『弱虫ペダル』『BLEACH』の虐待シーンに興奮…猟奇的嗜好“リョナ”とは?

デイリーニュースオンライン

リョナ界隈で人気の『BLEACH』
リョナ界隈で人気の『BLEACH』

 成年向け漫画家、氏賀Y太氏率いる「UZIGAWORKS」と「グラマラスグラマー」の主催によるイベント「艶惨2」が4月18日にハイライフプラザ板橋にて行われる。

艶惨 - ENZAN | Facebook

「艶惨」は今回が2回目の開催。「エロでグロなアート展示即売会」とのコンセプトで行われるイベントであり、「デザインフェスタのグロ版」という説明がやや近しいかと思われる。

 ところで、そういったグロ寄りのジャンルの一つに、「リョナ」というカテゴリーがあることを読者諸兄はご存知であろうか? リョナとは「猟奇的なものをおかずにした自慰行為」のことだ。具体的には二次元の女性キャラクター(もしくは男性キャラクター)が肉体的・精神的に酷い目に遭っているストーリーに興奮する性的嗜好を指す。

 この言葉自体は12年ほど前に生まれたばかりの若い言葉であるが、ネット上ではリョナの概念も着実に広まり、「りょなけっと」なるリョナを専門に扱った同人誌即売会なども開かれるに至っている。

 そこで今回は、りょなけっとへの参加経験も持つ、リョナラーのNさん(女性)にリョナ界隈の今を聞いてみた。

 Nさんによると、リョナはまず内容面から大雑把に四つのジャンルに分けられるという。「男性向け」「女性向け」「ソフトリョナ」「ハードリョナ」である。「男性向け」は文字通り男性読者に向けた作品である。

 といっても女性キャラがリョナられる(虐げられる)作品ばかりではなく、男性キャラがリョナられる場合もあるようだ。Nさんの同人誌も中性的な男性キャラクターがリョナられる(男性器を寸刻みにされる)作品であったが、これの購入者は9割方男性だったという。彼女の分析によると「ドMの男性が買っているのではないですかね?」とのことだ。リョナラー以外にも意外な需要があるものである。

 そして筆写も驚いたのだが、リョナ界の男女比率は6:4ということだ。リョナというと男性の性的嗜好のように思われがちだが意外なまでに女性も多い。では、「女性向け」のリョナ作品は男性キャラがリョナられる作品なのかと思いきや、こちらも女性キャラがリョナられる場合が多々あるようだ。

 Nさんいわく「酷い目に遭っているなら性別はどちらでもいい」とのことで、女性はリョナ対象の性別へのこだわりがやや曖昧なのかもしれない。

 面白いのは、女性読者はリョナにもストーリー性を重視している点で、Nさんによれば単にキャラがリョナられるのではなく、ストーリーの中でリョナられるのを望む傾向があるということだ。男性向けのエロ漫画がとにかくセックスしているだけなのに対し、BLはセックスに至るまでの物語性が重視されるというが、女性の持つそのような傾向はリョナ界にも存在するようだ。

「ソフトリョナ」「ハードリョナ」は、血が出る/出ないで線引され、例えば腹パン(お腹への殴打)などは血が出ないのでソフトリョナに該当する。リョナラーとはいえ、誰もが猟奇的嗜好を無制限に受け入れているわけではなく、「男性/女性が酷い目に遭っているのは好き」でも「血が出ると引く」という人は一定数いるらしい。

 なお、リョナの中には四肢欠損や内蔵破壊などの描写も含まれるが、そんな時にリョナラーたちが困ってしまうのが、実際の人体構造の詳細は、彼らリョナラーにもよく分からないという点である。

屠殺のワークショップで学ぶ者まで

 Nさんいわく、リョナラーたちはこれの克服に多大な努力を払っているらしく、ある者は医学書を購入して勉強し、ある者は大学で人体関係の授業を受け、ある者は屠殺のワークショップに赴くなどして、正確な体内知識を手に入れてリョナ作品を描くのである。リョナラーには美大出身者が多いという。「美大では人体に関する授業があるからだと思います」とのことだ。

 女性がリョナられている作品はともかく、男性がリョナられている作品ならば一般漫画の中にも多数あるだろう(バトル系少年漫画の多くは男性キャラが傷付いている)。男性リョナで用が済む人たちは、おかずには困らない気がするのだが、実は簡単にそうとは言えないらしい。

 Nさんいわく、「一般漫画は、例えば戦争で被弾するシーンが描かれたとしても、その傷の痛みや苦しみを綿密に描くことはあまりないですよね? やはり最初からリョナを目的として描かれた作品の方が需要に応えるものとなっています」。

 ただ、一般漫画の中にも素晴らしいリョナ的表現が見られる場合は多々あり、Nさんの場合は「めだかボックス」の古賀いたみ(女性キャラ)の脱臼シーンが素晴らしいのだという。他には『BLEACH』が界隈では人気だという。

『BLEACH』は作中でリョナシーンが多数描かれているので理解できるが、不可解なことに女性向けリョナではなぜか『弱虫ペダル』も人気とのことだ。なぜ女性たちが弱虫ペダルのキャラを虐待したいと感じるのかは謎であるが、想像するに自転車競技を題材としたこの作品では競技中の疲労描写や酸欠描写があり、そこに女性たちはリョナ的な何かを感じて想像を逞しくしているのではなかろうか。

筆者原作の『戦闘破壊学園ダンゲロス』にもリョナシーンが (C)横田卓馬・架神恭介/講談社

 なお、筆者の作品『戦闘破壊学園ダンゲロス』においても、架神恭介というキャラクター(筆者と同名)が輪切りにされて処刑死するシーンがあり、Nさんは「リョナ的にとてもグッドでした」と評価している。ありがとうございます。

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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