EXILE・AKIRAの映画『マッドマックス』声優起用で阿鼻叫喚の地獄絵図

デイリーニュースオンライン

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」公式HPより
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」公式HPより

 6月20日全国公開の映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の吹き替え版キャストが発表され、主演にEXILEのAKIRAさん、敵役に竹内力さん、真壁刀義さんが起用されたことで阿鼻叫喚の地獄絵図が巻き起こっております。

 吹き替え声優にタレント・アイドルなどを起用する映画界の悪習が蔓延してから、「新作映画にワクワクする」→「吹き替えがタレントだと知ってファンが絶望する」という構図もおなじみのものと化してきました。

 中にはキャイ~ンの天野さんなど、何ら違和感のない見事な声優力を発揮する人もいるものの大半は爆死しているのが現状です。特に今回は三名もの起用ですから、「三名が三名ともプロ声優並に巧い」というのは……まず期待できない……。

「字幕で見ればいいじゃん」という人もいますが、DVDにも吹き替え版は収録されるわけで、選択肢の中から「吹き替え」が失われることは大きな損失です。なにより他のプロ声優さんの演技は普通に素晴らしいんですから、彼らの仕事が無駄になるのも看過できない問題と言えます。

好きな作品が冒される悲しみ

 一時期は剛力彩芽さんがこの悪習のアイコンのようになっていました。忍び寄る剛力の名は死神の足音に等しく、ファンたちは自分の好きな作品が剛力に冒され、死滅していく様を涙を流しながら見守ることしかできなかったのです。

 かくいう僕も、「プロメテウス」で剛力ショックが報じられた時は「エイリアンファンはかわいそうだなー」くらいに鼻くそほじりながら聞いていたのですが、大好きな「X-MEN」の最新作「フューチャー&パスト」に剛力さんが声優出演すると聞いた時には心底から愕然としてしまい、マルティン・ニーメラーのあの有名な言葉を思い出したものです。

ナチスが最初共産主義者を攻撃したとき、私は声をあげなかった
私は共産主義者ではなかったから

社会民主主義者が牢獄に入れられたとき、私は声をあげなかった
私は社会民主主義ではなかったから

彼らが労働組合員たちを攻撃したとき、私は声をあげなかった
私は労働組合員ではなかったから

そして、彼らが私を攻撃したとき
私のために声をあげる者は、誰一人残っていなかった(Wikipediaより)

 剛力さんは大変可愛らしい女性だし、お仕事も一生懸命頑張っていると思うし、個人としては決して嫌いではないのですが、しかし、自分の好きな作品が資本主義の悪魔的力に歪められていくのは感覚としてはレイプにも等しいものがあります。

「あっ、でも剛力さんに逆レイプされるのはちょっとアリかも……悔しいっ! でも……」みたいな変態的感覚を一瞬抱きもしたのですが、それはさておき、なんでこういう悪習がまかり通っているかと言えば宣伝になるからなんですよね。

 商品が売れるかどうかは商品の良し悪し以上に宣伝力にかかっているというのが実情です。しかし、コマーシャルにもカネが掛かる。有名芸能人を声優に起用すれば、それでメディアが飛びついて記事にして騒ぎ立てる。広く認知される。なのでクオリティを落としてでも芸能人を起用する。だってクオリティ高くても広まらなければ話にならないから。

 そう、つまり僕たちメディアが騒ぎ立てるのが諸悪の根源なんですね。おっとこれは架神恭介個人の意見であってDMMの総意ではありませんよ?

 というわけで、本来は映画業界がタレントの声優起用などしようものなら、各メディアがこぞって辛辣な批判を加えて総スカンにすれば自然とこの悪習は死滅するはずなのですが、しかしまあ、映画業界も動員数が減って実際厳しいでしょうし、大人の事情もあるからメディアもそういうわけにはいかんのでしょう。

 映画業界はクオリティが下がって心を痛め、タレントは真面目に仕事を受けてるだけなのに親の仇のように憎まれ、観客はもちろん地獄の苦しみを舐めるという誰も得しないLose-Lose状況ながら、それでもタレント起用せざるを得ないという地獄のような状況なのです。

 そこで提案なのですが、もうそういった事情は汲んでしまってですね。映画業界はほんの一言、二言の端役をタレントに与えて、僕たちメディアはそれを大袈裟に! 全力で! めちゃくちゃ騒ぎ立てるってのはどうでしょうか。

「あの***が二言も台詞のある超重要キャラを演じる!」とか「***が声優初挑戦! 『なんだあれは!』の一言をどう演じるか日本中が注目!!」とかね。そんなん騒ぐ程のことじゃ当然ないんですけど、だって騒がなきゃクオリティ下がってLose-Loseで地獄なんですもん。背に腹は変えられぬってことで、みんなで頑張ってキャアキャア騒いじゃうってのはどうですかねー。

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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