ヒントは「ブラジル人の墓」だった!千曲川河川敷・謎の石像騒動の意外な結末|プチ鹿島コラム
「巨大化する謎の石像」の話題をご存じだろうか。
長野県上田市の、千曲川の河川敷にそれはあった。特徴的な髪形や目、まるでアニメキャラクターみたいなルックス。1月末に全国紙で報道されて以降、ちょっとした観光名所になっていた。この石像、突然出現したわけでなく4年前から徐々に大きくなっていた。高さがおよそ2・3メートル、顔の幅は1・2メートルの大きさ。
さっそく私も3月に見物に行ってみた。長野新幹線「上田」駅下車。東京から1時間半。石像は上田駅のすぐ近くに実在した。駅から車で5分ほど。石像の前には「お金の投げ入れを禁止します」という看板もあった。思わず参拝した年寄りがいたのだろうか。
現場に行くと気づくことが。石像の正面には土手をはさんで大きなマンション(老人ホーム)が建っていたのだ。つまり昼間に作業していたら人目につく。でも誰も作業風景を見たことがないという。
アニメキャラ説から水害警告説、UFOの仕業説が浮上
いったい誰が何のために? この手の話は東スポに限る。
《不気味に成長する「謎の人面石像」の正体》(東スポWeb 2月15日)という記事がくわしかった。アニメキャラ説から水害警告説、UFOの仕業など諸説を報じていた。「真田幸村」モデル説もあった。上田市は戦国武将、真田幸村の出生地でNHK大河ドラマ「真田丸」も来年の放送を控えているからだ。
なかには「顔だけ出てるけど、地面(地中)には体がある。これは巨大な顔ではなく、全長20メートルくらいの巨人なんだ」というゴキゲンな説も紹介されていた。東スポは現地へ記者を派遣して丹念に下世話にレポしていた。自分も見物に行ってみようと思わせる記事だった。
そんな謎の石像にまつわる話題だったが、今週事態が急転。石像を作ったとみられる男性が、河川法違反の疑いで書類送検されたのだ。FNNの報道によれば「上田市に住む55歳のブラジル出身の男」。「数年前から1人で作った。」という。他の報道では「夜に制作」し、アニメキャラクターなど「何かをまねしたわけではない」と話しているという。
ここで思い出したのが先ほどの東スポの記事だ。石像近くの飲食店の店長のコメントに「数年前は出稼ぎ外国人が多くいた。ブラジル人の墓じゃないかと言われてたけど、違うみたいだね」という発言があったのだ。ブラジル人の墓……? 最初に読んだとき、このくだりがよく分からなかった。今回「ブラジル出身の男」が書類送検されたという報を受け、あらためて調べてみた。
すると、上田市はかつて外国籍市民が県内最多でとくにブラジル人が多かった。しかし2008年のリーマンショック以降の景気低迷で、経済成長が続く母国に帰国したり、求人が多い他の都道府県へ移住したりする人が相次いだという。
《市内ではブラジル人を対象にした学校や食料品店が経営難で閉店するなどの影響が出ている。》(「伯人激減、1千人割り込む=閉校、食料品店も経営難」日系社会ニュース2012年4月25日)
あの石像はブラジル人の墓ではなかったが、ブラジル出身の人がつくった。仲間は少なくなったが今も上田市で働き続ける人だった。どこか、地方都市のひとつの顔がみえた話題ではないだろうか。
以上、スポーツ紙の読み比べをしていたおかげで今回「あっ⁉」と思い当たった話でした。
著者プロフィール

お笑い芸人(オフィス北野所属)
プチ鹿島
時事ネタと見立てを得意とするお笑い芸人。「東京ポッド許可局」、「荒川強啓ディ・キャッチ!」(ともにTBSラジオ)、「キックス」(YBSラジオ)、「午後まり」(NHKラジオ第一)出演中。近著に「教養としてのプロレス」(双葉新書)。