Yun*chi インタビュー『アニ*ゆん』で繋いだみんなの表現

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Yun*chi インタビュー『アニ*ゆん』で繋いだみんなの表現
中田ヤスタカさんやきゃりーぱみゅぱみゅさんなど国内音楽シーンを牽引するアーティストや、原宿カルチャーを代表する青文字系モデルを多数擁するASOBISYESTEMに所属する次世代ポップシンガー・Yun*chiさん。

これまでに、kz(livetune)さん、Avec Avecさんといった気鋭クリエイター陣プロデュースのもと、楽曲やリミックス曲をリリース。さらには吉田ユニさんによる印象的なワートワークや、美しく独創的なMVなどでビジュアル面においても、ポップな活動を展開してきた。

また、アニメが好きという一面もあり、TVアニメ「ログ・ホライズン」シリーズのEDテーマに楽曲が起用され、同作で声優にも挑戦するなど、アニメ文化とも深く関わってきた。

そんなYun*chiさんが、4月15日(水)に満を持してリリースするアニソンカバーアルバム『アニ*ゆん~anime song cover~』(以降『アニ*ゆん』)。リリース直前のYun*chiさんにインタビューを敢行した。(取材・構成/コダック川口、米村智水)

1stアルバム『Asterisk*』から約1年、アニソンカバー『アニ*ゆん』に込めた想い

──前回はメジャーデビュー後、初のフルアルバム『Asterisk*』がリリースされたタイミングでインタビューさせていただきました。この1年間でご自身の活動に変化はありましたか?

Yun*chi:TVアニメ「ログ・ホライズン」のED曲「Your song*」や「Wonderful Wonder World*」を歌わせていただいたことは、やはりすごく大きかったです。アニメが関わってくる現場にグッと近くなったように思います。私がアニメが好きなことだったり、アニクラ(アニメソングが中心に流れるクラブイベント)によく行ってることだったり、コスプレしたりだとか、自分がアニメ周辺の文化を好きだと公言しやすくもなりました。



それに「ログ・ホライズン」は夕方放送のアニメだったので、小さいお子さんが、親御さんと一緒にライブに来てくれたりもしていて。そういう面に関しては、変わってきたことかなと思います。

あと、私はエゴサ大好きマンで(笑)。海外にも何度かライブに行っていたので、外国人の方の反応も見ています。人間だから、どうしてもみんなどんな反応をしてくれているのか気になるし。エゴサは別に恥ずかしいこととは思ってなくて、disにせよ、肯定的な意見にせよ、全部が自分の栄養になると思っています。だから、私が出てないイベントでも、自分の曲をアニクラでかけてもらった時に反応があると、嬉しいですね!



『おジャ魔女』『プリキュア』の馬越嘉彦がアートワークを担当

──そういったYun*chiさんが持つ文化的な背景や経緯がありつつ、『アニ*ゆん』という作品をリリースすることになったと思うのですが、どういったコンセプトでつくられていったんでしょうか?

Yun*chi:一番は、自分が好きなもの同士を一緒にお鍋に入れてグツグツ煮込んだら、どんなものができるだろう?と見てみたかったことが大きいです。小さい頃から影響を受けてきたアニメ作品やアニソンと、直接クラブに足を運んだり、CDを聴いたりして、かっこいいと思ったアーティストさんやプロデューサーさんの才能を合体させたら、どんな作品に仕上がるのか見てみたかった。それで、出来上がったものを、アニメもクラブも好きな人たちと一緒に楽しめたらいいなっていう想いでつくりました。

繋がりの繋がりで、アニメーターの馬越嘉彦さんにジャケットやアートワークをたまたまお願いすることができたのですが、『おジャ魔女どれみ』をはじめ、馬越さんが描かれていたアニメは、小さいころから近くにあったもので、思い入れが強いです。彼の作品集も持っているくらいなので、ご本人に頼めるかもって聞いたとき、心臓が飛び出るぐらいの気持ちでした(笑)



馬越さんには、直接お会いできる機会もつくっていただいて。ジャケットをデザインしていただいた分解系レコーズのyakoさんとか、デザイナーのスケブリさんも交えて、イラストの線をどこまで伸ばすかとか、色をどこまで乗せるとか、かなり綿密に相談して決めていきました。最終的には馬越さんの作風と魅力を最大限に生かした、躍動感があるものが生まれました。みんなで良いものがつくれたので、「好き」っていう気持ちってすごいと思いましたね(笑)。

──今作の中で特に思い入れのある楽曲はございますか?

