kiss kiss kiss・・・『桜Trick』が示す舞台装置の重要性と視聴者を引き込む演出

あにぶ

桜trick(C)タチ・芳文社/桜Trick製作委員会
桜trick(C)タチ・芳文社/桜Trick製作委員会

『 桜Trick 』は2014年1月から3か月間放送されたアニメで、恋愛とも友情ともいえない女子高生同士の切ない心模様を、「キス」という表現を通じて視聴者に訴えかけた異色の作品。原作は「日常系」アニメでおなじみの、芳文社『まんがタイムきらら』系列の『まんがタイムきららミラク』に連載されている4コママンガです。毎回、必ず女の子同士のキスシーンが描かれます。ちょっぴり刺激的でいてゆるふわなエッセンスもあり、登場人物間のさりげない掛け合いも魅力的です。

■kissは特別なもの?

高山春香と園田優は中学校も同じ親友同士。3年後に廃校が決まっている美里西高校に入学した2人は最後の新入生。春香は優のことが大好きで、特別な関係になりたいと思っています。ちょっと優がほかの女のことを話をしていたりするとすぐに嫉妬してしまう可愛らしさを持っています。「SBJK」(嫉妬深い女子高生)と作中で優に呼ばれてしまうほど優のことを想っています。そんな春香に優は提案をします。「特別なことをしようよ」、それがキスだったのです。優のキスを受け入れた春香は、それ以降、キスを通して優への依存を深めていきます。体育館の倉庫でも、生徒がいる教室でも、文化祭のステージ裏でも、電話越しにも・・・、kiss、kiss、kiss!
しかし、アニメ作中でも、原作でもそれ以上の関係はありません。キスは性的なものというよりも、二人のプラトニックな関係、それでいて特別な「何か」を現しているのです。

■ほかのキャラクターが織りなす人間模様も魅力的

春香と優の同級生である、南しずくと野田コトネも実はキスでつながった関係。その2人も決していやらしいものではなく、女の子のかわいらしさを凝縮したエッセンスとして、キスを媒介に観ている人へ訴えかけます。一方で、キスの関係を持たない友人の池野楓と飯塚ゆずも加わり、6人での女子高生ライフという日常系の基本的構造も抑えています。楓とゆずは、キスでつながる4人とは別の視点を視聴者に用意し、一方通行にならないよう物語の「交通整理」を行う役割を果たしていきます。そして、優の姉で高校の生徒会長である園田美月の春香への「片思い」の暴走が、このアニメのデウス・エクス・マキナ的な狂言回しを担い、飽きさせない作りへとストーリーを導きます。

■「日常系」の1つの完成系としての『桜Trick』

時に「美少女動物園」ともいわれている「日常系アニメ」ですが、女の子の何気ない生活を描くことで、ノンストレスの性的感情を排した作りで、昨今、男性視聴者を中心に人気が出ています。この作品は、共学校が舞台なので、男子生徒も存在するのですが、完全に背景以外の役割は与えられていません。そうした中で、ほかの作品との差別化としてカンフル剤の役割を果たしているのが女の子同士のキスです。日常系アニメのプロットを崩さず、ギリギリのスパイスとして役割を与えられた「キス」がどのようにして、キャラクターを魅力的にし、ストーリを色づけるのか、是非観ていただいて、その世界観を楽しんでいただければと思います。エ口ティックな印象は受けないと思いますよ。

【ニコニコ動画】桜Trick Trick1-A:「桜色のはじまり」/ Trick1-B:「やきそばとベランダと女の子」

(あにぶ編集部/リンドウ)

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