊誌の「少年顔出し芸」はお馴染みの伝統芸だ。
週刊新潮は1997年、神戸連続児童殺傷事件の犯人の少年の顔写真を掲載した実績がある(同社のFOCUSも)。書店では売り切れ続出だったのを覚えている。なぜなら私も買いに行ったからだ。まんまとこちらの下世話な心を突いてきた。
少年法について一石を投じる新潮の姿勢は確かに毅然としているかもしれない。一方で読者の「どんな顔をした奴か見たい」という欲望にきちんと応えてくれる。私はいつもこの手の報道を見ると歌舞伎俳優と観客の関係を思い出す。
ちょっと先ほどの新潮のコメントを歌舞伎俳優風に読んでほしい。→「事件の残虐性と社会に与えた影響の大きさ、少年の経歴などを総合的に勘案し、実名と顔写真を報道しました」
このセリフが決まるや、「新潮!」「待ってました!」というおっさんの観客の声が私には聞こえるのだ。今回美容院で妻が見たのはおばさんの「掛け声」であったが。
少年の顔と実名を載せるのは「売れるから」という理由に決まっているが、お互いそれを口にしない様式美。美しい。
さて、そんな、何でも書いちゃう怖いものなしの週刊誌だが、百田尚樹『殉愛』騒動にはしばらくスルーしていた。ここらあたりで「妻さくら」の写真と近況を載せてくれたら、観客は「待ってました!」と掛け声をかけると思うのですが。
世界は下世話でできている。
著者プロフィール

お笑い芸人(オフィス北野所属)
プチ鹿島
時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。