Yun*chi:『彼氏彼女の事情』OPの「天使のゆびきり」のカバーは、2011年にリリースされた『I LOVE TOKYO~FOR ANIME MUSIC LOVERS~』というアニソンコンピにも収録されている曲なんです。大好きなkzさんにアレンジしてもらって、ライブでも何度もやっているし、海外でも歌えたし、だから思い入れは強いです。煽り方とかも、自分の成長と共に、会場によってどんどん変わったりとか。kzさんと一緒にライブで披露した思い出もあります。

4年前の歌とアレンジがそのまま入ってるんですけど、何年経ってもフレッシュで、かっこいいままなんですよ。やっぱりkzさんはすごい。私もまだデビュー前だったけれど、『I LOVE TOKYO』には同じくデビュー前のtofubetasさんの楽曲も入っていて、今回、自分の名義でこうしてカバーアルバムを出せたというのも、感慨深いです。「Catch You Catch Me」と「天使のゆびきり」以外は、まだライブで歌ってないので、これから披露していきたいです。

──カバー曲とオリジナル曲だと、取り組み方もぜんぜん変わってくるかと思いますが、レコーディングや制作面はいかがでしたか?

Yun*chi:大好きな曲ばかり選んだので、そこが逆に難しかったです。おそらく、ニコニコ動画の「歌ってみた」などで活動している人もそうなのかな、と思ったんですが、好きな曲を歌うと、愛おしすぎて、自ずとオリジナルに近づきたくなってしまうんです。

それで、オリジナルに引っ張られすぎて悩んだりもしたんですけど、デビュー当時から歌を録ってもらっていた浅田祐介さんにレコーディングに立ち会っていただいて、言葉の発音を念入りに相談しながら、オリジナル曲に引っ張られた自分を取り戻しながら歌いました。




──「ビバナミダ」の原曲を歌われている岡村靖幸さんだったり、「桜キッス」をアレンジされたPa's’Lam Systemだったり、誰もが知るベテランから、新進気鋭のクリエイターまで今作には関わっていますが、原曲のシンガーや作曲者の方とはどんなやりとりがありましたか?

Yun*chi:岡村靖幸さんとはお食事する機会があって、自分の曲も聴いていただいたり。あと『カードキャプターさくら』のOP「Catch You Catch Me」を歌っていたmeg rockさん(当時はグミ名義)も「カバーしてくれるんだってね」と、楽しみにしててくださったりしました。まだ完成した曲は聴いてもらってないので、ちょっと緊張しますね。

「Catch You Catch Me」は、原曲を広瀬香美さんがつくられていて、小さい時に母親の影響で大好きだったので、こういう形で曲をカバーさせてもらえてすごく不思議だなと思います。ライブで1回だけ歌ったんですが、「だって〜」の追っかけのとことか、みんな歌ってくれたから、顔文字みたいに「\( ‘ω’)/ヤッター」ってなりました(笑)

『たまこラブストーリー』主題歌の「こいのうた」は、周りにめちゃくちゃ好きな人が多いので、プレッシャーを感じてPandaBoYさんと一緒に「頑張んなきゃねー」って言いながらつくりました。この間、カバーした「こいのうた」と「桜キッス」がフロアでかかってる動画をVineで見させてもらって、結構盛り上がってたので、ホッとしてます。

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「映画のキャストを選ぶかのように」みんなでつくりあげた作品

──前回のインタビューでも「みんなでつくる」という部分に重きを置いているとおっしゃってましたね。



Yun*chi:ええ。今作はアニメ音楽メディア『リスアニ!』編集長の西原さんと、秋葉原MOGRA店長のD-YAMAさんとも相談しながら曲目をつくっていったんですけど、Yun*chiという名前でアニソンカバーを出させてもらうからには、Yun*chiが何に影響されて育ってきたのか? Yun*chiってどんな人なのか? というのを、みんなにわかってもらえるような構成にしたいと。意識はそこに持っていきました。

候補曲も200曲以上は出したんですが、その中から、このクリエイターとやるならどんな曲がいいかなっていうバージョンと、この曲をリミックスしてもらうなら誰がいいかなと、いろんな方向から考えました。例えばtofubeatsさんからも曲の候補を挙げてもらったりして、結果は「おジャ魔女どれみ」になったけど「ママレード・ボーイ」も合うんじゃないか? とか。

Pa's’Lam Systemだったら、女の子もののアニメがいいんじゃないか。Avec Avecだったら、優くて心地いい感じがいいんじゃないかな? と話してちょっと甘酸っぱい「君に届け」になったり。映画のキャストを選ぶかのようにやらせてもらいました。

