佳子様フィーバーにわく中国人の天皇に対する思いとは

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日本の天皇家に対する中国人のイメージとは
日本の天皇家に対する中国人のイメージとは

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 韓国人の記者が天皇家の佳子様を貶めるような記事を書いたことは、中国のネット上にも伝わっています。このニュースの件もあり、先日、中国人は天皇に対してどういう思いを抱いているのか日本人の方から尋ねられたので、今回はそのことを書いてみたいと思います。

 まず、一口に中国人と言っても、幾つかのパターンがあります。最も割合が多いのが、あまり政治に関心のない「ノンポリ中国人」です。彼らにとって、日本の天皇家というのは、イギリスの皇室と同じく、ロマンチックな文化という認識です。王子様やお姫様といった具合に、まるで童話のような感覚でとらえています。

 とりわけ、そんな一般中国人にとって、美しい佳子様は大人気。百度BBSなどで「佳子公主」と検索したら、佳子様のファンの書き込みがたくさん見受けられます。「佳子様は日本のアイドルみたいでスタイリッシュで美しい!」といった、その美しさを絶賛する声が多数を占めていて、佳子様の抜群のルックスは中国人の心をも鷲づかみにしているのです。

 続いて、「政治に関心の強い中国人」の場合はどうでしょうか。僕としては、かつての戦争は天皇が軍部に政治利用された結果起こったことだと理解しています。ですが、彼らにそういう論理は通じません。

 というのも、中国の場合、中国の皇帝は殺し合いによって王座の地位を獲得するという歴史をたどってきました。そこで、中国人も、「天皇は戦いによってその地位を獲得してきた日本の頂点」だと思い込み、中国の歴代の皇帝と同じような存在だと考えているのです。力によってその地位をつかんだのであれば、当然、戦争責任も重大だというのが彼らの考え。「天照大神の時代から続く神の家系」という、ある種の日本信仰によって存続してきた家系だということを、彼らは理解していません。

 天皇は罪深い存在だと考えている彼らの中には、南京大虐殺記念館の前にひざまずいて戦没者に謝罪しなければならないと主張する者もたくさんいます。日本人が聞くと腹立たしい話でしょうが、これは、彼らが天皇家の本質を理解してないことから起こることだと思います。

 さて、「憤青(怒れる若者という意味)と呼ばれている過激な反日中国人」の場合はどうでしょうか。彼らには全く話など通じません。現在、2ちゃんねるなどで佳子さんを脅迫する書き込みが話題となっていますが、まさにああいう人たちと同じ考え方です。彼らは反日思想に駆られ、天皇一族を粛清しろと過激な主張を行います。

「抗日ドラマ」における、天皇の描かれ方はどうでしょうか。ドラマの脚本家たちはほぼ同様に「戦争の責任は天皇」という捉え方で、天皇に対する侮辱的なセリフを頻繁に入れ込んでいます。そして、日本軍は天皇に命を捧げているバカな者たちという、見下した描かれ方が為されているのです。

 ドラマを視聴するのは、一般中国人ももちろんですが、反日中国人もたくさんいます。ここで天皇をいい存在として描いてしまうと、反日中国人から反感を買ってしまうため、こういう描かれ方しかできないのでしょう。

表面上は仲良くしつつ裏では攻撃

「中国共産党」の場合はどうでしょうか。実は、共産党が天皇に対する敵意を示すことはほとんどありません。それは、面子があるからだと思います。共産党は、「中国は寛容な国なので、過去の戦争で天皇を攻めたてるようなことはしない」というアピールを世界に知らしめたいと考えています。天皇批判は、中国にとって得策ではないのです。

 かといって、天皇に対してへりくだった態度を見せてしまうと、中国国民から反感を買ってしまうため、あくまでも友好的な態度によって、平等な立場で接しようとしているように見受けられます。それは、欧米のリーダーが天皇と会見する際、お辞儀をするような姿勢を取るのに対し、中国の国家主席はそうした態度を取らないことから想像できることです。

「機関メディア」はどうでしょうか。共産党政権が公的な立場で天皇と友好的に接しているのに対して、機関メディアは容赦なく天皇を批判します。2013年5月の環球時報には「戦争を操っていた日本の天皇」という記事が大々的に掲載されました。こうした機関メディアが中国共産党の管理下にあることは自明の理であり、つまり、共産党は、表面上は仲良くしながらも、裏では天皇を攻撃しているのです。

 中国の政治にはこうした二枚舌が付き物で、例えば、戦争賠償に関しても、放棄するという条約に同意しながらも、「民間の賠償は放棄しない」といった姿勢を見せます。共産党は自分たちの寛容さを世間にアピールしつつ、日本に対する恨みの種は人民に押し付け、それは自分たちの管轄外という態度を取るのです。ですが、それが共産党の主導によって生まれてきたものであることは明らかです。

 現在、天皇家に対する攻撃のニュースのコメント欄などでは、「中国は韓国に比べたらマシ」という論調が多々見受けられます。ただ、中国人はその立場によって、さまざまな考えを持っていることをご理解いただきたいです。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)

(構成/杉沢樹)

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