「ポリスマン」安生洋二の引退。 (1/3ページ)

安生洋二が3月19日の後楽園ホール大会で引退した。
不思議な選手だった。その魅力はギャップの多さではなかったか。
まず最初は「帰国子女」というギャップ。私は「安生は英語がしゃべれるらしい」という理由だけでよくわからない幻想が高まった。
安生は若手の頃から脇役のような顔をしていたが、「道場での腕前は一級品らしい」という噂が次第にささやかれる。これも安生のギャップ。
90年代前半、船木誠勝が専門誌のインタビューで「モーリス・スミス(当時打撃系で最強と言われた)にキックで対抗できるかもしれない日本人プロレスラー」を名前を出さずに語った。読者は「安生のことを言っているのではないか?」と想像した。
「ポリスマン」という言葉が語られる際も、安生の名前はチラホラ出てくる。初来日した外国人レスラーがどの程度の実力なのか確かめるために対戦するというポリスマン。その土地(団体)の秩序を守るために存在するレスラーを指す隠語。
プロレスファンは隠語(内部事情)が大好き。ポリスマンが本当に存在するかどうかは実は重要ではない。「ああ、あのレスラーならそうかもな」と想像するのが好きなのだ。安生洋二には不思議とそれがあった。
そして時代は、安生の影の実力者ぶりをオモテに出さざるを得ない状況に。
当時、安生が所属するUWFインターのエース高田延彦は「最強」を謳っていたのだが、そのせいで他団体とやたらトラブりはじめる。それがまた刺激的でお客を呼ぶ。元祖・炎上商法といってよい。そんなとき他団体への挑発の矢面に立たされるのが常に安生だった。今から考えると、ポリスマンを前面に押し出すしかないほどUインターは自転車操業に陥っていたことになる。
そのうちアメリカではグレーシー一族の出現が伝えられた。しばらくして来日したヒクソン・グレイシーは格闘技大会で圧倒的な強さを見せる。
ファンの目は当然「どうするUWFインター?」となる。