今は「君に届け」のMVのために、Yun*chiや『アニ*ゆん』をイメージしたイラストを募集する企画もしています。これはライブから学んだことなんですけど、やっぱり私だけじゃなくて、その空間を楽しくしたりとか、面白いものをつくったりする経験を、あまり青春時代にやれなかったから(笑)。それがいまならできる環境や機会があるので、ソロシンガーだからこそ、できるだけ多くの人を巻き込んでつくっていけたらと思います。できるだけ多くの人を巻き込んでつくっていけたらと思います。

馬越嘉彦さんによるアートワーク

クラブとアニメ、ネットカルチャーを繋ぐ

──『アニ*ゆん』では、今後、アニソンに限らず、クラブイベントでも使われそうな楽曲がたくさん入っていますね。長くアニソンイベントだけでなく、原宿やクラブやライブなどの現場を見てこられたYun*chiさんは、いまのシーンをどう見られていますか?

Yun*chi:アニクラって存在や言葉を知らない人もいるじゃないですか。でも、アニクラにはいろんな人がいて、アニメは知ってるとか、逆にアニメは知らないけど、かっこいい曲だからもっと聴きたいみたいな人もいるし。クラブが好きな人、クラブサウンドが好きな人とかもいるし、そんな状況の中で、音楽を軸に、どこからでも入ってこられるような雰囲気は大事にしてほしいなって思います。

『アニ*ゆん』の中に入っている曲でも、『桜蘭高校ホスト部』の「桜キッス」は、アニメも観ていたんですが、アニソンイベントでDJさんがかけてたのを聴いて、クラブがきっかけで好きになった歌なんです。曲を選んでる最中にも、改めてアニメを見返したりして「めちゃくちゃおもしろい!」ってなって、絶対入れたいと思っていたから、夢が叶いました。

大人になってから知ったアニメで『ちょびっツ』の曲も候補にあったりとか。それもアニクラで知った曲なんです。そんな風に知らなかった曲との出会いがある場所だから、「クラブ!」とか「コスプレ!」とか、部分のワードだけ聞くと、少し怖いとか敬遠してしまう人もいるかもしれないですけど、もっとふつうに、好きなアニメの曲を大きな音で聴ける素敵な場所だと思います。

アニソンイベントって、好きな曲がかかると一番後ろにいた人が、前の方まで一気にダッシュしたりするじゃないですか? あれを自分の曲のときにやってもらうと、めちゃくちゃ嬉しいですね!(笑)。あの素直な気持ち超大事!って思います。

──(笑)。近年はYun*chiさんを含め、tofubeatsさんやSugar's Campaignなど、これまでアニクラやネットレーベルを中心に活躍していたアーティストが一気にメジャーシーンに出て、これまでのリスナー以外からも認知されてきている状況もありますね。

Yun*chi:最高だと思います! みんな好きなアーティストさんたちなので、メジャーデビューして、さらに曲をたくさん聴けるようになることはすごく嬉しいです。本当に素敵な音楽を作る方たちなので、ファンでもあり、私は良きライバルだとも思っています。今回もアルバムにも参加してもらっているし、できれば今後も一緒にライブすることができたりとか、同じイベントで共演したりとか。とにかく一緒にシーンを盛り上げていけたらいいなと思っています。



以前、これはPandaBoYさんに言われたんですけど、私がMOGRAとか、アニソンイベントに行きはじめた当時って、自分ではそんなつもり全くなかったんですけど、「なんか派手な女の子がなんか来たぞー」みたいな感じでざわーってなってたらしいんです(笑)。最初のころにお話した人には「ほんとにお前アニメ好きなの? アニメわかるの?」みたいな感じで仲間に入れてもらえなかった経験もあったり。けれど『アニ*ゆん』は、私は本当に音楽とアニメが好きなんだ! という気持ちを込めてつくりました。そこも伝わるといいなって思います。

アニソンが好きな人って、私もそうなんですけど、原曲Loverが多いと思うんです。『アニ*ゆん』は、けっこうチャレンジしているアレンジが多いので、手にとって下さった方は、これを機に、こんな音楽もあるんだってことを知って、好きになってもらえたら嬉しいです。逆に、ふだん原宿にいるような人にも、聴いてほしいなって思います。

『ログ・ホライズン』で、実は声優にも挑戦させていただいたんですが、今年は、もう少し本格的に声の仕事もやってみたいなと考えています。海外にもまた行きたいなとも思うし、フィギュアにもなりたい(笑)。あと、これは毎回、言ってるんですけど飛び出すグラビア絵本を作りたくて(笑)。誰か一緒にやってくんないかなって思ってます。ライブも楽しいのでぜひ遊びに来てください!
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