「男の娘」でもいいじゃない!?ちょっと変わったラブコメ『ひめゴト』

あにぶ

ひめゴト(C)佃煮のりお/一迅社・ひめゴト製作委員会
ひめゴト(C)佃煮のりお/一迅社・ひめゴト製作委員会

『 ひめゴト 』はBS放送と配信のみで2014年7月から3か月間放送されたアニメで、あるきっかけから女装して高校生活を送ることになった少年の、普通ではない(?)学校生活を描いた作品。1話あたり5分弱のショートアニメなので気軽に観ることができます。原作は、一迅社のマガジン『わぁい』に連載されていました。『わぁい』は休刊になってしまいましたが、その後は同社の別の雑誌で連載が続いている人気作品、なお『わぁい』は「男の娘」を専門に取り扱ったマガジンとして有名です。

■ふとしたきっかけから「男の娘」に

主人公の高校2年生の有栖川ひめは、両親が海外で作った借金の肩代わりを条件に「あること」を突き付けられてしまいます。それは、「高校での生活を女装して過ごすこと」(家では女装しなくてもOK)、「生徒会の『犬』になること」の2点。借金取りに追われる身から、今度は生徒会の女性陣の「犬」として「女の娘」の姿で過ごすことになってしまったのです。ひめ本人は別に、女装趣味があったわけでも、男の子が好きなわけでもありません。ここは、よくあるBL(ボーイズラブ)の作品とは異なります。嫌々することになった女装が、予想外に似合ってしまい、周囲の男性陣から女性と見間違われて苦労するというコメディとなっています。別の世界に不意に踏み込んでしまった戸惑いと、そこで感じるギャップが本作の魅力です。

■このキャラは男性?女性?異性装が見せる心地よい「混乱」

このアニメのキャラクターは、ひめ以外にも特徴があります。キャラクターは、「女性の格好をした女性」、「女性の格好をした男性」、「男性の格好をした女性」、「男性の格好をした男性」の4つのパターンいずれも存在しています。最後のパターン以外は、女性声優が担当しているため、見た目も声もいずれからも判断できません(現実世界だったらわかると思いますが、そこはアニメだからの表現です)。しかも、キャラクターは同性が好きというわけではなく、異性の目を気にするため、どの人物がどの人物を好きなのか、嫌がっているのか、わからなくなります。それが本作の魅力で、通常のラブコメにはない感覚、視線を持つことになり、その「混乱」がストーリーに深みを与えます。とはいっても、シリアスなものではなく、頭をからっぽにして楽しめるタイプの作品です。

■「男の娘」というジャンルの開拓

女装をして見た目は完全に女の子なのに実は男の子、という「男の娘」のジャンルは意外に古いもので、アニメやマンガなどの有名作品にも登場しています。「男の娘」のポイントは、見る人はそのキャラクターを「女性」として認識するところにあります。これは、美少年や「ショタ」などあくまで、「男性」としてキャラクターをとらえて評価が行われるのとは異なります。このアニメも含めて、性的嗜好として男性が好きだから女装をしている、という作品よりも、男性であるが女装が似合っていて、それによって周囲の男性からも女性からも好意を向けられ、そのギャップに戸惑う系の作品が多いようです。「男の娘」のニーズは男性なのか女性なのか、そこも含めて今後注目していきたいジャンルです。なお、現実世界における「男の娘」は、ファッションとしてやっている人、性的なマイノリティの方の場合双方あり、デリケートで深い問題です。そういうことを考えるきっかけにもなれば、アニメの持つ表現の意味も大きくなると思います。

が、このアニメは繰り返しますが、ドタバタのラブコメですので、ゆるーく楽しんでいきましょう。

(あにぶ編集部/リンドウ)

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